第七話 蒼真さん、僕におんぶは?
おはようございます!
今日も1日頑張っていきましょう!
真っ二つに斬られてしまった徹の家は外も同然で暖かい暖炉の火も吹雪で、簡単に吹き消されてしまう。
斬ってしまった当本人は。
「うん、ごめんっ!
あの時は必死であの魔法しか使えなくてさ…。
それなら、今から王都に来ない?
ここからならそんなに遠くもないし、飲み物も食べ物も沢山あるよ!」
ムッとした表情の小雪が反発する。
「食べ物とか飲み物で釣れるなんて簡単に思うなよー!
僕は……」
「ふかふかのベッドとあったかい煖炉なんて当たり前に付いてるよ?
王都の設備は」
彼が言いかけた言葉を簡単に遮り、
「よし、行こう!
徹、この人いいお兄さんだよ!」
「お前絶対詐欺とかに引っかかりやすいタイプだろ…!」
現在の時刻は晩の六時。
徒歩で王都に向かうには、丸三日は歩かねばならない程の距離だが、着いた瞬間に王都から出なければその分の疲労は回復出来る。
青年の頭は、珍しくフル回転で自分の疲労速度と徒歩の時間を計算し、どれだけいかに疲れるか、疲れないかを把握した。
「せめてそういう思考は、こういう時に使うのはなんか違うと思うんだが…」
徹の言葉を遮るように、蒼真は、梓の容態についても話題を出した。
「梓さんは、ここから全治一週間ほどの怪我を負ってしまっている以上、戦闘は禁止。
普段は、徹君に背負ってもらって行動してください!」
「……ちっ、しゃあねーよなー。
すまんな、徹。まさか負けるなんて…」
「良いんだよ、お前は俺らを護ってくれた大恩人だからな!今くらいはゆっくり休め!!」
徹の声に安堵したのか、彼女は背中におんぶの体勢で背負われると、寝息を立てながら眠りに入った。
「蒼真さん、僕のおんぶは?」
「ちょっと待て、小雪!!
お前はどこも悪くないんだから、楽をしようとするな!!」
ふふふ、と徹のツッコミに笑う蒼真は思わず___
「徹君ってまるで小雪君のお母さんみたいだね。出会って間もないのによくそんな風に仲良く出来るよ、この世の中じゃあり得ないくらい____」
そんなこんなで歩き始めた少年らは、森の小脇にある小さな川の付近に、草木が生い茂り、魔物からは良い隠れ場所になる砂利だらけの裸地を見つけた。
今日は此処で野宿することに。
蒼真が徹の家から持ってきた緑色のテントを手慣れた手つきで張り終わると、梓を横にしてあげた。
流石に砂利が散らばる裸地では、薄いテントの布地は相性最悪だが、そうも言ってはいられない。無いよりはマシだ。
三人は焚いた炎を取り囲むように腰を下ろし、胡座をかく。
《魔王》に支配された世界では、人間の食料はとても貴重なもので十年前の飯ともなれば超高値で売れる価値を持っている。
徹は鞄の中から20××年と書かれた賞味期限切れの乾パンを取り出すと、柔らかい上蓋を取り外して二人に複数個分けてやった。
これから野宿生活が続くことになると思い、乾パンは一人3個まで、あとは水でお腹いっぱいにする。という取り決めをした。
「ところで、小雪君は今何歳?」
飯を終えて、徐ろに話を切り出した。
「僕は16歳だよ」
___二人は驚愕した。
今のご時世なら仕方ないといえば、仕方ないが16歳の子供が今の今まで魔物がうろつく場所を平気で旅していたというのだ。
「そ、そんなに若いってことは!
《魔女》が起こした大事件の時、君は六歳だったの!?」
「うん、そうなるね。
ふぁーあ……」
「____家族は!?」
「____両親も妹も魔物に食い殺されちゃったよ。僕の目の前でね」
___ともなれば、前王都理想郷に住んでいたことになる。
あの王都での襲撃をその身で感じて、生きていられるのはどういう道理なのか。
蒼真は小雪に興味を持ち始めていた。
「__ごめん!
これ以上は聞かないよ。」
「ん。いいよ別に。
過ぎた時は巻き戻せないから、今気にしても気怠くなっちゃうだけでしょ。
ふぁーあ……流石に眠い。
寝るね、おやすみ」
小雪は胡座をかいて座ったまま、下を向き、目を瞑った。
「_____俺さ、君のこと知ってるんだけど、言いたくなかったらいいんだよ。
あの噂って本当?
君が世界に残る大災害を起こした《魔女》のご子息って話」
少年は一瞬だけ真剣な表情になると___すぐに、軽やかに笑って彼の質問を肯定した。
「うん、そうだよ。
俺は例の《魔女》の子供。
_______でも、勘違いしないで欲しいんだけど、俺は「アレ」を母親だと思ったことは一度としてないよ。
俺がこの手で「アレ」を討たなきゃいけないんだ。この命を懸けて!」
溢れ出んばかりの彼の情熱に圧倒されて、
徹は笑顔で右手を差し出した。
蒼真が左手を差し出す_____ガシッと強い握手が交わされ、徹は自信を持ったしっかりとした声で彼に言葉を紡ぐ。
「大丈夫、俺は君を応援するよ。
魔女の子だとかそういうことで差別はしない。
ヒトはどんなヒトから生まれたかじゃない、どういう人生を送り、どういう思念で生きるかが大切だってな。
俺の父親からの譲り言葉ってモンだ」
「______ありがとう。
そう言ってくれない人の方が多くてね、《円卓の騎士団》でも俺を邪険にする人間は沢山いる。
でも、中には理解してくれる人もいるからさ、君みたいな人だよ。
そういう人に助けられてるんだろうな俺って、本当にありがとう!」
眩しい笑顔の彼の瞳には潤いが見えた。
そのうちの一雫が落ちそうになる時、彼は服の袖で涙を拭い、夜の空を眺めよう。
明日からの旅路に備えて、焚いていた炎を消して、彼らは就寝した。
真っ暗になった世界には、炎が木を焚やす音も聞こえなくなり、静寂が訪れたのだった。
大変申し訳ないのですが、重大なお知らせです。
あらすじと第1話の一部分を大きく修正いたしました。ストーリーが大雑把な説明すぎて、説明不足だとご指摘がありましたので、明かしていくストーリーを繰り上げてあらすじに載せました。
意見を下さった方、本当にありがとうございます!
自分の間違いを同調して教えてくれないよりは、キツイお言葉でも現実を突き詰めて教えてくれる方が僕は嬉しいです。
また、昨日も折り重なって多数のブックマークありがとうございました( ´∀`)
今後とも、「気怠げ勇者の世界取り戻すの面倒くさ〜い」をよろしくお願いします!