第六話 えーっと…主人公変わる?
おはようございます!
今日も1日頑張っていきましょう!
「《大地なる木よ、剛毅木訥仁に近し、今こそ解き放たれよ!硬化魔法》」
振り下ろされた巨大な槌は梓の瞬発的に展開した魔法によって、硬化した家が弾いた。
「……なっ!?
この家、クソ硬てえよおっ!
オラッ、オラオラァ!!」
巨大な豚っ鼻の怪物が口から涎を垂らしながら、家の屋根の部分をドンドンと連続で槌を用いて砕こうと努力している。
その隙に家の外に出てきた三人は目の前の怪物を目視した。
茶色く大きな体に顔は豚というよりも猪で、口からは下の方の八重歯が突発的に伸びたキバが剥き出しの怪物だ。
「アレは、間違いない。
この間、廃墟となった街で腹部に大きな穴を開けて死んでいた四匹の魔物の親分、巨大猪鬼だ!
あの弾力のある腹は如何なる攻撃も無に帰すという…私の不死鳥が内部に届けば良いのだが…!!」
梓の言葉で少年は思い出した。
一話目にカッコイイ主人公を装って、
特別武器の手鏡で瞬殺した魔物のことを。
「そんな奴が何で俺らを襲ってきたんだ?
そもそも、家に居たらあの体長で家に居る人物を目視出来るのか!?」
徹の言葉に冷静な返しをする梓。
「それは分からない。
ただ、元々、猪鬼という怪物が優れている部分は、嗅覚だ。
犬や猫にも劣るとも劣らない嗅覚で敵の位置を把握し、狩をする習性がある。
それが、巨大猪鬼ともなれば普通の猪鬼とは別物だ。
手に取るように我々の匂いと木の匂いを判別することが出来るのだろうな!」
この長い尺の間に小雪は。
「ふぁーあ、寝よ。
どうせ、戦闘シーンなんて僕の出番ないし。
終わったら呼んで、そこで寝てるよ」
家の近くの木に寄りかかり、一睡しようとしていた。
ーーその時、巨大猪鬼は自身の嗅覚に引っかかった少年に気付き、怒りの一撃を振り下ろす。
「お前かぁぁっっ!!
私の大切な部下を殺したのは!!」
「小雪いいいいいいいいいい!!!」
急降下で振り下ろされた槌にぶつかれば、
普通の人間である小雪は確実に命を落とすだろう。まさに、絶体絶命の窮地。
「《不死鳥の業火よ、気炎万丈が如く、敵を穿ち、不死の炎を煌めかせよ!
鳳凰烈火弾!》」
彼女は予期していたのか、槌が振り下ろされる寸前に詠唱を完成させ、不死鳥の内部に秘められた巨大な炎弾を放った。
炎弾は、巨大猪鬼の持つ、木で出来た大きな槌に向かって光速で移動し、綺麗な軌道を描いて、槌を砕きながら地面へ着弾した。
その威力は、着弾した際に、大きく抉られた地面が物語っている。
「ぬっ…!!俺様の大槌を破壊するとは、なかなかの《魔女》のようだな!
だがな、この俺様も魔法は使えるんだぜ!」
「ナッ、ナンダッテー!?」
絶対的な窮地を免れた青年は間抜けにも、
驚きを隠せない表情で思わず叫んだ。
「……小雪、ちょっとあっち行ってような。
今、梓が一生懸命戦ってくれてるから」
「はーい!頑張ってね、梓さーん!
と、徹、魔物も魔法使えるんだね……!
だってあいつらよく主人公最強系のファンタジー小説だとすぐ殺されるから知らなかったよー!」
「……オイ!趣味嗜好がバレる発言だが、それは本人の目の前で言ったらやばいヤツじゃねえか!
良いから黙ってあっち行くぞ!」
優しい優しい徹が戦闘の邪魔にならないように小雪を避難させた。
その間に彼が吐いた言葉で巨大猪鬼が怒りに目覚めたのに気づいたのは、彼以外だった。
「……何だよあのクソガキィィ!!
このクソアマをぶっ殺したら、焼いて食ってやる!!許さねえ!!」
巨大猪鬼は雄叫びを上げ、梓めがけて全力の突進をお見舞いしようと走り出した。
「《魔女》の弱点を理解してやがるのか、こいつ!
接近戦に持ち込むのはマズイ…!
なら…《朧に潜みて、静寂を、四海波静を夢見りし果てに、君の綻びを告げん!霧の城!》」
彼女の周りからは分散した霧が視界を奪い、迂闊に攻めることのできない展開に。
だが、彼女は、この魔法を展開したことの間違いを身体に教えつけられることとなった。
「視界なんざ、最初から頼ってねえんだよ!!こっちは、匂い専門なんじゃ!
魔法?そんなもん怖くねぇよ!馬鹿にしてんのか!」
巨大猪鬼は彼女の居る場所を嗅覚で察知し、右肘を剥き出しにする態勢で彼女の身体を思い切り吹っ飛ばした。
「……なっ、いやあっ!!」
強い衝撃に受け身さえ取れず、分散させた霧の場外へ吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
今ので、簡単に肋骨数本と右肩、右腕の骨は確実に骨折し、赤く腫れていた。
「この霧、邪魔なんだよおおお!!」
巨大猪鬼は大きく息を吸い、霧を飛ばそうとしている。
このままでは、あっさり見つけられて、殺されてしまう。
「……今の衝撃音は此処からかな。
……ッ、大丈夫かい?
気をしっかり!!これはひどい。
右肩の骨と右腕、序でに肋骨まで砕かれているようだ」
既に梓の意識は無いにも近く、
朦朧とした意識の中で嗚咽を漏らすのがやっとだ。
と、その時、
誰かが助けに来てくれたのだろうか、ぼやけて見える視界には茶色いローブのフードを被った金髪の人物が膝をついて、身体の傷の心配をしてくれているところだ。
ハッキリと顔は見えないが、声の低さから男の子だと鮮明に分かる。
目の前の巨大猪鬼に気づいた青年は立ち上がって、腰に刺した剣を抜き様に。
「大丈夫!
俺があの怪物を倒そう!」
と言い、剣の先端を上に向けながら詠唱を唱えよう。
「《炯然月華、月の光に華が舞い、邪気を祓う救いとなれ!
光輝の剣!》」
詠唱が完了し、眩い光が纏った剣を巨大猪鬼の居る位置、軌道、動きの計算を、完了。
刹那に、大きく掲げた剣を振り下ろした。
_____瞬間。
眩い光を纏う斬撃が光速で巨大猪鬼に迫る、巨大猪鬼は為すすべなく驚愕の表情で立ち竦むしかなく。
_____一刀両断。
「俺の剣に迷いはない。
この世界の邪気を祓い、俺がこの世界を取り戻す!!」
青年の放った斬撃は、たった一発で巨大猪鬼を真っ二つに一刀両断し、徹の家とその先の空までをも金色の色に変えた。
「……大丈夫かい?
やっぱり、気を失ってしまっているね。
近くに宿でもあれば、いいんだけど…」
青年は腰の鞘に剣をしまって、被っていたローブを地面に横たわる彼女にかけると、辺りを見回した。
「……梓!!大丈夫か!!」
「……眠い…」
青年の背後には、眠そうな少年と必死に彼女のことを心配する男が現れた。
青年は思う、きっと彼女の仲間だろう。
彼は笑顔で男の方へ口を開いた。
「君らはこの女の子のお仲間さんかな?」
「嗚呼!そうだが。
……あ、あんたがまさか、さっきの一撃であの怪物を!?」
金髪の青年は笑顔で。
「うん。そうだよ。
俺がこの剣で斬ったんだ」
すると、彼を凝視する小雪は。
「マジか…!!
主人公変わる?」
「だからやめろっての!!」
小雪の言葉に呆れた徹は彼の頭を抑えつけた。
「んーと、名前を名乗った方が良いよね?
俺は辻風蒼真。
この国の王直属の部隊《円卓の騎士》に所属している者さ」
徹はその名前を聞いて思い出し、
現実を直視した。
奪われてしまった世界を取り戻そうと戦う王の直属部隊《円卓の騎士》という強者が揃う部隊の名を。
金髪の青年の瞳に映る邪気を祓う光を。
金色に輝いた空を眺めて。
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