第五話 そんなことより、不死鳥出してくれない…?
おはようございます!
今日も1日頑張っていきましょう!
作者は休日です^^←
「……全く…ヒトの不死鳥で暖をとる奴なんて見たことねえよ。
あんた、大丈夫か?えらい、追いかけ回されてたみたいだけど」
木々の間を蛇行して流れる川の水を水筒に汲み取った赤い髪の少女は、苔やキノコの住処になっている枯れた幹に寄り掛かり、
不死鳥が居なくなって悲しみの表情をしている少年に訊いてみた。
「大丈夫大丈夫……。
そんなことより、不死鳥出してくれない?
寒いんだけど……」
「……私の不死鳥は暖をとるためのものじゃねえよ!!!何回言わせるんだ……!」
彼女はやや呆れめに少年に言った。
「……「あんた」じゃ、悪いよな。
名前で呼ばせてもらいたい、名前を教えてくれないか?
私は、桃木梓。
世界を旅をしている者だ。」
「うん、僕の名前は小清水 小雪。
旅人さんかあ、凄いなあ。
僕なんかこの間まで旅してたんだけど、
良い家を見つけたからもうそこから出たくないのに……、ああ、眠い。
暖かい暖炉の前で毛布にくるまって爆睡したい…」
少年の気怠さに気づいた梓は、やや呆れめでやれやれと首を傾げた。
「小雪君の家ってどこ?」
「……それが分からないから遭難してるんだよ…ああ、徹!!徹ぅ!迎えに来てくれええええ!!」
「あっ、なるほど。
待て待て、あまり叫ぶなよ。
怪物共が襲って来たらどうしてくれるんだ」
すると、小雪は思いついたように。
「あっ、そしたら不死鳥出るよね!!
あったかくなる!!
徹ううううううううううううう!!!」
「こらぁぁあああああ!!
魔力消費するの私なんだからヤメロ!!」
小雪は梓の怒りの拳を腹部に受けると、嗚咽を漏らして「すいませんでした」と謝罪の声を紡いだ。
「ところで小雪君、魔法とか使えないの?」
「……僕は至って普通の人間だから魔法と異能も無いよ。あっても困るし…」
疑問に思った彼女は思わず、声を上げる。
「え?なんで?
力があればこの世界を魔王から取り戻せるかもしれないんだよ!?」
「え、いいよ。別に。
……取り戻せなくても僕には家があるし、
闘える人が闘えばいいじゃん。
僕はベッドで安眠してるよ」
その言葉に彼女は怒りを告げた。
「____その答えは嫌いだな。
この世界で何億の人間が死んだか分かってるのかよ!!
その人達はお前みたいに眠たいとかそういう欲を持っていたかもしれないのに、何も抵抗出来ないで死んでしまったんだぞ!!
____少なくとも、私はその人達の分まで、一生懸命戦って、この世界を魔王から取り戻したい!!」
そして、僕は確信した。
「じゃあ、梓さん。主人公やろうよ。
「気怠げ勇者の世界取り戻すの面倒くさ〜い」は終了しまして、「赤髪勇者の全力で世界取り戻します!」にタイトル名変更したら良さげ…」
「____どんだけ、やる気ないんだよ。
せめて、そういうメタ発言はやめろ…」
彼女は沢山の木の枝を焚いて点いている火を眺め、彼の言葉にやや呆れた声を上げた。
***
それから一時間後、風が葉をカサカサと揺らす音が良い耳障りで、梓と小雪はたわいもない話で盛り上がった。
話がひと段落して…。
「小雪君、ちょっと私、あっちにある川で水を汲みに行ってくるから、そこら辺で適当に休んでてくれ。
眠かったら、寝ていいよ」
「気をつけてね……。
そろそろ眠いから寝るよ…」
____数分後。
「いやあ、ただいまっ!
もう一つ水筒あったから小雪君の分も水汲んでき………!!
……寝ちゃってんな。流石に起こすのはまずいから、私も寝るかあ。」
木の幹に寄りかかって、小雪は眠っていた。よほど、疲れていたのだろう。
鼾をかきながら眠っている。
彼女は小雪の寝顔を眺めて、数分後に自分も寝ようと、持っていたカバンの中から寝袋を取り出して、就寝した。
虫に喰われたシダの葉の中を舞い、木の上の雪溶け水の朝露をきらめかせる日差しが、梓と小雪の眠りを覚めさせる。
昨日走ったお陰でよく眠れたのか、小雪は珍しく二度寝をせずに眩い太陽を横目で捉えた。
「おはよう、梓さん」
「んっ……もう朝か。
よく眠れたわ……何時に寝たのか覚えてねーけどさ」
日差しに起こされた二人は、上体を起こして立ち上がると辺りを見回した。
「……あっ、あそこに見えるのは徹の家!!
……そんなに離れてなかったんだね、良かったーー!」
小雪は徹の家を発見すると、安堵のため息を吐いた。
「良かったな。案外近かったじゃねえか。
じゃあ、私はここで、またな!」
「えー…どうせなら上がっていきなよ!
徹も絶対喜んでくれるから!」
「……そうか?
なら、お言葉に甘えて寄っていくかな」
遠くに見える徹の家を目指し、二人はゴツゴツと地面からはみ出ている岩を跨いで、歩みを進めた。
「……小雪!!良かったぁぁぁあ!!
心配したじゃねえか…!!
家に帰ってこないから外に探しに行こうと思ったんだが、妙な怪物が家の周りを模索するように歩いててな。
俺は魔法も初歩的なのしか使えないから闘える自信はなくて、朝になるまで待ってみたんだが、無事で良かったよ!!
ところで、そちらの方は?」
家に着いた小雪は徹の喜んでいる表情を見て、安堵した。
徹に聞かれたので、小雪は彼女を紹介する。
「ああ、森の中で迷って雪男に追いかけられてる時に助けてくれた人!!
桃木梓さんって言って、この人が創り出す不死鳥があったかくて気持ちいいんだ!」
小雪の物言いに何かを察したのか、
徹は梓に向かって、一礼。頭を下げた。
「ありがとうございます!!
死んでたらどうしようかと思ったもんで、だいぶ焦っちまったんですが本当に良かった!」
梓は顔を赤らめて、慰めとは逆の言葉を紡ぐ。
「べ、別にいいわよっ!
私はその道を通りたかったんだけど、この人が雪男に襲われてるのを私が独断で救出しただけだし、気にしないでくれ」
「そうだったのか。
でも、感謝はするぞ。
俺の友人を救ってくれてありがとう!」
友人を助けてもらったことに感謝する徹を側で見つめ、彼女は平和な朝に安堵した。
三時間程の時間が経過し、徹も梓との親睦が深まったに見えた頃。
家の近くから、ズシンズシンという巨大な足音が地面を揺らし、木々を薙ぎ倒すメリメリという音まで聞こえてきた。
「これは昨日の怪物に間違いないな…!
暗すぎて見えなかったが、巨大だった。
小雪、見てみろよ!」
家の窓から外を眺めると、巨大な人形の豚が木で出来た大きな槌を振り回し、木々を薙ぎ倒す光景が視界に捉えられる。
「なにあの怪物……猪鬼に似てるけど」
「アレは、ココ一帯の地域を占めるボスだな。
そう言えば、そのボスとやらの部下が一撃で撃退されたみたい話を聞いたんだけど、そこを歩いてるのって犯人探しじゃない?」
梓が思い出したように言う。
ーーすると。
「……間違いない!!
オー君達を殺しやがった奴はこの家にいるようだな、俺の立派な鼻が疼いてるぜ!」
家の大きさほどある巨大な人型の豚の怪物は、小雪の匂いを立派な鼻で掴んだのだろうか。
家の真上に巨大な槌を振り上げる。
「ちょ、やばい!!何故かわからんが、彼奴、この家を潰す気だ!」
絶望した状況下で徹が窓の外の異変に気付き、叫んだ。
その時、気怠げ少年の小雪はただただ立ち止まって天井を見つめていたのだった。
最後まで拝見頂き、ありがとうございます!
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後、多数のブクマありがとうございます!!
まだまだ話数が少ないですが、ゆっくり毎朝六時の投稿だけは一生懸命頑張っていこうと思うので気怠げに応援ください(笑)
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