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第十四話 お前は生きていいんだ!!

今回は蒼真視点です( ´∀`)


おはようございます!

今日も一日頑張っていきましょう!!

十年前の世界を揺るがす大事件を起こした張本人《混沌の魔女(カオストロ・ウィネーフィカ)》の本名は辻風青葉(つじかぜあおば)


円卓の騎士(アーサー)》に所属する王国騎士、辻風蒼真の実の母親だ。


故に彼は生を知った時から《魔術師(ダンテ)》として生きることを許された人物だった。


もし、《混沌の魔女》が大事件を起こしていなければ平和な世界で王国を守る魔法騎士にでもなっていたであろう。


暴虐の罪に問われた彼女は、蒼真を捨てて何処かへ消えてしまった。


彼女の罪は大罪。

その血筋も大罪モノ。


腐敗し切った世界で彼に救いを求めてくれる人なんて一人としていない。



蒼真は(よわい)9歳という若さで母親から見捨てられ、世界からも見捨てられてしまった。



____それから二年後。


世界を生き霊のように彷徨い続け、世界に絶望した蒼真は、生きることをやめようとしていた。


「魔法」が使えるから……「アレ」が母親だから……俺は見捨てられた。

本当は沢山の友達に恵まれて、たくさん楽しいことを経験していきたかった。


でも、彼らが俺を捨てたんだ。



____腐敗し切った廃墟の街で人々は身を潜めて生きていた。

人類が世界を失ってから早数年が経ち、新たな世界を待ち望む者も消えた頃。



「うっわ、きったねえ!!

マジで死ねよ!!」


金髪の少年は、複数の男の子に囲まれ、殴る蹴るを繰り返されて地面に横たわっている。

少年は泥だらけで地面に転がされ、綺麗な金髪も霞んで見えた。



「なんで俺らがこんな思いしなきゃいけねえの?お前の母ちゃん大罪人だろ!


……お前もさっさと死ねよ!」


「そーだそーだ!!」


複数の少年達は、一人の男の子に罵詈雑言をぶつけながら足蹴りにする。

だが、彼は何も言えない。


自分は生きていてはいけないモノ。


だから、命を絶とう。


俺はあの時、少年達が帰った後も一人で泣いていた。

もう、この世界に救いはないって、

この俺に救いもないって。


だから、さようならを告げたい。



「うっ……うぅぅ……くぅっ……」


俺は泣きながら尖ったガラスの破片を目の前に持ってくると、目を瞑って一気に喉を一突き_______には、出来なかった。



「……やめろ!!

生きるのを諦めんな!!


この腐敗しきった世界にも救いはある!

俺がその救いを作ってやるから!!」


俺の手は、見知らぬ男の人に止められていた。

彼は見すぼらしい姿の俺に駆け寄って、優しく抱きしめてくれた。



「………だ、だめだよ。

お、俺がい、い、生きてたら……!!


だって……母さんは大罪に……」



「もういい!!

何も言うな!お前は生きていいんだ!」


男の人は何も知らなかったはずなのに、

俺をさらに強く抱きしめてくれた。


もしかしたら気づいていたのかもしれない。

俺が《魔女の子》で《魔術師》だってこと。


でも、その時はただただ安心して、

力が抜けてしまって、涙を流しながら俺は目を瞑った。



_____数日後。

鼻にツンと来る嫌な臭いが目を覚まさせてくれると、俺は天井を見た。


知らない天井だ。

最近は地面を見ていることが多かったから、上を見上げるのは久しぶりな気がする。

近くで水の音がするので、恐らく下水道ではないかと思う。


辺りを見回すと、ピンクの髪をしたしゃくれ顎のオッさんがニュッと視界に登場した。



「……気がついたみたいね。

丸三日も寝てたみたいだけど、大丈夫?


あんた、顔色も悪くてご飯もまともに食べてないんでしょ?

ほら、ご飯よ。あまり美味しくはないけど、ないよりはマシでしょう?」


しゃくれ顎のオカマは、非常用の乾パンを10個ほど渡してくれた。



「……こ、これ、食べてもいいの……?」



「いいわよ!


まだまだ子供なんだから沢山食べないと、大きくなれないわよ!」


ここ二年間はまともな食事をしてこなかったせいか、オカマのくれた乾パンの味は格別に美味しかった。

乾パンを食べ終わった頃、遠くの方からコツコツという冷たいコンクリートを歩く音が聞こえ、視線を移すと数日前に助けてくれた男の人が立っていた。



「おかえり!

遅かったわね、それで見つかったの?

新木場ちゃんは!」


「ああ……王都の東付近で魔物狩りをしているらしい。相変わらず、戦闘狂な野郎だよ。

血気盛んなのはあんまりいいことじゃねえんだがな……って、おお、ガキ、起きたのか」


男の人は白くて長い髪を指先でクルクルと転がしながら、俺に笑顔で話しかけた。



「……うん。

あ、あの……た、た、助けてくれてありがとう……!」



「ああ。

もう、死のうなんて考えるんじゃねえぞ!


この世界は無理でも俺がこの世界に変わる世界を作ってやっからよ!」


「あんた……」


オカマは意味深な表情をしていたが、俺は男のその言葉に笑顔で強く頷いた。



「おお、お前、なんて名前なんだ?」



「つ、辻風……そ、そ、蒼真……」


この二年間で味わったトラウマが頭の中を過ぎる。自分の名前を聞いた瞬間に震え上がり、石をぶつけて来る大人達。

暴行の連続に、尿をぶっかけられたことまであった。



「そうか。

俺は雪代優吾、よろしくな!


こっちのオカマはマリア。

悪い奴じゃねえから仲良くしてやってくれ!」



けど、雪代という男は何もしてこなかった。ただただ、笑顔で優しく俺の冷たくて閉じきってしまった開かずの扉をこじ開けるように溶かしてくれたんだ。



そこからの毎日は楽しかった。

毎日のように笑い話をして、この世が壊れたことをいっそのこと忘れられるような気がした。


マリアと雪代には感謝しても仕切れない思いが俺の胸の中にはある。


こんな俺を救ってくれた大切な人達だったから、自分の正体を明かすのはとても怖いこと、一年経った後も中々言えずに居た。



「あんた、それ本気で言ってるの!?


いくら《空間の魔術師(スパーツィオ・マーゴ)》でもこの世界の疑似世界を作るなんて無茶な話!!

あんた死ぬわよ!」


下水道での生活も慣れてきた頃、

トイレを済ませた俺がいつもの部屋に戻ろうとした瞬間だった。

いつもは喧嘩しない二人の口論が聞こえたのは。



「だがな、俺はもう十分生きたんだ。

一年前に蒼真が自分は生きていてはいけない人間だって言った!!


でも、今は違うんだよ!

俺達と一緒に笑ってくれてる、俺はその笑顔を見れただけでも嬉しいさ。


マリア、今回ばかりは君でも俺を止めることは出来ない!

今から新木場のところへ行ってくるよ」


マリアは言葉が出なかった。

雪代の言っていたことがあまりにも衝撃的すぎるが故の反動。


彼は裏口の方から階段を上がり、

外へと出て行ってしまった。



「……あいつ、一生分の魔力を費やして疑似世界を構築させるなんて、どんな発想したらそうなっちまうんだ!!


クッソ……私は何も出来ない。

《魔術師》失格だぁぁぁ!!!」



マリアは叫び、悲しんだ。


これから起こること、

それら全てを予期して雪代の末路を見据える。


__________この時、俺はこの時間が分岐点だったとは思えなかった。



自分の名前を最大に呪う瞬間を。


やっと、出てきた幸せが崩れる瞬間を。


最後までご拝見頂きありがとうございます( ´∀`)


最近またブクマと採点が増えました!

本当にありがとうございます!


現在は暗めの回ですが、これからの物語でも重要な部分になるので覚えていただければ幸いです。


また、是非、「気怠げ勇者の世界取り戻すの面倒くさ〜い」をよろしくお願いします(*´Д`*)

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