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第十二話 え?知らないの?ケチャウラだよ!

おはようございます!

今日も一日頑張っていきましょう!!

「へぇぇっくしょぉぉいっ!!」


喫茶マリアでこの世界のことについて、この喫茶店の店主にしてオカマのマリアから話を聞いている小雪達一行は、突然のマリアの大きなクシャミに圧巻さを感じていた。



「あらやだ♡

大きなくしゃみ出ちゃったわ!

ごめんなさいね♡


えーと、魔法の話だったかしら?」


ウンウンと頷く徹を見て、マリアは深く頷き、話を続けた。



「そもそも、現代世界で魔法が使えるのは《魔女》や《魔術師》だけだったのよ。


彼らは体の内部に「魔力」という魔法の源になる力を蓄えることが出来るの。

けれど、人類にはそれが無い。


_____はずだった。


《魔王》の側近の一人に人間の女性がいるらしいんだけど、《魔王》は今、世界の理を簡単に変えてしまう魔法書を持ってるじゃない?

そこで彼は《世界暦書》を使って、人類も魔法を使えるように魔力を溜め込むことが出来るように世界を書き換えてしまったの!!


それが原因で現在のこの世界も争いが絶えないわ。嫌な世の中になったものね。


ここからがやっと本題。

基礎魔法は、人類が作り出せる魔力を頭の中で考え、念じたモノに具現化させることで使える魔法。これは詠唱はいらないのよね。


詠唱魔法は、《魔女》や《魔術師》などの人類よりも強い魔力を持った者が自分の中の魔力に想いを伝え、言葉で解き放つことが出来る強力な魔法よ。

ただし、詠唱を少しでも間違えれば魔法は発動しないわ。


蒼真ちゃんは、《魔術師》として産まれたから詠唱魔法が使えるの。

彼の《光輝の剣(ルーメ・スパーダ)》は私が教えたのよ!カッコよくて強いの!」


蒼真への愛が止まらないマリア。

話が逸れてしまったので元に戻そうと、蒼真が口を開いた。



「マリア、話が逸れたよ。

けど、徹が聞きたいことはあらかた聞けたかな?」


「……ああ、後、この世界の勢力図を教えて欲しい」


勢力図?そんなものを聞いてどうするのか。

蒼真は疑問に思ったが、マリアは驚きもせず、彼に教え始めた。



「《理想郷(アルカディア)》が世界最強の都市と言われているわよ。

でも、他の4国も侮れないの。


世界の中心に私達の《理想郷》があって、

南に《死街(チッタ・モルテ)

東に《海城郷(アトランティス)

北に《天空城(シエロ)

西に《冥府郷(ハディス)

があるわよ。


何れにしても、ここが最強で他も侮れない。

勢力図は大雑把だとこんな感じね」



「そうか、ありがとう」


「他は無いのかしら?」


「ああ、本当に助かったよ。

ある程度は理解出来たさ、もし、何かあったらまた聞きにくるよ」


よいしょ。と重い腰を持ち上げ、隣で寝ている小雪を抱えると、彼はマリアにお礼を言って喫茶店から出る。

梓もぺこりとお辞儀をしてから、喫茶店の外へ。



「蒼真ちゃん、あの徹って子。

何か隠してることでもあるんじゃないかしら?」


「うん、俺も思うよ。

何か良からぬことを考えているなら、

俺が斬ってやる!」


「そうね。

でも、あまり無理はしないでよ?


蒼真ちゃんが私の弟子だってこと、誰も知らないことを良いことに、《円卓の騎士》の奴らったら、貴方の悪口ばかり言っているわ。


そんなものに屈しないとかそういう問題ではなく、どうにかしておいた方が身のためよ」



「うん、ありがとうマリア。

また来るよ。」


笑顔で喫茶店を出て行った蒼真を見て、

マリアは悲しげな表情で下を向いた。



「徹、それいいね。

ずっとやっててよ……」


「嫌だよ、起きたんなら降りろ!」


「えー、じゃあ寝てるー」


喫茶店の外へ出ると、三人組が道の端で蒼真を待っている姿が見えた。


「あっ、蒼真君来たよ。

この辺の寝れる名所ない?」


「寝れる?

うーん、宿なら俺の部屋があるからそこに泊まっていいとしても……ないかなっ!!」


"えー"と悲しげな声を上げた小雪はさて置き、梓が蒼真へ提案をしてみる。


「よーするに、この世界の名所とやらに連れてってくれよ。

なんかメシ食いたいな!

腹減ったわー……」


梓モード全開の彼女に蒼真は耳元で囁いた。



「それでうっかり名前とか出さないでよ?

社さん?」


「あっ……!!

ご飯が食べたいです。」


突然のように畏ると、蒼真がこの街で気に入ってるという店に行くことになった。

名前は「理想食堂」というらしい。



「どんなところだろう。

王国の騎士様が連れて行ってくれる場所だから、高級店だな!!」


「どんな料理が出て来るんだろう!」


彼らはフランスなどで見かける高層ビルの高級料理店を妄想していた。

白いシェフの服を着た数人のシェフが一人のシェフの一言で「ウィー!」と大きい声で返事をする。

彼らが作った料理には強い想いと匂いが込められていて、それは激情を奏で、食欲を最大限にまで発揮させるレベルの料理。

妄想なのだが、思わず涎が垂れる。



「着いたよ!ココ!」


妄想のままに視線を移すと、目の前の光景に驚愕して、残念な表情を浮かべた。


「えっ、まさか、ここじゃないよね?」


案内された場所は妄想と程遠い、古そうな木造建築の一軒家だった。

小雪は思わず聞き返してしまったが、残念なことに先程説明された「理想食堂」という立て掛け型の看板が設置されており、看板は廃れたように錆びている。



「ココだよ?

さあ、入って入って!!」



見た目的には今にも潰れそうな廃屋だが、中はきっと綺麗なのだろう。


小雪と徹は微々たる想いを胸に秘め、店内へと足を踏み入れた。



_____店内にて。

汚れた窓を通して、反対側の狭い路地が見えるボックス席に着席した一行は店内を見回した。


先程の喫茶マリアに比べたら、大分腐敗し切ったような内装だが、しっかりと営業はしているようで「本日のオススメ」と書かれたホワイトボードにはオムレツなどの種類様々な料理名が記載されている。

レジ脇には揚げ物を上げていたのだろうか、シミだらけの白いエプロンを身につけている強面の黒人男性が立っていた。


「蒼真じゃねえか!


ひっさしぶりだな!

何か食ってくのか?」


強面の黒人男性は笑顔で蒼真に駆け寄ると、

本日のオススメと書かれたホワイトボードを携えて、「オムレツ」を指差しながらウインクを2回ほどしてきた。


「んじゃ、オムレツ四つ頼むよ。

良いよね?三人とも!」


全員が頷くと、黒人男性はご機嫌でスキップしながら、厨房へと向かって行った。



「まさか、アレもオカマ!?」


「な訳ないだろ!

アレはアレだ。アッチ系のギャングとかそっち系の類の人間の匂いがする!」


徹と小雪の言葉に、笑いながら蒼真が口を開く。


「あははは、違うよ。

確かに田中は戦場で爆弾ぶっ放し系男子寄りだけど、違うんだよ。


彼は生粋の一般人だよ」


爆弾ぶっ放し系男子ってなんだよ。

と、突っ込みたかったが、それよりもあの顔で田中!?


そっちの方が数倍衝撃が大きかった。


「俺はてっきりダニエルとかジョンソンとかそういう名前だと思ってたんだが!!


……下の名前は?」



「え?利徳(としのり)だったかな」


「生粋の一般人によく居そうな名前してやがる!!クッソ!!」


田中利徳。

名前を漢字にして彼がその名札をつけていたとしても信じたくないレベルだ。

そのTシャツの名前が田中利徳だと信じたいくらい。



「……はい、お待たせ〜!

理想食堂流、オムレツの出来上がりぃ〜〜!」


焼き目のない黄色いオムレツを四皿、両手で支えながら持ってきた田中は机の上に皿を並べていく。

序でにと言わんばかりか、後から持ってきたのはスプーンやナイフ、フォークなどが入った小さな縦に長いタイプの箱だった。


「お好みでケチャウラどうぞ!」


ケチャップじゃないの?

と疑問に思うが、彼が出してきたものはなぜか緑色の液体の入ったチューブだった。



「なにこの緑色の液体……」


「え?知らないの?

ケチャウラだよケチャウラ!


トゥッマットゥっていう野菜をベースにした家庭でも馴染みのある調味料だよ?」


それは間違いなく、トマトをベースにしたケチャップではないのか?

トゥッマットゥとはなんだ。


分からないが、かけなければ良いだろう。

小雪がケチャウラを無視して、オムレツを頂こうとフォークに手を伸ばした瞬間だった。



「ケチャウラ、使わねえの……ですか?」


覚束ない言葉で会話をしてきた梓に、

小雪は深く頷いた。

そんな得体の知れないもの、食べられるわけがない。


何故、その調味料を作った人は考えなかったんだ。緑や青は食欲を失せさせる効果のある色素なんだぞ!!


「ねぇねぇ、小雪。

あそこ見て!すごい柔らかそうな布団とソファが!!」


「え?!

どこどこ!?!?社、どこにあるの!?」


彼女が指を指した方向をジッと見つめるが、何もない。

柔らかそうな布団とソファを必死に探している間、彼女は満面の笑みで悪戯を。



「えーー、無いじゃん!!

社、騙した!?」


「小雪はリアクションが面白え……ですね。

さあ、オムレツ食べないと冷めちゃうぞ!!ですよ」


最早、言葉として成り立ってない梓の話し方に突っ込むのも面倒な徹と蒼真は、早く小雪が自分の皿を見ないかとドキドキしている。



「酷いなあ、そうだね。

冷めちゃうといけな……」


彼は驚愕した。

焼き目が一切ない、綺麗な黄色をしていたオムレツが緑色に染まっているではないか。


小雪は考える。

この緑色の物体は恐らく、ケチャウラで間違いないだろう。

ケチャウラが入っている容器は、さっきよりも中身が減っていた。


そう!僕がベッドとソファを探している間に自由に動き回れた人物。

それは_____田なっ……梓で間違いない!



「社め……覚えていやがれ!!

食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ!!


うぇぇ……緑色の物体なんて食べたくないよおおおおおお!!」


「食べ物は粗末にしてはいけねえ……ですよ。さあ、私達は食べ終わりました。


小雪、早く食べなっさーい」


ノリノリの梓に怒りさえ覚えるが、

確かに食べ物を粗末にすることはいけない。


僕は決意した。

このオムレツを一口で行こうと!!


フォークで緑色の物体を強く突き刺すと、

瞬時に口の中へと放り込んだ。

味は不明、分からない。

ただ、オムレツではない。


よし、あとは飲み込……!!


少し咀嚼したタイミングでケチャウラが全力で舌を攻めてきた。


ネチョネチョとした液体というよりも固体に近い緑色の物体はオムレツから離れない。

咀嚼するたびに雑草を食べているような匂いと芋虫を食べているような柔らかい口触りが嘔吐感を起こして_____おええええええっっ!


僕は徹の顔面へ盛大に嘔吐をぶちまけたのだった。


最後まで御拝見頂きありがとうございます!


また、評価も増えて後少しで100pt達成です!

ありがとうございます!!


これからも気怠げに毎朝六時投稿していくので、是非!「気怠げ勇者の世界取り戻すの面倒くさ〜い」をよろしくお願いします_(:3」∠)_←小雪

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