第十話 え?ココが王都?
おはようございます!
今日も一日頑張っていきましょう!
魔術師はあの後、脈を打つのをやめ、心臓も揺らさずに絶死したようだ。
彼の死因は、小雪が放った一つの斬撃。
《眠りの剣》
文字通り、斬撃が当たった相手は特に切れるなどの致命傷は受けずに眠りについてしまった。
眠りについた後、小雪の言葉通り「永遠におやすみ」を実行したわけなので。
きっと、そこの調節は自分で出来るのではないかと考えられる。
蒼真は以上のことを考え、王都へ行くことを再開した自分達の露中に問い詰めてみた。
____が。
「昨日のことを覚えていない?」
「何のことだか全く……。
そもそも、僕がそんな土壇場で主人公みたいなことすると思う?面倒なだけだよね。
……今後の展開を考えて行動する派だからさ」
そう言われてみればそうだ。
彼は自分の後先のことを考えて、行動するタイプであるのは今までの行動を見て分かる。
「じゃあ、アレは何だったんだろう」
「蒼真、きっと主人公補正とかそういう系列だよ!!
小雪、何も出来ない主人公だとか思われるのは困るじゃん?
最近、蒼真活躍しすぎて主人公目立たないとか思い始めてるって聞いたしよ!」
徹がコソッと蒼真の小耳へ囁いた。
「成る程……!
それなら納得出来るわ!」
「納得んすんなし!!
聞こえ過ぎるから!徹の小声!」
怒りで揺れた声は、空高く登り、空気に混じるように消えた。
「いやあ……それにしても珍しいね。
小雪がツッコミ役なんてさ!
俺ら、ボケるの久しぶりだから楽しくて楽しくて!!」
「あぁぁ!!もう!!
何でそんなに仲良くなってんの!?
出会ってからそんなに経ってないじゃん!」
すると、真剣な表情で蒼真は。
「出会いの時間なんて関係ないよ。
仲良くなるのは自分次第☆」
「マジレスだけは勘弁して……」
三人が巫山戯ながら話をしていると、
蒼真は大きな声を上げた。
「ほら!!見えるよ!
もう、王都だ!!」
_______自分達がいる場所は少しだけ高台のようで、彼が指を指した場所は小さく、遠く見える。
そこまでの距離はないんだろうが、遠近法というやつだろう。
「アレが王都……?
蒼真、本当に言ってるの?
僕、突っ込むのもうしんどいんだけど!」
基、彼が指を指したのは小さな村。
"王都"と呼ぶにはあまりにも小さいので、誰も信じない。
小雪と徹が彼の言葉に目を何度も擦り、
夢かどうかを疑う程だ。
「いや、アレは間違いなく、
現在の王都、《理想郷》だよ!」
彼の真剣な表情に冗談ではないと思ったのか、言われた通りついていくことに。
彼が指を指した小さな村の内部は、
びっくりするほど荒れ果てていた。
損壊した家の瓦礫が足の踏み場もないほど地面を占領し、飛び散った血痕が家の壁にべったりとついており、
まだ黒くなっていない血液は新しいものだと分かる。
いくつかある家の中で、
彼は、損壊し、扉もない家の中に入った。
見るからに古そうな家の中には、上へ行く階段と地下へ続く階段があった。
今回は、地下へ続く階段へと向かう。
木製で出来た家の為か、古いせいなのか分からないが、階段を一歩一歩踏みしめるだけでギィギィと嫌な音がする。
薄暗い階段を照らす物は何もなく、
自分の足で階段のある位置を探している状況だ。
すると、彼は村について少しの情報を自分の口から紡ぎ始めた。
「ここは昔、小さな村だったんだけど、
転移魔法技術を生み出した人が産まれた場所でね。
《魔王》にも《魔女》にもバレないように、
この階段の先に転移魔法が張ってあるんだ!」
彼について来て、たどり着いた場所は、狭くも広くもない地下室。
薄暗い地下室を唯一照らしているのは、水色の光で描かれた魔法陣だった。
これが転移魔法の魔法陣とでも言うのだろうか。
魔法陣の中心部に描かれている六芒星の星の部分には、時計のように長い針と短い針が存在し、それはまるで現在の時刻と重なっているように見える。
「……この時計は?」
「……良いところに気が付いたね。
この魔法陣は、この荒れ果てた世界と我らが主人の国王が作っている王都という名の異世界への扉なんだよ。
ただ、異世界を繋ぐための場所でもあり、契約を結んだ証というのもある。
まあ、簡単に言えば、現実の世界の時刻と異世界の時刻が異ならないように時を刻めるものが欲しくて、魔法陣にしたんだ!」
"さあ入るよ"とでも言いたげに彼は、
魔法陣の中心部に立つと、手招きをし、全員を集合させて、詠唱を口から放った。
「《理想郷よ、王の名に従うとして我に異世界を渡りうる権利を与えよ!!
転移魔法!》」
_______瞬間。
魔法陣へ魔力の装填が完了されると、
彼の詠唱が終わった後すぐに、彼らの姿は地下室から消えた。
「えっ……?!」
魔法陣を通って放り出されたのは、
空高い上空のど真ん中。
空にど真ん中があるのかは別として、
徹と小雪に飛行魔法の技術があるわけもない。
梓を乗せた徹を含め、三人は簡単に落下していこう。
_______丁度その頃、上空で止まった蒼真は。
「あっ、そうだった。
俺しか飛行魔法使えないんだったー!
ヤバい、彼らが落ちる前に救出しないと!」
魔法陣に乗る時に、落ちることを注意事項として言っておくのを忘れていた。
彼は、後悔し、落下していく友人達を飛行魔法で拾い上げる作戦に変更。
直ちに、行動に移そうと、
全速力で手始めに1番面倒臭そうな徹の方へと飛んでいった。
徹は現在、梓を背負いながら落下しているので小雪よりも速度は違うはずだ。
人間を浮かす重力では、流石に体重を超えた体重を抑え切るのは無理だ。
「掴まれーっっ!!!
《鳥に通ずる力の源よ、前世の力を振り絞り、我に力を与えよ。人は鳥、鳥は人。今欲するは、天を高く飛ぶ翼!!飛行付与!》」
強い風が吹き通る音と共に空を飛び、梓を背負った徹に、付与型の飛行魔法を与えると、
彼らはその瞬間から鳥だ。
「ヤバイ、小雪君が地面に!!
それだけは避けろ、俺!」
全速力で小雪の元へ迫る。
空中でクルクルと体育座りの状態で回転している小雪には、まるでやる気というものを感じない。
いつも通りといえば、いつも通りかもしれないが後少しで地面とご対面なのにも関わらず、彼はお気楽丸出しだ。
彼を掬い上げるように救出すると、
そのまま地面へと降り立った。
「まず、数カ所突っ込ませろ」
小雪も徹も、高い場所から落下する恐怖を植え付けられたところで、何の説明もしてくれなかった少年へ拳を握り、一発かましたい。
だが、そんな願いが叶うはずもなく、衝動を抑え、彼らは地面に着いた後、上を見上げて驚愕した。
空には、自分達が入って来たと思われる巨大な魔法陣が立て掛けるように存在し、空の上で時間を教えてくれている。
そもそもに、落ちている最中にも驚きはしたが、
その広大なまでに広がるこの世界は、自分が見渡せる範囲外まで続いていた。
だが、手始めにと言わんばかりの巨大な壁に囲まれた巨大な王都。
空から見えた限りでは、
広大な敷地内の王都の中心部に見えた時計台の下が水色の輝きを見せた水であることが分かるくらい。それも薄っすらとしか見えなかった。
これ以上は、着いてから自分の目で確かめるしかないようで、
何も、敵地に行くわけではないのだ。
そこまで緊張もしないが、少しだけ楽しみになっているのもあながち嘘ではない。
初めてこの地に踏み込んだ彼らは、
次の蒼真の指示を黙って待った。
「とりあえず、異世界に入れたとしても、
王都の中に入らないとなー!
もう少し歩くよ!」
空中の中での落下滞在時間が長かった小雪は、
心身共に疲労で疲れ切っていた。
昨日の魔術師が襲来してきた件は、禿げた魔術師の頭をディスったところまでは覚えているが、その後を覚えていない。
何か大切なことを忘れているような気がするが、忘れていないような気もする。
今日も今日とて、蒼真に魔法を使えるようになったのかと問い詰められたのは問い詰められたが、
魔法の使い方も、どうして人類が魔法を使えるのかなどの情報があまりにもない僕には殆ど不可能なコトだった。
思い出すだけでも疲れる。
疲労にとても弱い僕は、早く横になれる場所をと、蒼真が指示した動きを、キリキリと働くように動いて、彼の指定場所まで彼についていくだけの人形となった。
だが、ずっと徹の背中で眠っている梓が羨ましくて仕方がない。
もし、此処が優しい世界であれば、
僕に働くことを"絶対"としないはず。
王都に着いたら、何もしない脱力人間になろう。
そう心に決めて、彼は蒼真の後をついて行くことに全力で取り組んだのだった。
おはようございます。
最後まで、ご拝見頂き、誠にありがとうございます!
この小説を楽しみにしてくれている方、
本当にありがとうございます!
現在、十話のみの連載に対し、後少しでポイントが100に到達します。
これは本当に嬉しいことで、
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自分も、エタらせる事だけはないように頑張りますので、どうか応援宜しくお願いします!




