閑話 朝鮮族の難民
モンゴル人は半島国人に二流国民扱いで見下されていたので朝鮮族を嫌っている。
満州人は遼寧省を占領されて朝鮮族に略奪されたり虐殺されたりで恨んでいる。
日本人は朝鮮族が国を失った今でも上から目線で接触して来るので匙を投げている。
何でこちらに逃げようとするかなぁ?
朝鮮族は陸路だとモンゴル方面に逃げるか遼寧省を通って高麗半島へ向かい、海路だとシナ方面に逃げるか岸沿いに遼寧省沿岸を通って高麗半島に向かう。
それで高麗半島に向かった朝鮮族の大半は途中で略奪されたり殺されたりする事になる。
略奪や虐殺に遭った遼寧省の住民達の恨みは深いからなぁ。
それでも朝鮮族は何故か高麗半島まで着けば何とかなると思っている。
未だに自分達の国だと思っていて勝手に侵入して居座ろうとしている。
高麗半島の住民の殆どが朝鮮族の略奪にあって逃げてきた人達になっているから恨みが深いため当然のことながらそれが許される事は無い。
済州島に流れ着いても耽羅となってからは朝鮮族は排斥対象で碌な目には会わない。
そして最後に流れ着くのは日本だけど日本は許可なく領海に入った船については原則として沈めているので流れ着く者は少ない。
銃撃して沈めると国内に五月蠅い奴等がいるので最近は魔法を使って誰にも気付かれない様に秘かに沈めている。
それでも運良く上陸した朝鮮族についてはシナ人なのでシナへ送還となる。
流石に北京軍閥の支配地域には返せないので台湾の対岸辺りの軍閥の支配地域へと送還となる。
軍閥にはお土産を渡しているので逃げてきただけの難民よりは幾分ましだろう。
シナに送還された朝鮮族はどうなったかと言うと初めは攪乱放送に使われていたな。
北京軍閥との戦闘に置いて朝鮮族が矢面に立たされているので逃げて来れば好待遇で迎え入れる話とかを半島語で流していたのだ。
少しでも敵の士気を下げようとしていたのだが全く効果はなかった。
そもそも高麗半島出身の朝鮮族は言葉は通じないし漢字は読めないしすぐに逃げ出すしで全然使えない奴等との評価を下されて北京軍閥側ではお荷物扱いにされていた。
前線の指揮官が人が足りないと北京に上奏したら回されて来たのが朝鮮族だったのだ。
使ってみたが命令してもその場では分かった振りをして命令通りには動かないため全然使えなかった。
叱責しても言葉も通じずその場はペコペコするだけ、しかも恨みに思ってか闇討ちをしたりする。
そんなところに半島語の放送を流し続けても意味は無いし効果はない。
朝鮮族は確かに逃げて来るけどお荷物が増えるだけだし敵の士気はと言うと……
なんか敵に馬鹿にされているか喜ばれている感じがする。
結局は両陣営で朝鮮族は使えないとなって、一部の優秀な者を除いて弾除け扱いされる事になった。
女子供は前線に出される訳ではないけどそれにしても……
まぁ、朝鮮族にとってはすぐに殺されないだけシナの軍閥の方が満州よりはましなのかぁ?
自業自得とは言え遼寧省でやらかしたことで満州では恨みが深いからなぁ。
日本に流れ着いたシナの朝鮮族の中にはこんな奴もいた。
「日本への亡命を要求する」
「残念ですが日本では亡命者を受け入れてはいません。あなた方シナ人はシナへ送還されます」
「私はシナ人ではない、半島国人だ。シナへの送還は断固拒否する」
「半島国は既にありません。高麗半島は独立して別の国になりました。日本に来るまでに半島沿岸を通過してきたあなたは知っている筈だ」
「そんな事は認めない。半島は半島国の領土で祖国だ」
「では半島に送還しましょうか?あなた方の同胞が少数ながら半島に残っているのであなたが強く主張するのであれば出来ない事も無い。そうしますか?」
「……それは拒否する。半島は満州人に不法に占拠されていて危険だ」
「それではシナへ送還ですね」
「私は半島国人だ。シナへの送還は断固拒否する」
「半島国は既にありません。そしてあなた方は法的には半島からシナへ移民したシナ人です」
「そんな事は認めない。私は半島国人だ」
「では聞きますがあなたは遼寧省から逃げてきていますよね」
「……その通りだ。北京軍閥の圧政から逃げてきたのだ」
「ではあなた方朝鮮族が北京軍閥の傘下に下った経緯も当然知っていますよね」
「満州が突然攻めてきて領土を奪われたため傘下に入るしかなかったのだ」
半島国は遼寧省を占領していただけで領土では無かった筈だが……
「その戦闘であなた方の政府は瓦解して国を失って北京軍閥の傘下に入った」
「北京軍閥の傘下に入ったのは仕方なくだ。それに政府は瓦解していないし国もある」
「ではそこに送還しましょう。何処に送還すれば良いですか?」
「……それは無理だ。政府は亡命政府だし国は不法占拠されている」
「その亡命政府を認めている国は有りますか?朝鮮族を傘下に収めた北京軍閥ですら認めてはいないのに」
「……それでも我らが亡命政府を認めている以上亡命政府はあるのだ」
主権を放棄して北京軍閥の傘下に入ったのに亡命政府ですか。
「まあ良いでしょう。領土を得て国を再興してそれを周囲に承認させればそれも有りだ。でも現在は国がないのはあなたも承知していますね」
「だから国は不法占拠されているのだ。奪還すれば済む話だ」
「でも現在は国がないのはあなたも承知している。そして北京軍閥の傘下に入っているシナの朝鮮族は日本では法的にはシナ人です」
「そんな事を勝手に決めるな」
「勝手に決めたのではありません。あなた方がシナの覇権を目指して遼寧省を占拠し瀋陽に拠点を移した為そうなったのです。あなた方が進んでシナ人になったと言うのが日本政府の見解です」
シナの覇権を目指すのではなく政府が半島に残ったままであれば政府の瓦解も無く、国が残った可能性は高い。
満州が遼寧省の奪還を始めても負けたら占領を放棄して占領軍を国に戻せば良かったのだから。
そして政情不安な地に住む同胞の保護が名目で有れば領土を増やせた可能性もある。
満州の主敵はあくまでもシナの北京軍閥だからな。
「そんな馬鹿な。私は半島国人だ。シナ人ではない」
「分かっていませんね。シナの漢族はそう言った人達の成れの果てなんですよ。古来、異民族がシナの覇権を目指して絶えず流入してきていたんです。だから漢族のDNAを調べても混ざってしまっていて何処の由来の民族か特定できないんですよ?あなた方朝鮮族は自ら望んでその仲間入りをしたんです」
「我々はシナを支配下に置こうとしたのであってシナ人になろうとしたのではない」
「歴史上それに成功したのはモンゴル族ぐらいですね。大抵は支配したとしても後に漢族として吸収されてしまいました。清朝を起こした満州族も今では満州の少数民族です」
「そんな事は無い。我等がシナの覇権を握った暁には全てが我等に永遠に平伏するのだ」
失敗して逃げてきた癖に何をほざいているんだか。
「ま、そんな事は置いておいて。今の問題はあなたの去就だ。あなたは半島国の占領下にある遼寧省に移民した。間違いありませんね」
「私が我が国が領土とした遼寧省に移民したのは間違いない」
「そして満州が遼寧省の大半の奪還に成功して残った遼寧省の地は満州と北京軍閥の係争地となった。あなたはそこに居住していた」
「そうだ。移民した瀋陽は満州軍に追い出されてそこに居住していた」
「北京軍閥はその地を自らの主権下にある事を宣言してあなたを含めた居住する朝鮮族もそれを認めて主権を放棄して傘下に加わっています。そして朝鮮族の居住地域は現在も自治区扱いですね。間違えありませんか」
「その通りだ。それがどうかしたか」
亡命政府と言うからには主権を放棄してはいけない、主権を巡って争う立場なんだから。
主権を剥奪されたとかなら主権回復のための亡命政府もありかな。
主権を放棄した時点で半島国の正統として主権を主張できるのは済州島とその近辺の島々の住民だけになってしまった。
高麗半島は別の国として独立したから無関係だ。
そして今では済州島は国名を耽羅にして朝鮮族とは決別したため半島国は完全に亡国となった。
「あなたの移民先が北京軍閥の主権下に入ってあなたはそれを認めて半島国人としての主権を放棄してその傘下に入った。その時点であなたはシナの朝鮮族です。あなたは移民先でシナ人になった事を私に認めました」
「……………」
「そう言った訳であなたは法的にはシナへ移民した朝鮮族のシナ人です」
「そんな事は認めない。私は半島国人だ。シナ人ではない」
「それを今の私に主張しても意味が有りません。これから送還されるシナで国を再興するなりしてから主張してください」
彼はシナの朝鮮族でシナ人だからシナに送還された。
シナの地で朝鮮族の国を再興するなりシナの覇権を掴むなり好きにすれば良い。
日本への亡命を要求する者の中には主権の放棄を認めず自らの亡命政府の主権の正統を訴える者もいた。
しかし日本政府は済州島政府を正統と認めた立場なのでこれを認める訳には行かなかった。
満州政府も済州島政府を正統と認めて講和しているのでこの亡命政府を認めない。
結局は北京軍閥と対抗しているシナの軍閥しか受け入れ先がないのだ。
日本への亡命を求める者達がいるが日本は亡命者の受け入れはしてはいない。
それに権力を笠に着て住民に略奪や虐殺をはたらいたシナの朝鮮族は日本では唯の犯罪者だ。
なおさらに日本に受け入れる訳には行かない。
シナ人ならそんな奴等でも上手く使えるんじゃないか?
冊封体制の下で長い間使っていたんだから。