将軍と呼ばれた男
「んー殺される前にあたしの
名前教えてあげる、レイって言うの
宜しくね······。」
「よろしくも何も···········。」
レイ「将来有望な若者を殺すって言うのは、
胸糞悪いわね」
ルイーダ「じゃあ何で、
戦争を仕掛けたって話になるだろ」
レイ「何言ってるの?戦争を
仕掛けたのは、そちらの方よ
うちの広大な土地が欲しいって」
ルイーダ「そんな身勝手な····。」
隊長「ルイーダ!!勝手な行動は、
慎め!!お前の相手は、俺だ!」
俺と彼女の間に割って入り、
女の襟首を掴む。
レイ「さっきまで怯えたヤツが
意味がわからないだけど····。」
隊長「俺がお前ごときに
怯えるなんて有り得ないだろ」
レイ「はいはい、じゃあ皆殺しね」
隊長「嘘だろ???」
レイ「だって、敵でしょ
そういう事をするのは、当然じゃない
それにあなた達から仕掛けて来たじゃない
それでどれだけの犠牲を
生んだと思ってるの??」
ルイーダ「それじゃ、キリがないじゃないか!
復讐の連鎖が続いてしまう····。」
レイ「綺麗事ばっかり言ってるじゃないよ
復讐ばっかりじゃないのよ
欲望と人の愚かさが映されるのが
戦争よ·········。」
隊長の手を振り払い、杖を上に挙げた。
「何をする気だ??」
レイ「さっきも言ったじゃない
皆殺しよ、ささっとやるわよ」
ルイーダ「やらせない!!」
レイ「あなたの国は、汚れに汚れ
真っ黒で白なんて一切ないわよ
世界も国も、光なんて
無いに等しい。」
ルイーダ「それをお前が決めるな!!
人々が決める事だ!
光を失ってると思ってるのは、
お前じゃないか?」
レイ「あなたは、何も知らないのね
まぁいいわ、業火よ焼き尽くせ!
ファイアスター!!」
魔法陣から業火が放出され
あっという間に火の海に包まれ、
女は俺を見つめ、微笑んだ。
「世界の全てを知る前に死になさい
知っても絶望するだけよ」
ルイーダ「俺は、生きたい!!
家族を守る為に、死ぬ訳に行かない!
そんな事知るか!!」
レイ「そう、でも死ぬのは、
変わらないわ、大人しく·····。」
ルイーダ「だから死なねぇって
言ってるだろ!!風の咆哮!!」
魔法陣から猛烈な風を起こし、
火は、敵側に燃え移り、
俺は、なんとか無事に済んだが
他のやつの消息は、わからない。
ルイーダ「アレックス!!無事か?」
アレックス「おう!何とかな
それにしても隊長もみんな死んだぞ
これからどうするんだ?」
ルイーダ「そうだな、ほかの部隊と
合流しかないよな」
アレックス「まぁそうなるよな」
レイ「勝手に死んだと思わないでくれる?」
煙が消え去り、女1人が現れ、
後ろには、軍勢が無傷で生きていた。
ルイーダ「生きてたのかよ」
レイ「そりゃそうよ、うちには、
最高の防具があるからね、
そんな位じゃ死なないわよ、
生かすつもりなんて無かったけど
あなた、面白い奴みたいね
逃がしては、あげないけど
生かしてあげるわ」
ルイーダ「言ってることが意味わからないぞ」
アレックス「捕まれって事かよ」
レイ「そうよ、お友達は、頭がいいみたいね
そうでもないか········、じゃあ寝て」
魔法をかけられ、俺達は、
その場で倒れ込み、どこかに連れていかれた。
******************
王様は、わしに昔話をする時に
未来の俺は、笑っていたから
大丈夫だと言っていた。
昔のわしは、未来の自分が
笑っていたなんて分からなかった
確信すら無い。
でも一つだけ変わらないことは、
家族を守る事、それに執着していたわしは、
全てがどうでも良かった。
戦争の勝ち負けも世界の命運も······。
無知に近かった、そう言えば
王様は、ありえないと言うだろうが
人なんてそんなものだ。
ワシだけかもしれないが···。
****************
知らない天井と横には、アレックスがいて
あっちこっちに視線を向ける。
アレックス「ルイーダ、起きたか、
ここは、どうやらカーサンみたいだ。」
ルイーダ「そうか、俺達、
何されるだろうな····。」
アレックス「無事には、済まないだろ」
ルイーダ「まぁそうだよな」
俺は、ここで死ぬのか??
アレックスも俺も、そんな訳に行かない
生き残るんだ、絶対に········。
テントの扉が開けられ、誰かが入ってきた。
レイ「逃げるのは、結構だけど
殺されるだけよ、心配しなくても
何もしないわよ」
ルイーダ「じゃあ何で連れてきたんだよ
捕虜として働かせるのか??」
レイ「ちょっとあってるかな、
あなた達、うちの軍に入って貰うわよ」
ルイーダ「嫌に決まってるだろ」
レイ「負けた奴に拒否権なんて無いわよ
言う通りにしてもらうわ」
ルイーダ「なんで、仲間にするんだよ
そんなに切羽詰まってるのかよ」
レイ「ちがうわ、戦争なんて
早く終わらせたいのよ、
あたしはね、上は、知らないわ」
ルイーダ「そんな事をしたら
お前の命が危ないじゃないか?」
レイ「そうかもね、でも
バレなきゃ大丈夫よ、
とりあえず、ゆっくりしときなさい
今日は、戦する予定は、無いから····。」
ルイーダ「ダズルは、負けたのか?」
レイ「まだ陥落は、してないわ
でも、時間の問題よ」
ルイーダ「爆弾とか落としたりしないよな
家族がいるんだ」
レイ「そこまでしないと思うけどね
それまでに陥落するわ
あなた達の国がね·······。」
ルイーダ「そうか·······。」
レイ「救いに行く?なんてね
今のは、冗談よ」
ルイーダ「本気にする所だった、
でも救えるなら救いたい、
ダズルまで壊されたら、家族の
居場所まで無くなる。」
レイ「今日と明日やるなら格好の日よ
だって軍の幹部も政府も
ダズル陥落に躍起になってる
その隙を付けるわ、
あなた達が強ければね」
ルイーダ「お前は、協力してくれないのか」
レイ「あたしは、貸せるわ、
他のやつは、知らない、
今は、準備だけでもしときなさい
じゃあね·········。」
テントから出ていった。
アレックス「意外にいい人なんだな
本当は、どうかわからねぇけど
どうするんだ??」
ルイーダ「俺は、ダズルを救いたい、
俺達の居場所を守りたい。」
アレックス「俺も同じだ、
一緒にダズルを救おう······。」
互いの手を握り、見つめ合う。
夜になり、カーサンを出ていこうとした。
レイ「2人で行くつもり?
無謀だと思うけど、頭大丈夫??」
レイの後ろには軍勢がいて、
ルイーダ「何のつもりだ??」
レイ「さっきも言ってるでしょ、
力なら貸すわ、あたしの仲間も
協力してくれるわよ
こんなチャンス滅多にないわ」
ルイーダ「それもそうだな、
ありがとうな、いいのか?
皆は、それで·······。」
レイ「これも世界のためよ
戦争なんて嫌なのよ、あたしも
仲間も、だから、けじめを
つけたいの」
ルイーダ「おう、わかった
いこう、ダズルに······。」
****************
「ダズル国 首脳官邸。」
「や、やめてくれ!!
俺を殺さないでくれ!!ぐはっ!」
黒服の男達に殴られ、
額に銃を擦り付けられる·····。
黒服「どうしますか?首相」
スロン「ささっとやれ、こんな奴生かしても
仕方ないだろ······。」
「こ、降伏するから殺さないでくれ
お願いだから、助けろ····。」
スロン「それが人に物を頼む態度か?
ダズルが降伏した所でカーサンは、
得もしない、何も無いのに
お前を生かす利益なんてあるのか?
言ってみろよ?」
俺を見下ろして、足に顔を乗せられる。
「お前にそんなことを言われる筋合いなんて
ない、とにかく俺を殺すな!
殺すなら他のやつを殺せ」
取り巻きの人達を指差し、
必死にしがみつき、生かしてもらうおう
としている········。
ドアの隙間から覗き、様子を見ていた。
レイ「これでもダズルを救いたい?」
ルイーダ「あの首相じゃなくて
ダズル救うんだ、あの男は、どうでもいい。」
レイ「それは、良かったわ、
うちの国の首相もあなた達の首相も
救いようがないくらいクソよ、
まぁそういう事よ、覚悟は、良い?」
ルイーダ「あぁ!!当たり前だ!」
不気味な位ここに来るまで、
敵はいなかった。
だから苦難は、ここからだ。
覚悟は、出来てる。
俺なら大丈夫、きっと生き残れる。
******************
レイは、ドアを蹴りつけ、
倒し、巨大な銃を周囲に向ける。
スロン「レイ、どういうつもりだ?
ここに何しに来た?
返答次第じゃお前の命が無くなるぞ」
レイ「これが見えないの?
あんた達みたいな首相がいるから
世界は、いつまで経ってもクソなのよ!」
スロン「何を言っている!!
お前は、知ってるだろ、
戦争を仕掛けたのは、ダズルだ。」
レイ「だから何なの、買ったのは、
スロン首相、貴方でしょ、
買わなければ、穏便に済ませとけば、
世界に戦争なんて生まれなかったわ」
スロン「穏便に??ふざけるな!!
あれだけの犠牲を生ませておいて
話し合いで済まされると思うなよ!
軍がどれだけの損害と受けたと思って、
お前が1番分かってるだろ!」
レイ「わかってる!でも、でも、
戦争は、1番いけない!!
こんな殺し合い、続けて
良いことなんてきっと無い!」
「やかましい!!」
首相は、隠し持っていた銃を
レイに向ける·····。
「お前がうちを負けさしたんだ!!
死ね!!俺のプライドを
ぐちゃぐちゃにしやがって
お前もムチャクチャになればいい。」
スロン「その銃を捨てろ!!
言う通りしないと、お前を殺すぞ」
「やってみろよ」思い切り、顎を
蹴り挙げられ、銃が転がされ、
武器は、無くなってしまう。
ルイーダ「身勝手過ぎる!
お前もだ!!お前が土地を欲しい
と欲を出したからこうなったんだ!
少しは反省しろ!!」
「うるさい!!大人しく、
お前らが土地を渡してくれば
こうは、ならかったんだ、
全部、全部、お前らのせいだ!」
スロン「なんでも人のせいにするな!!」
アレックス「てか、どっちもどっちだろ、
俺は、ダズルもカーサンも
悪いと思うぜ、言い合いなんて
無駄だと思うが········。」
スロン「どっちもどっちだと!?
お前に何がわかる!!」
スロンは、アレックスに銃を向ける。
アレックス「やる気かよ」
スロン「無知なやつにうちの国のことで
とやかく言われる筋合いは、ない、
ダズルは、陥落させてもらう。」
曇のない目で俺とアレックスは、
取り巻きの黒服のヤツに銃を向けられる。
さて、このピンチをどうやって
抜け出そう······。
将軍と呼ばれた男、続く。