将軍と呼ばれた男
汚れを知らない人間なんて
いるのだろうか?
純粋は、無知であればそうなのか?
それは、ただの知識不足だけで
純粋なのでは、ない。
世界の全てを知って、
汚れのない自分で居れるのだろうか?
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「ダズル基地」
「志願兵よ!!この国の為に
戦えることを誇りに思え!!」
上官は、朝礼台に立ち、
声高らかに言う。
それを俺は、ボッーと見つめるだけだった。
朝早くから、志願兵として、招集され
何百という人がそこには、いた。
俺と同じやつがこんなにいるのか?
この国は、そこまで息詰まっているのか?
戦争の状況は、全く
国民の元へとは、届かず、
俺ももちろん知らない。
負けているのか、勝っているのか
どちらかで国の命運は、決まる。
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基地内に部屋があり、
そこに荷物を置き、また呼び出しが
あるので、すぐさま向かう。
いくつかの部隊に別れるらしく
編成の発表をするらしい。
「集会室」
知らない名前が飛び交い、
ついに自分の名前が呼ばれ、
前に立たされる。
部隊の隊長が俺の顔を見下ろし
いきなり怒鳴り散らす。
「なんだその虚ろな目は!!
お前は、この国のために
戦える事を誇りに思わんのか!」
そんなふうに見えたのは、俺が
ボッーとしていて、
元々、なりたくて、なったわけじゃない
そんな事言ったら、
反乱分子として殺されるか·····。
それは、嫌だ、俺には、
守らなきゃいけない家族がいる。
だから耐えろ···。
「とても、誇りに思います!
歓喜のあまり、ボッーとして
いたのです、申し訳ありませんでした!」
嘘を並べ、頭を深く下げた。
隊長は、上機嫌に笑い
肩を叩き、次のように話す。
「皆、この青年を見習えよ
少しでも、戦争が嫌だと
逃げる奴は、反乱分子として
処刑する。
お前らには、戦いという道しか
用意されてないと思え!!」
それは、ただ不快で
理不尽でその言葉は、
俺とほかの者を蝕むには、
充分だった。
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「自室」相部屋の奴が
ベッドで寝転び、こちらを見つめる。
「お前は、ルイーダって言ったよな」
「そうだが、お前は、誰だ?」
「アレックスだ、名乗るのを
忘れた、すまんか」
ルイーダ「別に大丈夫だ。」
俺もベッドに座り、向かい合わせになる。
アレックス「ルイーダは、
戦争が怖くないのか?」
ルイーダ「なんで、そんなことを聞くのだ?」
アレックス「嫌、気になっただけだ。
お前がこの国を為に誇りに
ほんとに思っているのか?」
ルイーダ「怖くないと言えば嘘になる。
でも、家族の為だ、仕方ない。」
「強いな、俺は、出来れば
戦いたくない、この国は、
戦争で不利でありながら
降伏もせず挑み続ける意味が分からない。」
ルイーダ「強くなんかない、
それしても、そんなに悪いのか?」
「知らないのか?そうか
ほとんどのものが知らないもんな
上官達の話を偶然聞いてしまったんだ。
軍事国であるカーサンに
完膚無きまでやられ
絶望的らしい。」
ルイーダ「カーサンって、
軍事費に膨大な金を掛け、
戦闘機や最新の兵器を保有してる
って噂に聞いたことがある。」
アレックス「まぁ隣国だからな
それぐらいの情報は、勝手に入ってくる
でもそれ以上の情報が入ってこない
戦闘機の性能は、どれ位か、
兵器の威力は、どれ程のものか、
誰もわかっていない。」
ルイーダ「もしかして、
丸腰で突っ込む気じゃないだろうな」
アレックス「さぁな、俺達は、
上官達が考えることが分からない。」
ルイーダ「そうだな、お前とは、
話しが合いそうだ、よろしくな
アレックス。」
アレックス「おう、こちらこそ宜しくな
ルイーダ·········。」
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「ダズル基地 会議室。」
「依然として、隣国との戦争は、
不利な状況が続いています。」
たくさんの上官が集まり、
戦略を練っていた。
上官1「あっちは、最新の戦闘機や兵器を
使ってくる、こっちも戦闘機を
要して、攻めこめばいい。」
上官2「最新に勝ってる戦闘機なんて
あったのか?」
上官3「そんなのないに決まってるだろ、
数で突っ込めば、どんな最新だって
倒せるだろ、うちは、数だけは、
カーサンには、負けない。」
上官1「まあな、下民の命など
戦闘機程の価値などないし、
この国を為に死ねる事に
感謝にしろとってな」
上官2「そうだなぁ!!」
高らかに笑い、とっても
戦争の作戦を練っているとは、思えない。
今思えば、上官達は、
国の官僚の息子が多く、
戦場に立つことなどなく、
机の上で作戦を練り、
地形などろくに知らず
そんなもので、戦おうとするから
負けるはずだ。
この国は、世襲制で
金持ちは、金持ちで貧乏人は、貧乏人
どんだけ、実力があっても
下民扱いされ、這い上がれない。
俺は、死ぬような努力と
幾度の死闘を繰り広げ、
俺は、将軍と呼ばれるようになるのは、
もうちょっと先の話だ。
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「現代、王宮 応接室。」
べニラ「大変、興味深い話を
してらしゃいますね」
ルイーダ「そうか?そうでもない気がするが」
王様「いやいや!!、結構、
波瀾万丈だったんだな、
ルイーダ首相は、強い人だと
思っていたから·····。」
ルイーダ「最初から強い人間などいない
あの頃は、必死だったんだ、
生きる為、家族を守る為····。」
王様「でもそれは、人として同然だ、
戦争を怖いとか嫌だとか
思っても俺は、可笑しくないと思う。」
ルイーダ「そういう時代だったんだよ
わしが若い頃は、
でも今は、違う、国同士の
戦争などなく、王政国家になってから
やっとここ20年で本当の
平和が見えたんだ。」
王様「ルイーダ首相·········。」
ルイーダ「だから俺は、しぬまで
この世界を見続けたい、
あの頃、何のために戦っていたか
わからない自分に
俺は、未来の人々の為に
戦っていたんだと分かったんだ。」
あの頃は、流されるまま、戦い、
上官達には、日常茶飯事に
逆らい、あまりの作戦の酷さに
意見し、殴られようが
自分だけ曲げなかった。
死にたくなどない······、
下民でも這い上がってやる
こんな国、クソくらえだ。
王様「そりゃそうだよな、
最新最強戦闘機に普通の戦闘機で
挑むなんて無謀だし、
人の命をそんな蔑ろに
しちゃいけないのに·····。」
べニラ「逆らわず、上官達の言うことが
聞いてれば、信頼され、
反乱分子として見られる事も
なかったのでは??」
ルイーダ「俺は、自分の目の前で
死ぬ奴らを見たくは、無かったんだ、
だから、逆らい、俺は、
ダズルを変えようとしたんだ。」
べニラ「まるでルシウス王の様ですね」
ルイーダ「そうだ、あいつは、
まだ、生まれてなかったしな
出会うのは、もっと先だがな、
さぁ話の続きをしようか」
固唾を呑んで、聞き入った。
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「数日後」
廊下で偶然、アレックスに
会い、駆け寄ってきた。
アレックス「聞いたか?
作戦のこと·········。」
ルイーダ「ああ、聞いたさ、
ここは、聞かれてるかもしれないから
部屋に行こう。」
アレックス「そうだな、ルイーダ。」
「自室」アレックス「なんだよ、
最新戦闘機に普通の戦闘機で
迎え撃つって嘘だろ」
ルイーダ「嘘でもないだろ、
味方にそんな嘘付いてどうする?」
アレックス「そうだよな、
この日のために訓練してきたけど、
戦闘機なんて、少ししか
乗ってないんだが····。」
ルイーダ「そうだな、俺も同じだ
俺達は、生身だがな」
アレックス「生身で戦うのと
どっちがマシなんだろうな」
ルイーダ「同じだろう、どちらも·····。」
アレックス「戦うのは、決まってるし
変な希望持っても仕方ないよな」
ルイーダ「そうだな」
戦うのは、嫌だった。
家族の為、自分を守る為、
どんだけ綺麗事を言っても
嫌なもの嫌な事は、変わらない、
泣き喚いても、変わるはずなどない、
それほど世界は、甘くない、
残酷で苦しめる事ばかりだ。
****************
「翌朝 ダズル森」
周りは森林で、上を見上げても、
木しか見えない。
ここに敵は、いるんだろうか?
アレックス「ここを突破されたら
ダズルは、おしまいだ、」
ルイーダ「そうだな、街に襲いかかれても
困るしな········。」
アレックス「だよな、ここで止めようぜ
ずっと負けままなんていやだろ」
ルイーダ「それもそうだな」
隊長「何、無駄話をしているんだ!
どこに敵がいるか分からないんだ!
油断は、禁物だぞ!」
ルイーダ\アレックス
「はい!!申し訳ありません!」
「ほんとバカだね、ダズルのやつは、」
ちょっと崖になってる所に、
敵が大勢いて、ライフルをこちらに向ける。
「撃て、今から死ぬやつの言葉を
聞いてやるほど、暇じゃないんだよね」
隊長「バリアーだ!!バリアーを張れ!!」
まじかよ、耐えれるのか?
知れてるぞ、そんなの、
崩れるのなんて時間の問題なのに····。
ルイーダ「バリアー!!!!」
「馬鹿なの!!!バリアーだって聞いた?
そんなの予想して作ってるに
決まってるでしょ、舐めないでよ」
狂おしいそうに笑い、引き金を引いた。
バンバンバンバンバンバンバンバン!!
バンバンバンバンバンバン!!
銃弾が飛び交い、
バリアーが響き割れ、撃たれるのも
時間の問題だ·········。
もう覚悟を決めるしかない、
「ソードキャノン!!」
バリアーを割られた瞬間に
魔法を唱え、魔法陣から
剣のような放物線を放つ。
「青年!面白いね、でもね
反抗して来た敵の事、
普通考えるよね??」
煙から姿現し、崖から降りてきた。
「素晴らしいね、突き抜けちゃったね
まともに受けていれば、
間違いなく死んでたかな」
ルイーダ「化け物集団かよ」
あれだけ攻撃を受けておいて、
無傷で平然としてる。
「そりゃだってプロだもん、
あなた達みたいな寄せ集めとは、
格が違うわ···········。」
隊長「敵自ら、出てくるとは、
殺されたいのか?
舐めるのもいい加減にしろよ」
二人の間に火花が散り、
女性の上官が刃を首筋に擦り付ける。
「ほんと、身の程知らずもいい所よ
うちはねぇ、実力主義なの、
バカ息子を上官にする国とは
違うだよね、大人しく
降伏でもしてくれば、殺されなく済むよ」
隊長は、怯え、黙るばかりだ。
ルイーダ「降伏なんてしたら、
俺らなんか皆殺しだろ?」
「そうだね、大当たり、
君賢いね、強いみたいだし、
うちの軍に入らない??」
ルイーダ「断るって言ったら?」
「んー、殺しちゃうかな」
微笑み、隊長を投げ捨て、
こちらを見つめる。
狂おしい目つきで···········。
次回に続く。