将軍と呼ばれた男
わしは、長く生きすぎた、
この世界が戦に塗れ、
人々の欲望と憎しみや悪意に
溢れ、汚れて、真っ黒だった。
ここから、平和て憎しみや
悪意のない世界になんて
出来ないと思っていた。
わしの若い頃は、とにかく
世界は、酷かった。
今の王様が見たら、
最悪に胸糞が悪いじゃろう
わしもそうじゃったからな
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「王宮 応接室」
ルイーダ「わしの昔話が
聞きたいだと??」
王様「そうだ、ルイーダ首相が
どんな戦をして来たのか気になる
将軍と呼ばれていたのだろう」
ルイーダ「まぁな、
もう昔の話じゃ、それにわしは、
家族を守るのに必死なだけだったんじゃ」
王様「皆そうじゃないか?」
ルイーダ「まぁそうじゃな
あの頃は、いろんな国が戦争して
野郎どもは、戦に借り出されて
わしもその中の1人だった。」
王様「志願じゃなかったのか?」
ルイーダ「そんな訳は、ない
昔のわしは、平和に穏やかに
暮らせればなんでもよかったんじゃ
ましてや戦争なんて
参加したくは、なかった。」
王様「今のルイーダ首相じゃ
考えられないな」
ルイーダ「戦争は、ただの殺し合いだ」
王様「そうだな、なんで
戦争なんてするんだろうな」
ルイーダ「己の欲望の為だろう
特別に話してやるさ
わしの昔話を········。」
王様は、生唾を飲み込んだ。
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「50年前 ダズル村」
わしは、小さい村で
両親と妹1人と暮らしていた。
小さい家ででも平凡で穏やかで
落ち着く良い家庭だった。
戦争が起こるまでは·······。
わしの父は、軍人ではなく、
農家で母は、専業主婦であった。
ある日、父は、頭を抱えっている。
母「とうとう、来たのね
この村にも来るとは、思っていたんだけど
こんなにもすぐだなんて···。」
「うちの国もいろんな国と
戦争してるんだ、仕方ないのだろう」
ルイーダ「どうしたの?お父さん」
「あぁ、ルイーダ、お父さんは、
国から要請を受けて、
志願兵として戦に出掛けるんだ。」
ルイーダ「それは、お父さんが
望んでる事なのか?」
「望んでなくても、無理矢理にでも
戦に引きずり出される、
そういう世の中なんだ、
分かってくれ、
村を守る為だ。」
ルイーダ「嫌な世の中だね、
父さん、生きて帰って来て欲しい」
「勿論さ、ルイーダ」
この頃は、わしは、まだ15歳で
兵として呼び出されるのは、
18歳以上までだ、
戦争なんて勝つか負けるだけだ、
子供の頃のわしは、そう思っていた。
殺し合い、そんなの分かってる
でも、少年ひとりが
動いたところで世界は、
どうにかなるほど甘くないのは、
この時から身に染みるほど分かっていた。
この頃の世界は、どの国も
世襲制で独裁国家だった
唯一、民主主義国家は、
スラドだけだった。
戦争を好まず、中立を保っていたが、
カーサン国から戦を仕掛けられ、
多大な犠牲と損害を与えられ、
それが逆鱗に触れることになり、
どの国も戦争に躍起になっていた。
一つの国に王が1人ずつ、おり、
皆、自分が頂点に立ちたくて
仕方がなかった。
それだけ、ほんとにそれだけ、
人の欲望は、時に愚かで
醜くて、わしは、それが
嫌いで仕方がない。
早く、早く、戦争が終わって、
父さんが笑顔で家に戻ってくることを
心から願っていた。
そんなある日·········。
バン!!!バン!!!
村のどこからか爆発音が聞こえ、
玄関のドアを開けた。
怯える妹の肩を抱き寄せ、
周りを見渡すと、
村にある家は、少しずつ、燃え、
わしの家は、無事だったが、
時間の問題だった。
空中に敵軍の魔法兵がいて、
魔法で爆弾を投下され、
これは、人間がすることなのか?
何が悪い事でもした?
そんなことなどしていない?
なのに、なのに、なんで
こんな目に遭わされなきゃいけない。
ルイナ「お兄ちゃん、怖いよ」
ルイーダ「大丈夫だ、お兄ちゃんと
一緒に逃げよう」
ルイナ「お兄ちゃん、お母さんは、
大丈夫だよね」
ルイーダ「そうに決まってるだろ、
母さんは、どこかに逃げてるはずだ
だから大丈夫さ」
ルイナ「そうだよね、お兄ちゃん。」
この時、母は、お父さんの畑を耕しており、
近くには、強固な洞窟があり、
そこに隠れていれば、爆弾が落とされても
大丈夫だろう······。
わしと妹は、村から離れ、
お父さんの畑の近くの洞窟に
向かっていた。
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「父さんの畑。」
そこには、母さんの姿は、なく、
畑は、爆弾が落とされ、
作物は、もう跡形も無くなり、
面影すらない········。
ルイナ「お、お父さんのは、畑が
ぐちゃぐちゃになってるよ
ねぇお兄ちゃん」
ルイーダ「なんだ、ルイナ」
ルイナ「お父さんの大事な畑なのに、
なんか、お父さん、悪い事したのかな?」
ルイーダ「してない、のに
なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ」
ルイナ「お兄ちゃん、泣かないで」
目から大粒の涙が溢れ、
ほんとに情けない。
妹に抱き寄せられる日は、
来るとは、思わなかった。
世界は、なんでこんなに理不尽なんだ?
普通に生きてきただけなのに
酷い目に遭わなきゃいけない。
きゃあぁぁぁぁぁぁ!
洞窟の方から、悲鳴が聞こえ、
すぐさま向かった。
その声は、母さんの声そっくりで
きっと本人だ······。
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「洞窟」敵軍「こんなババア
生かしても仕方ないだろ」
敵軍1「でも結構な上玉だぜ、
生かしておいても損は、ないと思うぞ」
敵軍2「お前、こんなのがタイプなのかよ
変わってるな····。」
3人の敵軍が母を囲み、
母は、銃を向けられ、
怯えて動けないでいた。
ルイーダ「母さん!!」
「ルイーダ!お母さんの事は、
良いから、ルイナと一緒に逃げなさい!」
ルイーダ「そんなの嫌に決まってるだろ」
敵軍「なんだ、子持ちかよ
こんな可愛い娘までいて···。」
敵軍がこちらに近づいてきて、
妹の頬を触わる。
「息子達には、手を出さないで!
お願いだから····。」
下を向き、地面には、小さな
水たまりが出来ていた。
敵軍「まぁ、こんなガキ殺しても
面白くないし、あんたで
我慢してやるよ」
敵軍3「娘さんがもうちょっと大きいけりゃ
遊んでやったのになぁ···。」
その男達は、笑い、それが不愉快で
最悪に胸糞が気持ちが悪い。
目の前で男達に母が好き放題されるのが
許せなかった。
「ルイーダ??」
わしは、この時、初めて人を殺した。
敵軍から奪った剣で
何度も何度も刺しては、
返り血を浴びて、浴びて
我を忘れていた。
「ルイーダ!!もういいの!
やめて、いいの、許してあげて」
母は、俺の血だらけになった手を
に握り、泣きつき、
わしは、目が覚めたのか、
剣を捨て、意識が朦朧として
倒れ込んだ。
「ルイーダ!!」「お兄ちゃん!!」
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「ダズル村 地下」
ここは、災害時の避難場所で
生き残った村人は、夜を過ごしていた。
わしは、目が覚め、ボッーとしていて
自分の手が、何故か
汚れてるように見える。
人を殺したからか?
ルイナ「お兄ちゃん!!起きたんだね
大丈夫??」
ルイーダ「大丈夫だ、こんな兄でも
お前は、普通に接してくれるだな」
ルイナ「お兄ちゃんは、ママを
悪い人から助けたんだよ!
お兄ちゃんは、悪くないよ」
ルイーダ「確かにあいつらは、
悪いやつかもしれない、
でも俺がしたことは、······。」
「ルイーダは、悪くない、から
自分を責めないで」
母の目は、泣き腫らしていて、
そんな顔を見たら、これ以上、
自分を責められなかった。
わしの家族や身内が
酷い目にあったととしても
戦争は、無くなったりは、しないだろう
わしの世界は、村だけで
狭く、世界全体を知るには、
まだまだで、ただの無知な子供だ。
子供が足掻いたところで
どうにもならない·····。
それから、戦争は、終わりを知らないのか
わしが18になっても続いていた。
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「3年後·······。」
国から手紙が届き、戦から
引きずり出される。
殺し合いにわしは、参加するのか?
そんな覚悟も勇気もないくせに
わしの手など、家族を守るために
あればいい······。
ルイナ「お兄ちゃん?行くの?」
ルイーダ「あぁ、そうさ
ルイナ、お兄ちゃんは、
必ず生きて帰ってくる。」
ルイナ「うん、絶対だよ、お兄ちゃん」
ルイーダ「当たり前だ、じゃあな
ルイナ、母さん·····。」
「じゃあね、ルイーダ」
ルイナ「お兄ちゃん!じゃあね」
妹は、今にも泣きそうな顔で
わしを見送った。
戦争に行くのは、嫌だった
どうせ、無理矢理にでも引きずり出される
足掻いたって無駄だ。
もしかしたら、父さんに会えるかもしれない。
あの時は、戦争は、すぐに終わると
思っていたでも、
今も続いて、終わる気配すらない。
己が頂点に立ちが為に、
国民を犠牲して、王という奴は、
どういう奴なんだ??
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わしは、本当に闇など知らなかった。
汚れて、白など存在しない。
「カーサン国 王宮」
「ダズルも中々、しぶといな
それも今のうちだ、すぐに
ドカーンで消える」
部下「スロン様も悪いお人ですね」
スロン「そんな事は、ない、
お前には、負けるよ」
部下「いえいえ、そんな言葉、
あたしには、もったいないです」
「ダズルがどんだけ
軍を増やしても無駄だ
技術力では、こっちが上を行ってるんだ、
勝ってる理由などない。」
男は、不敵に笑い、地図に記されている
ダズル国をダーツの矢で
滅多刺しにしていた。
END。
「将軍と呼ばれた男第2章に続く。」