【1次元目】
よく晴れた昼下がり。大きな屋敷から大きな叫び声が…。
「お嬢様ぁぁぁぁぁぁっ?!なんてことをなさっているのですかぁぁっ!!!」
「うるさい。(ゴスツ」
「ごぅふ…」
「…お嬢様…もうこの様な危険な遊びはお慎みください…」
この屋敷の執事である小さな羊のような見た目をした魔物は部屋の真ん中で剣を振りかぶっている少女に話しかけた。執事服はさっきの攻撃でボロボロであり、その背後の壁には綺麗な羊型のへこみがついている。「嫌。」
少女ははっきり言い放つと共に手にした双剣をふるう。ゴォッ………轟音と共に剣先から黒い稲津が放たれ部屋の隅にいた魔物達は一瞬で粉塵となり宙に舞った。
「………」
羊は呆れたような表情で彼女を見つめる。少女は流れるような動きで鞘に剣を納めると羊へと向き直った。彼女に見つめられた羊はブルッと身体を震わせるとポンッという軽い音と共に執事服の若い青年へと姿を変えた。
「はぁ…カオスお嬢様…もしお怪我をなさったらどうするおつもりなのですか?」
「こうでもしないと鬱憤が晴れないから。」
この少女、カオス・スカーレットは少しクセのある艶やかな漆黒の髪を揺らして答える。そして彼女は靴を鳴らしながらバルコニーに出た。そこからは町が見おろせる。彼女は賑わった雰囲気の町を冷たく光る真黒の瞳に映した。
「120年前までこの国は争いに満ち溢れていた。その中での貴族同士の領土争いによる戦争が勃発していた。私もこの力を思う存分発揮しここまで領土を広げた。とても楽しかった。しかし…国のせいだ。国のトップ、統率者の手により国のルールが改定され戦争がぱったりとなくなってしまった。」
彼女はくるりと向きを変え執事に向き直り剣先を彼に向けた。
「この鬱憤どう晴らせと!私の高貴な血を騒がせる戦争は!殺し合いは!!もうどこにもないのだぞ!?」ここまで言い切ると彼女は剣を力なく下ろした。
「こんな世界…面白くともなんともない…」
「お嬢様…お気持ちはわかりますが…」
執事は困ったような顔で彼女に歩み寄った。彼女を支えようとする彼を押しのけるようにして
「今日はもう休む」
そうい捨ててカオスは部屋を出ていってしまった。
カリカリカリカリ……
カオスは自室のテーブルの上に大きな羊皮紙を広げ青いインクで何かを必死に書き込んでいる。しばらくそうした後彼女は仕上げの一文字を書き込んだ。
「よし…できた。」
彼女は高貴な魔族の象徴とも言える背中の羽根を広げ少しだけ飛び上がるとその羊皮紙に書かれた魔法陣を上から眺めた。
(これで…やっとで異世界に行ける……。)
…120年前、戦争が終わったその時から彼女はずっと退屈な世界から飛び出す方法を探していたのだ。書物を貪り、思考し、数々の実験を重ねてきた。そしてその集大成による魔法陣が今、完成した。騒げば誰か使用人にみつかるかもしれない。それに成功する保証はない。彼女は高ぶる気持ちを抑えこむ。
「ふぅ……。」
部屋を見回した。書物で溢れかえったそこは自分が物心ついた頃から所有する見慣れた部屋だった。
(ここともしばらくお別れか…。)
待ちわびていたときのはずなのに寂しく感じる矛盾に居心地の悪さを感じたカオスは、それを振り払おうと首を横に振る。そして彼女はふわりと床に降り立ち羽根をたたんだ。机の引き出しの奥からくしゃくしゃになった手紙を取り出す。軽くしわを伸ばしどこにおいて行くかぼんやりと考えながら見つめた。そしてドアの前にしようと決めた。きっと明日の朝、あの執事が起に来た時に気づくだろう。彼に申し訳ないと言う気持ちはあるがもうの世界には飽きてしまったのだ。ドアを開ける。
「……なんで…」
そこにはあの執事が立っていた。彼は苦笑しながら言う。
「私がお嬢様の考えを読み取れないとでもおおもいですか?120年前のあの時からあなたがここから逃げ出そうとしていた事は知っていますよ。ずっと、ずっとお側で見てきましたから。」
彼はカオスの瞳をじっと見つめる。カオスは思わず目をそらした。
「な、なら話は速いわね。これっ……あげる。私はここを出ていくから。止めさせは、しない。」
そう言うとカオスは睨むようにして執事を見つめ返した。
「…わかっていますよ。」
執事はやはり苦笑したまま言った。
「な、何をよ。」
「あなたがどれだけ退屈していたか。私はそれを一番理解しています。お嬢様を止める気など初めからありません。なにより、止めようと思って止まってくれるあなたではないでしょう?」
「そうだ…けど……」
引き止められるものだと思い込んでいたカオスは言葉を濁す。
「私はお嬢様の幸せを第一としてこの仕事をしてきました。お嬢様がどれだけ外の世界に対して希望を抱いているか、手に取るようにわかります。あなたがいない間は私が責任をもって土地を管理させていただきます。」
「え……ぁ…」
何も言えなくなるカオスに執事はにっこりと笑って告げだ。
「行ってらっしゃいませ。お嬢様。たまにはー…帰ってきてくださいね?」
「…本当にいいの?」
「はい。淋しくはなりますが…年明けと私の誕生日に戻ってきてくだされば。」
執事は今度は照れたように笑った。
「…わかった。必ず戻ってくる。」
「あ、忘れておりました。最後にこれを…」
執事はポケットから小さな包を取り出しカオスに手渡す。カオスが開くと小さなネックレスが出てきた。「え……?」
「あなたの次の誕生日に渡そうと思っていたものです。私の魔力をこめて街一番の装飾師に作らせました。どうか、持っていってやってください。」
戦争や闘いに明け暮れ、女性らしい物をもらった経験などほとんどないカオスはとても戸惑った。頬が赤くなるのが自分でわかる。
「あ…ありがと……。」
そんなカオスをみて執事は
「かわいい…」
と小さく呟くとカオスに向き直った。
「お嬢様。私はあなたのお帰りをこの屋敷で、ずっとまっています。どうか、ご無事で。」
カオスも執事に向き直ると
「…ありがとう。定期的に戻ってくる。土地のことは任せた。では……いってくる。」
言い終わると執事の表情を見ないままカオスは部屋に飛び込んだ。そのままの勢いで机上にあったナイフをてにとり手首を切る。鮮血が青い魔法陣の上にパタパタと音を立てて落ちた。
「エデン!!!」
呪文を叫ぶように唱え、言い終わった時には既にカオスの意識はそこになかった。
こんにちは。52Te【てるる】です。
吸血鬼いれますお嬢様いれます不良いれます美少女いれます魔法少女いれます執事いれますワケあり美青年いれますロリいれます貧乳いれます巨乳もいれます可愛い可愛い女の子いれますイケメンもいれますほかにもあれとかこれとかそれとかいれます。決しててるるの趣味に走ったものではありません(震え声)。楽しんで読んでいただけると幸いです!