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閑話2.新生アストロブ騎士団VSガリュアス近衛騎士団 その2

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 照り返される幾つもの陽光が、競技場を埋め尽くす。

 刃が交わされ、光が反射する。流れるように尾を引く光は、金属音と共に弾け、また弾ける。


 ガリュアス近衛騎士団長バザックは、その剣闘士のごとき戦士たちを、競技会場に設置された簡易医療病院から見守る。


 すれ違うように入る他の負傷騎士たちは、彼から距離を置いている。

「どうですか? 近衛騎士団長殿から見て我が騎士団は?」


「エイジ様、流石としかいいようがありません。王都へと帰還してよりたった二月(ふたつき)、ここまでの訓練を施すとは……」


 エイジはバザックの隣で満足げに微笑む。

「父の騎士からそのように評価されるとは、嬉しいものです」


 貴賓席からは、何度となくあった侮蔑的な小言は止み、今や眼下のショーは楽しむ声までがあがっていた。


 両軍の動きは対照的であった。

 最高指揮官が不在であれ、鍛錬に鍛練を重ね、兄弟のように励んできた近衛騎士たちが慌ただしく入り乱れる。それに対しアストロブの騎士たちは、打ち合わせたように流れを作り、次々と刃を叩き込む。


 ひとつの刃を避けると、息をつく暇もなく次の剣撃が襲ってくる。アストロブの騎士たちは、剣舞のように次々と畳みかけてくる。


 バザックとエイジの眼前では、近衛騎士団が防衛陣地へと次第に追い込まれていた。

 騎乗戦とは違い、攻防に分かれての防衛戦。アストロブ騎士団は連戦の疲れを然程見せずに戦いを続ける。

 王宮内を模した障害物のあるフィールド、明らかに近衛騎士団が有利であった。有利であったのだ。


 一度目の戦いはアストロブ騎士団が防衛側を見事に務め、近衛騎士たちから多くの負傷者を出した。

 そして二度目の戦い。近衛騎士団側は主要メンバーが変われど、その何れも歴戦の強者であった。


――それが如何した。全く別次元の統率力の違いを覆すことなど出来なかった。


 弾いた剣の隙間から、刺突が入り込む。また一人、近衛騎士が倒れた。


「しかし、エイジ様、何故亜人などを?」

 バザックから出た一つの嫌味。そのつもりはなかったのであろうが、それはエイジに軽く吹き飛ばされた。


「なぜ人族だけで構成する必要があるのです?」

 人種は亜人種とは違い、理性も知性ある。それがガリュアスでの真実だ。


「亜人種の集落も多い、このガリュアスの地で、亜人を用いないなど愚であると思いますが……。モルダン公爵も多くの亜人を従えておりました。王都の国軍でも亜人を兵としては用いますでしょう。なぜ騎士には出来ないのです?」


 バザックは口ごもって、幾分考えながら答える。

「あれらは人ではない。あれらの戦い方はまるで我らとは違う。違い過ぎる」


「しかし、巷では人族の常識に馴染んだ者もよくいるでしょう? 魔物退治なども彼らの方が幾分手慣れていると聞きます」


「確かにハンターとしては彼らの力は頼もしい」


亜人(デミヒューマン)の中で市民亜人(シティ・デミヒューマン)などと呼ばれていますね」


「都市に順応している者たちに罪はありませんが、やはり亜人は亜人」


「ヒューマン、ドワーフ、エルフはひとくくりで人種(ヒューマノイド)ですね」


「仰る通りです。ヒューマ神の模造品であるヒューマン。ドワ神の模造品であるドワーヒューマン。エル神の模造品であるエルヒューマン。ガリュアスで信じられている三大神から名が付けられております」


「僕の知る限りではエルフの意味は基本、ウッドエルフの事をいう国があります」


「そのような国が?」


「ええ、そして都市に住むようなエルフはシティエルフと。中には奴隷階級であるような所も」


「そんな……」


「僕はそれと同じだと思うのですよ。僕たちがどの基準を用いるかによって異端が決定する。ですが、それは我々未熟な生命の勝手に決めた事だと」


 エイジはニッコリと笑う。

「では彼らが、亜人種(デミヒューマン)が大手を振ってガリュアスで生活できるようになれば、彼らが『市民的(シティ)』などと蔑称混じりの形容詞を付けて呼ばれないようになれば、それはガリュアスにとって利益であると思うのですよ」


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 二か月近く前、エイジは自分の騎士団の構成員を選ぶのに夢中であった。


「やっぱり騎士と言ったら竜騎士、竜騎士といったらドラゴニュート、ドラゴノイドかな」

「エイジ様、この付近に竜人の類はいないようです」


 エイジは不満そうな瞳を向ける。

 ハンゾウはガリュアスの書物を幾つも同時に読んでいる。主人に興味がないのであれば、従者の出番である。主人のためにとハンゾウは歴史、郷土、作法などの各種の本を山積みにし、読み漁る。


 寝転がりながらエイジは、羊皮紙にペンでバツ印を書く。

「偶然見つかった新たな集落ってのも駄目か?」


「無理ですね。この国は種族同士の争い事が比較的少ないですから。領地は大抵が調べ尽くしてあります」


「それにしても、その調べてあるっていう大抵の種族がさ、人型(ウェア)とか、モドキ(ノイド)とか、人々(フォーク)とか付けるだけって適当すぎるよなぁ。何なのアリゲーターノイドって? ウェアクロコダイルでも良かったよね? 見た目的にリザードマンとひとまとめじゃ駄目なん?」


「詳しい生物学的な分類が出来るほどの文明はないようですからね。それにゲームでも大抵がそうでしょう」


「でもさ、酷いよ。ゴブリンの項目『ゴブリンとは、醜い容姿の小さな亜人である』で、後はイラスト。何? これだけって」


 エイジとしては不満であった。どのような文化を持つか。どのような信仰を持つのか。あらゆる設定は詰まっている方が好みなのだ。


非現実(フィクション)じゃないなら、その辺しっかりしてくれないとねぇ」


「ではエイジ様が御調べになるのは如何でしょう? おそらくこの世界では、前人未到の大発見に値するかと」


「これから貴族ごっこするんだからさ。あんまり学者っぽい事しても無駄。一応目的は、楽しい楽しい遊戯(ゲーム)のための下準備なんだから」


 エイジは完全に慣れてきたようだ。ゲームではNPCから情報収集するのは常識。なのだから例えNPCが喋るようになったからといって臆するのは違うようなのだ。エイジの中では、の話である。


「名前が安直なのも、ちゃんと考えて付けられてる名前でも、結局大した情報ないんだよ。人種(ヒューマノイド)ぐらいしか書物を使わないってのもさ、あるとは思うけど酷いよ」


「それでは人種からのみ、騎士を選べばよいのでは?」


 エイジは一つ本を取る。興味はあまりないのであるが、自分から調べないと埒が明かないと感じたようだ。

 分厚い革の表紙に手を当て、ぺらぺらと数ページほど捲る。

 たいして疲れてもいないが、寝ながら背伸びをして身体をほぐす。


「モルダンの領土で幽閉されてたって設定だから! ある程度の亜人を見慣れてるって設定……何だよね!」


 身体を伸ばしながら話すので、所々の語尾が強まる。


「それにさ、色んなのが使える方が楽しいじゃん?」


「エイジ様が楽しまれる事が一番ですね」


――ハーフもいいなぁ。オリジナル種族作れるかも……。


 エイジの中で、この多種族共生国家ガリュアスの未来の姿が、完成しつつあった。


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