二十七幕 真っ白な上にあるゴミは中々放っておくことは出来ない
彰二達との宴会も終わり、俺もつぐみさんも俺の家に戻って床に就いた。
凄く楽しかったけれども、正直疲れた。
食べたり飲んだりしながら色んなこと話したし、テーブルゲームやテレビゲームなんかもして盛り上がった。
その間ずっとあの朋恵さんのノリだったんだから、一気に疲れてしまった。
「恭介さん……起きてますか?」
「あ……うん」
二人とも布団の中に居て、電気も付いていない真っ暗な部屋の中、物凄く小さなつぐみさんの声が聞こえてきた。
いつでもそうなのだが、つぐみさんは睡眠時間が少ない。
一緒に床に就いても必ず俺の方が先に寝てるし、起きたら必ずつぐみさんの方が先に起きている。
つぐみさんは昼寝も全くしないし、お陰でつぐみさんの寝顔を今まで見たことがない。
「あの……もしよろしかったら……その……」
「?」
「あの、私も恭介さんと同じ布団に入ってもよろしいでしょうか……?」
「ちょ、ちょっと!!」
いきなりだったもんなので、俺はガバッと起き上がってしまう。
「い、いえ!あの、やっぱり大丈夫です。すみません……おやすみなさい」
「あっ……」
思わずビックリして驚いちゃったけど、そんな俺を見るとつぐみさんはすぐそう言って引っ込んでしまった。
嫌だからそう言った訳じゃないんだけど、それが全く伝わってないと思う。
どうしよう。
願ってもないチャンスだったのに、思い切り潰してしまったような感じだ。
例えるならば、サッカーでドリブルしていて、キーパーも含めて全員抜いたけれどもシュートを外してしまったとか、そんな感じである。
やばい。
俺だってつぐみさんと一緒の布団で寝たい! 寝たい! 何断ってるんだ俺!!
「あ、あのさ、俺がそっち行くってのは……ダメ?」
「あっ……」
声を震わせながらそう言うと、つぐみさんの「大丈夫です」のかなり小さい声が聞こえてくる。
俺は意を決して床から自分のベッド……つぐみさんの寝ているベッドへと移動した。
「お、お邪魔しま~す」
「あっ……」
超遠慮がちに、つぐみさんとは距離を離して同じ布団に入る。
布団の中はつぐみさんの体温で温められていて、物凄く温かい。
俺は緊張しながらもつぐみさんと向かい合うような感じで体を横にした。
やばい。
体中がほてってる。
つぐみさんの方も一緒に寝て別に何しようって訳でもなく、ただ俺の顔を見ているだけだが、これじゃあゆっくりと寝られる訳がない。
「あの……」
「!?」
すると、つぐみさんは俺の体に抱きついてくる。
さすがにこれはヤバイだろ!!
同じ布団の中で抱き合うって、物凄いことが想像されるんですけれども!!
どうしたらいいか全く分からなくなるのだが、つぐみさんは俺と体を密着させてからは別にこれといって何もしてこなかった。
つぐみさんにはよく抱きつかれるから、つぐみさんが何をしたいのか何となく分かる。
つぐみさんは人の体温が好きなのだとか。
こうやって体を密着させていると本当に心が安らぐと言っていたので、丁度今その安らぎが欲しかっただけなのであろう。
こうしているとなんだかこう、つぐみさんが子供……というより赤子のように感じられる。
まだ親のぬくもりをあまり知らない赤子のような感じだ。
人のぬくもりを感じることによって落ち着きを感じるのは、全部の人間が同じことだろうと思う。
つぐみさんもその例外じゃないんだなと思った。
しばらく無言でそのままの状態にしていると、不意につぐみさんが言葉を発してきた。
「人間は……皆幸せです」
「つぐみさん?」
「いえ、人間だけでなく、鳥も、犬も、いかなる生物もみんな幸せです。私は幸せを感じる、恭介さんから頂いた感情があります。私も……幸せです」
「俺も……幸せだよ。つぐみさんと出会わなかったらどうだったか分からないけど」
「でも、一番人間が幸せです」
「…………」
何だ?
何で急にこんな話になったのか全然分からない。
しかも、時折つぐみさんの鼻をすするような音が聞こえてくる。
泣いているのか?
それとも鼻が出ているのか?
少し確認してみようと思ったが、今の位置からではつぐみさんの顔がうまく確認ができなかった。
「これから先、恭介さんはたくさんの幸せを見つけて、様々な幸せを見つけます。人間は他の生物よりも長く生きることができます。その分、幸せを感じる期間は長いです。人間が……一番幸せです」
「そうだ。人間が一番幸せだ。俺もつぐみさんも、これからどんどん幸せになれる。この一分一秒だって幸せだ。これからのことを考えると、どれだけ幸せなのか分からない。こんなに幸せをもらっていいのか、なんだか申し訳ないくらい。これだけ幸せをくれるつぐみさんには本当に感謝だ」
「恭介さん……私……私……」
「つぐみさん……?」
そして、つぐみさんは泣き出した。
何でこんな話を始めたのか、何でつぐみさんは泣き出したのか俺には全然分からない。
さっきまで彰二や朋恵さんと一緒に笑っていたのが嘘のようだ。
本当に突然である。
思い当たる節も全くない。
つぐみさんは急に泣き出してしまったのだ。
理由は……分からない。
きっと俺の知らない『つぐみさん側の話』で何かがあったのかもしれないと勝手に推測した。
ただ今はその『つぐみさん側の話』を聞けるような状態じゃなかったので、俺はつぐみさんが落ち着くまで頭をあやすように撫でてやる。
大丈夫、大丈夫だ。と。
つぐみさんは俺の知らない所で、何かとんでもない話が進んでしまったりしているのだろうか。
つぐみさんはバイトがない時は家にいるし、たまに外に出かけることがあっても割とすぐに戻ってきている。
二日に渡って家を留守にしたことは今までないので、一緒にいる限りではそんな感じは全く受けないのだが。
つぐみさんに何があるのか分からないけど、俺が絶対につぐみさんを守ってみせる。
つぐみさんの幸せは俺の命にかけても守ってみせるから大丈夫だと、安心させるようにつぐみさんに囁き、つぐみさんの体を抱きながらずっと頭を撫でていた。
そうしているうちにつぐみさんはそのまま眠りにつき、結果として初めてつぐみさんの寝顔を見ることになった。
朝、目を覚ますと明るい光が俺の視界に入ってきた。
いつものことだ。
体を起こすとつぐみさんが視界に入ってくる。
つぐみさんは申し訳程度に開いたカーテンの隙間に向かってお祈りをしていた。
これもいつものことだ。
つぐみさんの朝はいつでも早く、そして毎日朝日に向かってお祈りをしているんだ。
今日もしっかりその例外を踏まない行動をつぐみさんは取っていた。
久しぶりに自分のベッドで目を覚ましたのが唯一いつもと違う所だったが。
「あ……おはようございます」
「つぐみさん……おはよ」
いつもの私服に、いつもの笑顔。
そこにはいつものつぐみさんが居た。
俺はまだキッチリ開かない目をこすりながらも、ベッドから起き上がる。
そういえば昨日つぐみさんは涙を流したまま眠りについてしまったのだ。
今では昨日のそんな様子など微塵も感じられない。
「あの……昨日はありがとうございました」
床に足をつけて立ち上がりつぐみさんの傍に立つと、つぐみさんはそう俺に言ってくる。
そうだ。
あまり意識している暇はなかったけれども、俺、昨日つぐみさんと同じ布団で寝てたんだよな。
今思うと少し考えられないような気がしてくる。
でも、つぐみさんはどうして急に涙を流したのだろうか。
「あのさ……つぐみさん、困ってることがあったら何でも俺に相談してよ。何でも一人で抱え込もうとしないでさ。俺、つぐみさんの為なら何でもするから。俺はつぐみさんを絶対に裏切らないから。だから話せることだったら遠慮なく話して欲しいよ」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。心配をかけさせてしまってすみません」
俺がそういうも、やっぱりつぐみさんは「大丈夫」だと言う。
本人が大丈夫だと言うのだから大丈夫なんだとは思うのだが、やっぱり少し心配は残る。
こういう場合って意地でも聞き出すべきなのだろうか。
俺はつぐみさんをもっと知りたいし理解したいのだが、つぐみさんが話してくれない以上俺にはどうしよもない。
もっともっとつぐみさんに信用してもらえるようになったらそれも変わってくるかもしれないし、やっぱり無理強いさせるのはよくないのかもしれないと改めて思い直すことにする。
「体調は……」
「元気です」
「何かマズいことは……」
「大丈夫です」
そう答えるつぐみさんも元気そうだし、まぁ大丈夫なんだろう。
だから俺はそれ以上考え込まないようにした。
俺が辛気臭い顔してたら、つぐみさんだって楽しめるものも楽しめなくなってしまうかもしれない。
「よし。んじゃ、彰二達をたたき起こして、一緒に朝食を食って出かけようか!」
「はい!」
っつーことで昨日の夜のことは忘れて、思い切り海を楽しむ方向に切り替えた。
そしてその後俺とつぐみさんは彰二達と合流し、飯を食ってから海へと出かけて行った。
青い空。広い海。
夏休みということもあって人は多いが、それ以上に海岸が広いので問題は一切ない。
ビーチバレーをやるスペースもあるし、思い切り自由に泳げるスペースもある。
目の前はパラダイスだ。
「いやぁ~、絶好の海水浴日和だな!」
「いやいや、実際に来てみるとやっぱりいいねぇ、海は」
そんな青空の下、来た時に設置したビーチパラソルの中で、金髪ボウズの兄ちゃんと隣り合わせて女性人の着替えを待つ。
来るまでは『別に行けなかったら行けなかったでいい』くらいに思っていたけど、実際来たら本当に来て良かったと思える。
天気も予報じゃここ一週間は夏晴れが続くって言ってたし、そのとおり見事な快晴。
彰二の言うとおり絶好の海水浴日和である。
「いやぁ、でもホントつぐみちゃん可愛いねぇ」
「ホレんなよ」
「馬鹿。俺は朋恵一筋なんだよ。性格も含めて朋恵が好きだ。でも性格と言えばつぐみちゃん、ホント良い性格してるよなぁ」
「朋恵さんみたいな『味』のある性格じゃないような気もするけどね」
「馬鹿言え。あの超天然素材のどこに味がないっつーんだよ」
確かに。
彰二の言う良い性格というのは『優しくていい性格』とかそういうのとは別に、いじりやすいとか、リアクションがいいとか、そういうのが含まれてるんだろう。
でも、朋恵さんとは別ベクトルにつぐみさんの味があるのは明らかだ。
朋恵さんはサバサバしてるからな。
『私ってば超可愛いからもてて困る』とかまでは言わなくて良いが、朋恵さんの影響を少しつぐみさんも受けたらいいんじゃないかって思ったりする。
片瀬に影響されてもマズい程の悪影響は見られないので、朋恵さんに影響されたって明後日の方向にいったりはしないだろう。
「それにしてもよ、何だ? あの袋。野球のバットでも入ってるのか?」
「いや、つぐみさんの秘密道具。中身は俺も知らない」
彰二が言っているのは今日つぐみさんが持ってきた例の『剣』のことを指している。
つぐみさんは何故か今日に限って例の剣を持ってきた。
今まで外出する時は一度たりとも剣を持っていったことがなかったのに、今日に限って何故か剣を持って行きたいと言い出したんだ。
理由は毎度のことよく分からない。
もちろん俺は中身を知っているが、知っていると彰二に言ったら教えろと言われるに違いない。
『不思議なつぐみさんだけの秘密』ということにしておけば、彰二もむやみにつぐみさんから聞きだしたりしないだろう。
だからそういうことにして彰二の言葉を流しておいた。
「お待たせー!」
そんなことを話していると、朋恵さんとつぐみさんがようやく俺たちの目の前にやってくる。
が、何故かつぐみさんの体を覆うように、朋恵さんがつぐみさんに団子みたいに引っ付いて登場だ。
お陰でつぐみさんの水着姿がしっかりと見えない。
「悪いね恭介君。つぐみちゃん、今日から私んなったから。よろしく」
「…………」
「……は、恥ずかしいです」
そんな二人をポカンと口を空けて見る。
そりゃそうだ。
女が二人密着して動いていれば否が応でも目立つ。
というか、さすが朋恵さんと言った所か。
この人はいつも訳分からんノリで俺たちを楽しませてくれるハイパワーな女性である。
行きの電車の中でもつぐみさんとはしゃいでたし、本当に気さくで楽しい人だと改めて思わされた。
俺もこういうノリはかなり好きだし、今日はこの人のお陰できっと楽しい一日になりそうだ。
「恭介君、つぐみちゃんの水着姿、見たい?」
「見たいッス」
「と、朋恵さん……あの……」
「彰二は見んな。つぐみちゃんが汚れる」
「はいはい」
彰二が後ろを向く。
相変わらずのカカァ天下っぷりである。
そんな風によく憎まれ口を叩く朋恵さんだが、朋恵さんだって彰二が大好きなのは俺もよく知ってる。
前に彰二と朋恵さんが喧嘩したことがあって、朋恵さんから何度も電話がかかってきた。
「あいつ何か言ってた?」とか「あいつ他に好きな奴できたでしょ?」とか、しきりに彰二のことを聞いてきてた。
もう彰二のことが気になってしょうがなかったんだと思う。
朋恵さんが普段彰二のこと馬鹿馬鹿言ってるのは照れ隠しなのは間違いない。
普段は随分ライトな感じの二人だが、二人とも心の底では強く思いあってるんだ。
本当に理想的で、良い関係なんだと思う。
だからこんな憎まれ口でも、俺には微笑ましく感じることができた。
さて、朋恵さんは彰二が後ろを向いたのを確認すると、密着させている体をつぐみさんから離す。
すると目の前には白い天使さんが――
「は、恥ずかしい……」
凄い縮こまって情けない姿をしていた。
そんなつぐみさんがクソ可愛い。
俺は思わず朋恵さんに右手で『バッチグー』のサインをする。
「真っ白な肌。細い腕と足。しなやかな指。サラサラの髪。ちっちゃい顔。ごめんつぐみちゃん、黒髪だけどあんた日本人じゃないわ」
「は、恥ずかしい……」
「つぐみさんは何語しゃべってんだよ……」
と俺は言ったが、その線も十分に考えられる。
これだけ流暢に日本語を話しているが、実は外国語もぺらぺらだという可能性もある。
あれだけ勉強に強いつぐみさんなら何ヶ国語しゃべっても不思議には思わない。
でもまぁ、髪が黒いし瞳も黒いのでやっぱり日本人なんだろうけど。
「恭介君もガッチリキープしてなきゃダメよ。こんな子、男がいても他からたくさん寄ってたかってくるんだから」
同感です。
「つぐみちゃん、何か困ったことがあったらいつでも相談しにいらっしゃいね。お姉さんがどんな相談にも乗ってあげるから」
「は、はい……」
「はい朋恵さん! 朋恵さんの方が年下っていう線もあります!」
「そ、そうだったわ……。なかなか侮れないわね……」
よく分からんが、いつもの朋恵さん劇場の始まりだ。
この人は酒が入ると昨日の夜のようにぶっ壊れるのでこれでも今はおとなしい方のはずなんだが、やっぱりこの青々とした海を目の前にすると自然にテンションが上がってきてしまうのかもしれない。
それは俺だって同じだ。
「んじゃ、早速海に入りましょうか!」
「よっしゃ!」
朋恵さんのその声を合図に、俺はつぐみさんの手を朋恵さんから奪って一気に海へと走り出した。
朋恵さんに釣られたのもあってか、もうテンションはマックス。
それから俺たち四人はまるで小学生のようにはしゃぎながら思う存分遊びを楽しんだ。
「うおりゃぁーーーー!!!」
「えいっ!」
ザブーン!!
朋恵さんの乗っていたゴムボートをつぐみさんと結託してひっくり返してやる。
不意をついたのもあって、彰二&朋恵さんは海へと真っ逆さまに落ちて行った。
俺はすかさずつぐみさんの手を引いてその場から逃げ出す。
「逃げろ!!」
「す、すみませんっ!!」
「いくわよ! 彰二!!」
「任せろ!!」
バシャバシャと、追いかけてくる彰二達から必死で泳いで逃げる。
さすがはつぐみさんと言った所か、さっき教えたばかりの泳ぎを早速体得したようで、俺と同じスピードで泳いでいる。
それでも他を泳いでいる人が割と邪魔でなかなか思うように逃げられない。
「捕まるぞ! 潜れ!!」
「はいっ!!」
まるで軍隊の指揮をとっているような感じでつぐみさんに命令を出すと、それを忠実に守ってつぐみさんは海面にもぐりこんだ。
が、あっという間に俺は彰二に手を捕まれてしまった。
「オラァ!! 捕まえたぞ恭介!!」
「ぐはっ!!」
「美女狩りー! 美女狩りー!!」
「捕まってしまいました……」
本当に楽しい。
これが俺の夢見たダブルデートというものなんだ。
彰二が笑って、朋恵さんも大笑いして、俺の大好きなつぐみさんもが凄い楽しそうに笑っている。
こんなに楽しい思いを毎日している訳なんだから、恋人の居ない人間が恋人をのいる人間を妬む気持ちは凄く理解できるような気がした。
「オーホッホッホッホ! 女王様とおよび!」
「よっ、女王様!」
「ノリまくってんなぁ……朋恵さん」
ゴムボートに乗って独り浮かび、高笑いする朋恵さん。
今のノリは酒が入っている時のそれと完全に同じだ。
昨日の夜だって同じようなことをしていた気がする。
いやいやでも、本当に朋恵さん女王様っぽいぞ。
何より胸がでかくてスタイルがいい。
つぐみさんが浜辺を歩けば色んな人の目を引くが、きっと朋恵さん一人で浜辺を歩いても結構な数の視線がいくと思う。
そんなことを考えていると……むに。
「朋恵さんの……胸見てる」
突如後ろからつぐみさんが現れ、頬を人差し指でむにっとやられた。
「ち、違うよ! 胸っつーか朋恵さんを……」
と、振り向き様に言って否定しようとするが、胸を意識するあまりつぐみさんの胸に視線が行ってしまった。
ごめんつぐみさん。
俺の中で他は何に置いても全てつぐみさんの圧勝だけど、俺が見なくても胸だけは朋恵さんの勝ちという暗黙の了解を……。
「…………」
つぐみさんは俺の視線に気がついたらしく、みるみるうちに顔が真っ赤になっていき、頬がぷく~っと膨らみだして急に水面に潜ってしまった。
「わー! 待ってつぐみさん!!」
俺も潜って急いでつぐみさんを追いかける。
つぐみさんは本気で逃げようとした訳ではなかったらしく、割と簡単につぐみさんを捕まえることができた。
「女の子は胸じゃないって! っつか、でかけりゃいいってねぇ、そんな……」
「大谷友香……さん」
「うっ……」
な、なんで大谷友香の名前を覚えているんだつぐみさん……。
「恭介さんは胸の大きい女性が好きなんですっ!」
「わー待って!! つぐみさん!!」
再び水面下での鬼ごっこが始まる。
っつーか、つぐみさんが可愛くてたまらん。




