指導4
イーストシティから少し歩くと草原が広がっており、アレス達はここで毎日の鍛錬を行っている。レインは格闘術や剣術をユフィとソフィの魔法を鍛えている。魔法の属性は【火】【水】【風】【土】【風】【命】に分かれているが、ユフィは【火】に、ソフィは【水】に特化してその魔法を極めようとしていた。
「どおりゃああ!」
ユフィは右手をかざしながら走ると、その右手からは真っ黒な大炎が飛び出し、アレスの身を焼きつくさんとゴオと音を立てて炎がアレスに襲いかかる。
「えいっ!」
それと同時に上空に飛んでいたソフィは右手の人差し指をアレスの方に向け、水で作った強力な水流で、アレスの胴体を真っ二つにせんと凄まじい勢いで飛んでいく。
しかし、アレスは右手で猛烈な風を起こしユフィが起こした大きな炎をかき消し、左で土でつくった壁でソフィの水流を完全に受け止めた。アレスはそこで止まらず、目にも止まらぬ早さでユフィに近づき、腰につけていたナイフで首元にそっと当てた。
「・・私たちの負けね」
あらかじめユフィとソフィ達には魔力を練る時間が与えられており、なおかつ二人での先制攻撃というハンデがあってもなお、アレスの実力にはまだまだ及ばないということが明らかであった。
「ノーモーションであれだけの精度の二つの魔法を同時に放つなんて、アレスさんは本当に人間ですか?」
一般的には魔法を使うには相応の溜めが必要となる。小さな炎ですら数秒かかって魔法を発動するのが普通の感覚である。ユフィとソフィは既に規格外ではあるが、アレスは最早人外と言って良い領域に達している。
「これぐらいなんてことないさ。二人とも魔法を覚えてまだ少ししか経ってないだろ?それでこの威力なんてたいしたもんだ。俺なんて、物心ついたときから、毎日のように死ぬ気で親父に鍛えられてきたんだよ・・・。」
「そうなんですか?どんな訓練をしたんですか?私たちも同じ訓練をしたいです!」
「・・それだけは、やめておけ。あれは常人にはとてもじゃないが耐えられない。俺も弟たちも何度逃げようとしたか・・。でもあの化け物は笑いながら俺たちに魔法を放ってきて、俺たちは死ぬ気で身を守るための魔法を発動させ・・・」
そう言ってどこか明後日のほうを見つめブツブツと誰かに話しかけているアレスの瞳は完全に廃人のそれだった。
「えっと・・、元気だして・・?」
そう言ってアレスを上目遣いで励ますソフィはいつも通り天使であった。その声で我に帰ったアレスはソフィの頭を無意識のうちに撫でていた。
「あぁ、ありがとう・・・って熱い!あぶね!」
アレスに放たれた炎を咄嗟によけてかわしたが、その炎は近くの岩にあたり、その岩を溶かしていた。ドロドロに。
「ソフィにさわんな、変態!というか、アレスにも私の魔法あたるじゃない!」
「い、いまのは完全にノーモーションだった・・」
「そう、この感覚ね!咄嗟にアレスをやる感じね!なにか掴んだわ!」
ユフィはそう喜びながら火の魔法をどっかんどっかんとそこかしこに打ちまくっていた。それはなにか違うんじゃないか、と言いかけたがその言葉は声になることはなかった。ちなみに姉の放った火は、きょうもしょうか〜あしたもしょうか〜と変なリズムをつけて歌いながら妹が消火している。いつも通りの光景だ。
「どわあああああああああああ!!!!」
絶叫をしながら草原を死にものぐるいで駆け回っているのは、レインだ。レインのすぐ後ろには大きな火の龍が口を開けて追いかけている。そして時折、火の龍はその大口でレインの頭を甘噛みする。
「ぎゃああああああ!あちーーーーあちーーーッス!!!」
レインの髪の毛に引火して、レインが普段よりも3割増しくらいにかっこよくなっている。少なくともリリスにはそう見えている。
「おっ、レインのその髪型、イケてるのぅ」
レインは両手で頭を必死にはたき火を消す。しかし、その最中も足を止めることは許されない。
「お・・鬼、いや悪魔・・がいるッス。なんで・・俺だけ・・・こんな・・コトしなきゃいけないんスかーー!!」
涙目になりながら絶叫しながら荒れ狂う火の龍から逃げ回る。
「なにを言っておるのじゃ。肉体派のレインは体が資本じゃからのう。まずは足腰が基本じゃ。それよりもこんな奇麗なボインのお姉様に痛めつけられるなんて、人間にとって幸せなことなんじゃろう?人間の書物に書いておったわ」
勤勉な妾、えらいぞ!と自画自賛しているリリスは心底満足げな表情をしていた。
「な、、なにを、、、読んでんスかーーーー!!!???」
レインの今日一番の絶叫が草原にこだました。




