第一章 魔法使い編7
「さて、まず魔法について教えようと思うが、あまり時間もないから、ざっくりと教えるぞ。」
「すいません、東 先生。その前に聞きたいことがあるんですが。」
「しょうがないな。分かった、聞いてやる。」
「今回の事件の現場に南沢 先生がいた、という噂があるのですが本当ですか?」
「その噂はどこから聞いてきた?」
「いや、そういえばどこから聞いてきたのかは全く憶えてないですね。で、結局どうなんですか?」
「そうか。まぁ、それについても後々教えてやる。まず、【魔法】ってのは簡単に言えば、体の中にある【魔臓】から出る【魔力】を使うことにより起こす現象のことだ。」
「先生。魔力ってのは魔臓からじゃないと使えないのか?」
「その通りだ。残念ながら、良くあるファンタジーみたく空気中に魔力が充満しているなんてことはない。だからこそ魔法ってのは魔臓を持つ人間にしか使えないから世にはほとんど出て来ないんだ。
で、魔法には種類があり、初級•中級•上級•特級の4つがある。初級から上級は普通の魔法だが、特級はこれらとは違う。」
「どういうことだ?」
「初級から上級の魔法は消費する魔力の量で決まるが、特級はそれら以外の魔法がこれに含まれる。
例えば、昨日の女が使った魔法は魔法と魔法の合成による【合成魔法】だ。」
「その合成魔法ってやつ以外に特級魔法には何があるんだ?」
「それなんだが、ほとんどないんだ。あったらしいとされるのは、はるか昔に使われた【古代魔法】と伝説の魔法と言われる【世界魔法】だけだ。」
「それらを使える人はもういないんですか?」
「あぁ。古代魔法については、そのあまりの威力によりこの世から消えてしまった。
そして、世界魔法については、これを使える奴はほとんどいない。」
「ってことは少しはいるのか?」
「あくまで噂だが、世界魔法を使える魔法使やそれに近い魔法使の集団がいるらしい。」
(まぁ、こいつらが【アイツら】に会うこともないだろう。)
「へぇ〜。そんなのもいるんだ。」
「いるかどうか分からんことを考えるよりも先に魔法について知ってもらうぞ。
で、初級魔法が使える者を初級魔法使と呼び、これは中級魔法や上級魔法でも同様だ。
さらに、人にはそれぞれ【魔法適性】が1つ以上あり、それ以外の魔法は使えない。」
「魔法適性はだいたいいくつくらいあるもの何ですか?」
「普通はだいたい1つで、多くても3つが限界だと思うぞ。魔法の訓練の前にこの魔法適性について調べたいと思う。」
東はそう言うと、魔法陣を出現させると1人の幼女が現れた。
「なぁ、東 先生。誰だ?このロリ。」
「誰がロリだ、このバカ者が!
妾の名は松風。代々東家の守護神をしておる。よろしくじゃ、ガキ共。」
「東 家?」
「日本には【四神】と呼ばれる、日本の魔法を管轄する4つの家があるんだ。北条•南沢•東•西垣 家が代々受け継がれてきた。南沢 先生が事件現場にいたのは、調査のためだ。」
「えぇー!そうだったんですか。」
「まぁ、それはもういい。それで松風さんにはこいつらを視てほしいんだ。」
「なるほど。こいつらは特異者か。しかし、東よ、自分の生徒をこんなことに関わらせてよいのかの?」
「もうこいつらは巻き込まれた後で、そのために訓練させたいんですよ。それに何かあったら俺が全力で守りますよ。これでも教師なんでね。」
「ふふっ、そうか。よし、お前ら、そこに並べ!妾が直々に視てやろう。
ふんふん。何? なるほど。さすが特異者といったところか。」
☆朝木 魔紀
・魔力 3000
・魔法適性 全て
☆神崎 界人
・魔力 100000
・魔法適性 光 火 水
・聖剣
「おいおい、無茶苦茶だなこいつら。
神崎は魔力量が尋常でないし、しかも聖剣持ち。朝木は魔力量こそ凄まじく低いが、魔法適性がおかしいな。」
「なぁ、先生。俺のこの魔力量でこの先戦っていけるのか?」
「まぁ、何とかなるんじゃないか。
魔法の威力はその魔法のイメージとこめた魔力量による。だから、魔力量が低くても弱いと決まったわけじゃない。本人の努力次第だな。」
「では、妾は帰るぞ、東よ。」
「おう!サンキューな、松風。」
ヒュン!
松風は光に包まれたと思うと、一瞬でその場から消えてしまった。
「さて、魔力量と魔法適性が分かったところで魔法の訓練だが、場所の関係上明日から始めるぞ。」
「ってことは今日はもう何もしないのか?」
「いや、今日は最後に魔力を実際体内で感じてもらう。」
「どういうことですか?」
「魔法はイメージが重要だから、実際に魔力の流れを感じることは必須と言って過言ではないんだ。それに【身体 強化】は魔力を体に纏わせることで体を強化する魔法だからな。こっちでも重要なんだ。」
「なるほど。」
「じゃあ、とりあえず、俺の魔力をお前らに流すからこっち来い。魔力の反発がちょっと痛いが我慢しろよ。」
ビリッ!
「ぐぅ!」
「うわっ!」
まるで、体に電流が流れたような衝撃が2人を襲った。
「おい、何がちょっとだ!クソ教師!めちゃくちゃ痛えじゃねぇか。」
「本当ですよ。東 先生。」
「ははっ、悪い悪い。でも、これで魔力が感じられるだろ。体内に今迄と違う何かが流れているのが魔力だ。」
「すげ〜。これが魔力か!」
「うわっ。確かに不思議な感覚がする。」
「今度はそれを自在に操れるようになるのが目標だ。まぁ、一週間もあれば出来るだろ。
とにかく今日はこれで終わりだ。じゃあまた明日、迎えをだすからそれまでな。」
「了解!」 「分かりました!」
東 先生が帰ると魔紀と界人も帰る準備を始めた。
「じゃあ、僕達も帰ろうか、魔紀。」
「あぁ。そうだな。」
「あら、お2人ともこんな時間までどうなされたのですか?」
帰ろうとした2人の前に現れたのは転校生の救世 成子だった。
「あぁ、成子さん。僕達は少し先生に話を聞きに行ってたんだ。そういう君こそどうしたの?」
「私は課題がまだ残ってまして、それを済ませてました。それにしても、自主的に先生に話を聞くなんてご立派なんですね。」
「そ、そう。何か照れるなぁ///」
アハハハハ!
楽しげに話す2人を尻目に魔紀はいたたまれない気持ちになり、ささっと帰ろうとした。
「あら、魔紀さん。あなたも一緒に帰りましょうよ。」
「いやいや、2人きりの方がいいだろ。お前らおそろいだし。」
「いいじゃないですか、3人でも。大勢の方が楽しいですよ。ねぇ、界人さん。」
「そうだね。魔紀も一緒に帰ろうよ。」
(なに、界人までその気にさせてんだよ、あの転校生。今日聞いたことをまた襲撃される前に整理したかったのに。ふざけやがって。)
「何か失礼なことを考えませんでしたか、魔紀さん。」ニコッ!
「いえ、とんでもございません。」
(こぇ〜、あの女。)
「それでは帰りましょうか、2人とも。」
「はぁ〜疲れた。とっとと帰ろうぜ。」
「そうだね。」
臨命市 住宅街
「なるほど。お2人は小さい頃からのお知り合いなのですね。」
「そうだよ。魔紀とは物心ついた時から一緒にいたんだ。昔から魔紀はかっこよくて、いつも僕を守ってくれたんだ。」
「魔紀さんはお優しい人なんですね。」
「界人ほどお人好しじゃあないがな。こいつは見知らぬ人のためでも動けるが、俺はダチのためにしか動けないからな。」
「そうなんですか。お2人は互いに信頼なさっているんですね。」
キィィィィン!
突如、人の気配が消え、空の色が変わった。
「いったい何なんだ!」
「おいおい、まさか。マジかよ。」
「お2人ともどうなさったのですか?」
(まさかとは思ったが、昨日の今日でやってくるとはな。正直、魔法に関してはまったくだが、それよりもなんで救世がいるんだ?まさか、こいつまで特異者なのか?それとも俺らに巻き込まれたのか?)
「魔紀!どうしようか?」
「とりあえず、こっから離れるぞ!」
ドガァァァァン!
「ヒッヒッヒッヒ!ようやく見つけたぜ、特異者ども。切り刻んでやるから、待っとけ!」
上空から降ってきた男は腰にある刀をなでながら、いやらしい笑いを浮かべながら立っていた。