第一章 魔法使い編5
「東 先生、なのか?」
「どした?朝木。ついに俺以上に眼が腐ったか?」
(まさか、本当にこいつらがこんなことになってるなんて。【あいつら】はこのことを俺に伝えて何が目的なんだ?)
何時もと雰囲気が明らかに違う東 純一に戸惑う魔紀。
「まぁ、お疲れさん。よく頑張ったな。普通だったらあっという間に死んでたぞ。無属性魔法“ヒール” これで痛みはなくなっただろう。」
「あぁ、サンキュー。それとその言葉は界人に言ってやってくれ。界人の【聖剣】とやらのおかげだからな。」
「何!【聖剣】だと!全く面倒いことになってきたな。まぁいい、まずはこの女をなんとかするか。」
「くそっ!なんでこんなに邪魔が入るのよ!【聖剣】の次は【四神】のうちの1人である【蒼帝】が現れるなんて!」
「【四神】ってのは何だ?」
「それも後でだ。ほら、やってきたぞ。」
「クソが!くらえ風の中級魔法 “ウィンド ハンマー”」
荒々しい風が1つの塊となり、東 目掛けて降り注いだ。
しかし、東は冷静に魔法陣から魔法を発動した。
「木の初級魔法 “ツリー ドーム”」
翠の魔法陣が地上に発生したと思うと、そこから木が東の周りを囲った。
「何!私の中級魔法がたかが初級魔法に負けるだと!そんなの認めるものか!
“ウィンド カッター” “ウィンド バースト”」
まさに風の暴力と言わんばかりの攻撃が東 達を囲っている“ツリー ドーム”に次々に襲いかかるも、全くビクともしない。
「無駄無駄。どうやらあんた、こいつらに随分手酷くやられたらしいな。魔力供給が疎かだ。こんな軽い魔法なんか相手にならんな。全快だったらまだやれてたかもしれんが、あんたの今の体力ではこの程度が限界だな。」
「偉そうなことを言うな!負けない!負けてたまるか!風の特級魔法 “風槍 連撃”」
祭の魔法により風の槍が上空に出現する。その数は100をゆうに超え、1つ1つがその凶暴な槍頭を東へと向けていた。
「ほぉ〜、特級魔法を発動するなんてやるじゃねえーの。まだ諦めてねぇのか。その度胸だけは認めてやるよ。だがこっちも大事な生徒をボコられて腹立ってんだ。」
「くらえー!」
「面倒いが、一気に終わらせるぜ。木の上級魔法“クリエイト フォレスト”」
槍の雨が降り注ぐなか、東は“ツリー ドーム”をときつつ、小さい光の粒が現れた。
その粒に風の槍が当たる度に槍が消えていく。そして、その粒が大きな樹木に成長した。
「何だと!」
「この魔法は相手の魔法を吸い込むことで、発動する。そして、この樹木は俺が自在に動かせる。こいつで終いだ!」
祭の魔法を吸い込んだ樹木の枝が風の槍に向かって、あらゆる角度から襲いかかった。
「そんな、私の魔法が。くっそがー!」
数多の枝は祭に絡まり、意識を失わせた。
「ふぅ。これで終わりだな。」
「なぁ、東 先生。聞きたいことがあり過ぎるんだが。とりあえず、その女はどうするんだ?」
「こいつはこっちで捕らえて、情報が聞き出せないか試してみるつもりだ。
ん? ちょっと待て。なっ!おい、朝木 今すぐそいつから離れろ!」
「えっ?」
突如、祭の体に不思議な模様が描かれると強烈な叫び声をあげて苦しみだした。
「いやっ!まだ死にたくない。まだやれます。だから、助けて!いやぁぁぁぁぁ!」
「くそったれ!死んでやがる。しかも訳が分からん魔法を使いやがって。」
「おい、大丈夫かよ、東 先生?」
「あぁ、なんとかな。
まぁ、おまえらも疲れてるだろう。明日の放課後に俺のところに来い。そこでいろいろ話してやる。分かったな。じゃあな!」
そう言うと東はダルそうに肩を回し、女の死体を担いで帰っていった。
「あの先公。俺に界人の世話を押し付けたな。これでも病み上がりなのに。未だに界人は目覚めそうにないし。仕方ねぇな。」
魔紀は界人を担ぐと家に帰っていった。
とあるビルの屋上に2人の人影があった。
「それで本当にこれでよろしかったのですか?【 】様。」
「おいおい、そんなにあいつが危ない目にあったのが許せないのか?【 】。」
「えぇ、だって私はあの人を愛していますから///。」
「はいはい。お熱いことで。まぁ、俺もあまり賛成して無かったんだが、他ならぬあいつの頼みだからな。あの目的を達成するためにも、必要なんだろうよ。」
「そうですよね。分かりました。ではそろそろ戻りましょう。」
「あぁ。行くか。」
そう告ると、2人は消えていなくなった。
とある暗闇にまた新たな2人の人影がいた。
「クソが!またも俺の邪魔をするか!【 】!」
「如何しましたか?【 】様。」
「あぁ、すまない。ちょっと熱くなってしまった。それよりどうだい。計画の方は?」
「はい。首尾よく進んでおります。」
「そうか。その調子で頼むよ。【 】。」
「はっ!」
「待っていろ【 】。貴様は俺が必ず殺す!絶対にだ!」