第一章 魔法使い編4
「行くぞ!」
「ふざけやがって、ガキが!こっちこそ全力でやってやる!風の中級魔法 “ウィンド ランス”」
祭の手から魔法陣が出たと思うと勢いよく風が集まり、回転し始めた。そこから1本のランスが生成された。
「なんだ、あの槍は?」
「ウィンド系はエア系と違って威力は高いけど視認出来ちゃうからあまり好きじゃないのよね。でも、【聖剣】なんてものが出ちゃうから仕方ないわね。降参するなら今のうちよ、イケメン君。」
「・・・・」
「どうしたの?もしかして怖じ気づいたのかしら。」
「・・・・」
「なんとか言えや!このガキが!そんなに殺して欲しいか!」
「さっさと行くぞ。」
走り出す2人。聖なる剣と風のランスが切り結んでいく。上段から振り下ろされる聖剣に祭は風のランスを薙ぎ払い、迎え討つ。
一度互いに下がると再び飛び出した。まっすぐに突き出されるランスを界人は紙一重で避けると、聖剣を横に振るった。
「うっ!」
祭は慌てて下がるものの、界人の剣が腕にかすってしまった。
(すごい。初めて剣を使っているのに、使い方が分かる。まるで、ずっと前から使ってるみたいだ。)
「光の初級魔法 “ライト オーラ”」
界人は聖剣に光を纏わせることでさらに剣の強度を上げつつ、祭に向かって勢いよく切りつけた。
祭も“エア バレット”で牽制しながら魔力を体に流して“身体 強化”をかけ、ランスで剣を防いだ。そして再び振るわれるランスを避けると、剣に光を纏わせたまま、新たな魔法陣を発動させた。
「まだまだ!光の初級魔法 “ライト ショット”」
「なんで、魔法を初めて使う奴が“並列発動”を使えるのよ!」
祭の魔法に対抗して、魔法陣から光の銃弾が炸裂する。風の弾丸と光の銃弾が互いを撃ち落としあっていく。
「くそが!やってくれやがる。」
「これでどうだ!くらえ、光の中級魔法 “フォトン バースト”!」
溢れんばかりの極大の光が圧縮されて界人の手のひらから放たれた。辺りを照らしながら、その破壊の光は祭に向かって襲いかかった。
「ちくしょう!風の中級魔法 “ウィンド シールド”!」
ズドォォォォン!
祭は避けるのは不可能と悟ると風の防御魔法を使い、防ごうとするも、光の砲撃はその風を粉砕し、祭に命中した。
「はぁっ〜はぁっ〜。」
祭は咄嗟に“身体 強化”に魔力をさらに流して強化することで致命傷は避けたものの、体は傷だらけになり、服はズタズタになってしまった。
「さぁ、これでトドメ・・・」
バタン!
界人がトドメをさそうとしたその瞬間、突然倒れてしまった。魔紀は傷だらけの体を引きずりながら、界人の元に駆け寄った。
「界人!しっかりしろよ界人!」
「ハーハッハッハ!こいつはしめた。まさか魔力切れとは。どうやら【聖剣】は随分魔力を使うみたいじゃないか。さてどうやってお返しをしてやろうかしら。」
「ちくしょう!あとちょっとだっていうのに。」
「ふふっ。これでおしまいよ。“ウィンド バースト”」
「クッソー‼︎」
ズガァァァン!
「ハーハッハッハ!やっと終わったわ。ただの【特異者】と思って、油断したわ。さっさとあいつらの魔臓を回収しないと。」
「誰の魔臓を回収するって?」
「誰!」
風が吹き、辺りの煙を散らしていった。そこには新たに1人の男がいた。その男は淀んだ眼をし、タバコを吹かし、静かに佇んでいる。しかし、その淀んだ眼からは強い怒りを感じさせている。
「てめえ、散々人の生徒に手を出して、ただで済むとか舐めたこと思ってんじゃねえよ。このクソアマが!」