第一章 魔法使い編9
ーー魔紀が紅葉と戦っているのと同じ頃、
「くそっ、“ウッド ランス ”」
「“フレイム ランス”」
東は、黒いローブの人物と戦っていた。相手は東と相性が悪い火属性の魔法を用い、互角の戦いを繰り広げていた。
「いったいどういうつもりだ!前はあいつらを助けに行かせたり、今度は邪魔したり。何が目的だ?」
「・・・・・」
「だんまりか。だったらとっとと倒してあいつら助けに行ってやる。木の上級魔法“フォレスト キャノン”!」
「火の上級魔法“バーン ドライブ”」
ドガァァァン!
ーーーーー臨命市 住宅街
「あちゃー、やり過ぎた。これじゃ魔臓が回収出来ないか。まぁ、ムカついたから仕方ないか。ヒーヒッヒッヒッ!」
ガタッ!
積もっていた瓦礫の山から1人の男が這い上がってきた。
「なんで、貴様があれを喰らって生きてやがるんだ?!朝木!」
「痛ってー!さすがに今度ばかりは死ぬかと思ったぜ。」
魔紀は立ち上がると服についた瓦礫の破片を払いつつ、構えを再びとった。
「何故かと聞いているだろうがぁぁぁ!」
話を聞かない魔紀に、怒りを露わにして、妖刀を振り上げつつ突っ込む紅葉。
「さて、終わらせるか。」
振り下ろされる妖刀を少し体をずらして躱すと、紅葉の眼前で指を鳴らした。
ドガァァァァァァン!!
突如、轟音が辺りに響き渡った。まるで巨大な空気の塊がぶつかってきた様な衝撃が体に走った。
「ぐわっ。いったい何だ?・・・」
凄まじい爆音に意識が飛びそうになるのを抑えると、拳を握る魔紀の姿が見えた。
(いったい何なんだ、・)
「貴様ッッッ!」
「あいにく、俺は勝つためなら手段は選ばないんだ。そんなわけでしまいだ!“身体 強化”‼︎」
魔紀の拳、ただ一点に魔力が集中していく。その拳は強烈な一撃となって紅葉に襲いかかった。
「ぐはっ!」
魔紀のアッパーカットが紅葉に決まり、紅葉は数メートル飛ぶと、静かに倒れ伏した。
「ふぅ、疲れた。魔力を使い果たすとこんな感じになるのか。」
ガサガサ
疲れ果てた魔紀の前に2体の化け物が現れた。
「おいおい、こんな状況でまだ戦わせんのかよ。」
(やばっ。目の前が揺れてきた。)
グルルルル
「くそっ、ここまでか。」
【モウ、ダイジョウブデス。ワガ 主人】
(なんだ今の頭に響いた聞き慣れた声は?・・・・)
バタン!
魔紀は謎の声に疑問を抱くも、魔力切れと命懸けの戦いの疲労により気を失ってしまった。
ーーーー魔紀宅
「うっ、う〜ん。ここは?」
「ここは主人の自室でございます。」
「そうか。ところで、あんた誰だ?」
眼を覚ました魔紀の目の前には1人のメイドがいた。スラっとした体格に、きれいな青の髪、豊満な胸を持つ美少女が笑顔を浮かべていた。
「すいません。私としたことが、名乗りもせず申し訳ありません。ですが、私の名前はまだ無いのです。」
「どういうことだ?」
「私はあなた様が持つアプリ、【KOSMOS】の精霊といったところです。」
「何だと‼︎つまり、お前はあのアプリについて全て知っているのか?」
「いえ、残念ながら、ほとんど分かっておりません。私が知っているのは、私が現れた理由と私の機能についてです。」
「そうか。なら、その知っていることについて話してくれ。」
「はい。まず、私は主人が魔法について理解した時に現れるようにあらかじめ設定されていたようです。」
「魔法についてなら、最初の検索で知ったはずだが。」
「いえ、そうではなく。魔法の原理についてです。何か心当たりがあるのではありませんか?」
(確かにあいつとの戦闘で魔法についてはなんとなく分かったが、あれが真実なのか?それに何故俺はあんなに簡単に理解できたんだ?まるですでに知っていたみたいに。)
「やはり、そうなのですね。とにかく私が現れた理由は以上です。私の機能についてですが、主人の知りたいことをいつでも調べられることです。」
「それってすごいのか?」
「えぇ、もちろんです。例えばですが、主人が戦闘中でも、相手の魔法について知りたければ、私が直ぐに調べ、その情報を主人に教えることができます。」
「なるほど。それは確かにすごいな。」
「それはもちろんです。主人の精霊ですので。しかし、もしこれでも足りないのであれば、私の身体であればいくらでもあげますよ////」
「んなもの、いるか!////」
「そうですか。残念です。」ショボ〜ン
「ところで、昨日のことについて教えてくれないか。」
「そのことは東 先生から教えていただけると思います。」
「そうか。それで今何時なんだ?」
「今は7時です。まだ余裕はありますよ。」
「そうだな。飯にすっか。お前はどうする?」
「残念ながら、今の私は精霊ですので、実体はなく、私の姿はほとんどの人には見えません。ですが、あなたが魔力を流すことで実体化出来るのです。だから、私の身体が必要な時はいつでも・・・・」チラッ
「はいはい。さぁて飯にすっか。」
「あぁ、そんな素っ気ない態度もたまりません////」ハァハァ
「・・・・・・」
興奮する【KOSMOS】の精霊を無視し、1人一階のリビングへと向かった。