第一章 第1話 夏の屈辱
初めまして!サゴニゴンです。
サッカーに詳しくない人は分かりづらい部分があるかも知れないですが、
基本、あまりサッカーの事は出さないのでよろしくおねがいします!(うそくせ〜)
「おい!もっと走れ!」
太陽がジリジリと照りつけるグラウンドに、顧問の藤山先生の声が響き渡る。
夏休み、乾ききった共学の三陸高校のグラウンドが、砂埃でいっぱいになるほどサッカー部が走り回って、ボールを追いかける。
一年生は球拾いだった。二、三年生が蹴ったボールを忙しく取りに行く。
ボールを取りに行くのは、ボールに一番近い人間と決めていた。
「お前の方が微妙に近いぞ。」
誰かがそう言うと、一番近い一年生は、仕方なく取りに行く。
そんな中、一人だけ一年生から敬語で言われる部員がいた。
「先輩、取ってきて下さい。明らかに先輩の方が近いです。」
先輩と呼ばれた部員がしぶしぶ取りに行く。
彼の名前は 大島 幸二。
三陸高校の二年生だ。サッカーは小学生からやっている。
小学生から中学二年生の初めまで、いつもレギュラーだった。
FWとして活躍し、ドリブルやパス、テクニックは常に回りの人間より上だった。
だけど、中学二年生の初夏、幸二はある異変に気がついた。
いつも、簡単に抜ける相手から、ボールをしょっちゅう奪われるようになったのだ。
時が経つに連れ、その異変は明らかになっていった。
幸二は、背が伸びるのが遅かった。
背が小さければ、自然に回りの人間よりも体力がなくなっていく。
今まで自分より小さかった連中にもドンドン抜かれ、中学の初夏あたりから、幸二は背の順で、いつも前の方だった。
そしてついに、一年生にまでボールを取られるようになり、幸二は完全に自信を失った。
しかし、幸二は諦めずに、結局中学の3年間、部活を一回も休まずに行った。
そして、三陸高校に入学。中学の辛い経験があったにも関わらず、サッカー部に入部した。
高校に入っても、試合には出られずにいた、だけど、練習は一回も休んでいなかった。
それから高校一年生の終わり頃、背は周りの人間と変わらなくなってきたが、それでも試合には出られなかった。
幸二はサッカーが大好きだった。自分がダメでもボールが蹴れれば、試合に出られなくてもいい。
毎日頑張ってれば、いつか報われる。幸二はそう信じて、中学二年生の夏からやってきた。
一年生の役割は、ボールの手入れや練習着の洗濯など、雑用ばかりだった。
幸二ももちろん一年生と一緒に雑用係。ボールが触れるのは、少しの時間だけだった。
練習が終わり、幸二は部室で着替えている部員達に、飲み物が入ったやかんを持って行った。
「しっかしアイツ哀れだよなぁ。二年生のクセして、一年生と一緒に雑用係。俺ならやめるね。」
更衣室のドアから、二年生の3人のそんな言葉が聞こえた。幸二は立ち止まり、その会話を盗み聞きした。
「っま、ダメな奴はダメって事だろ。あいつ、中学の一年生まではいつもレギュラーだったらしいぜ。
だけど、今はこのザマだ、天狗になってたんじゃねぇの?」
自分の事だ。
幸二は、ここで初めて気がついた。これ以上聞くのは怖かった。だけど、どこかに聞きたい気持ちがあった。
しかし、次の言葉を聞いた瞬間、幸二は逃げ出せずにはいられなかった。
「あんな奴、どんなに頑張っても試合に出られないよな。
この前、職員室で先生が『やる気のない幸二みたいな人間は試合に出せない』って言ってたのを聞いちゃったんだよ。おちこぼれってヤダヤダ。」
幸二は愕然とした。やかんをドアの前に置いて、急いで部室から出た。
外に置いたバックを肩にかけ、何も言わずにやみくもに走って帰った。
「やる気がない?誰がやる気がないだよ!俺は中学二年から諦めずにやってきたんだ。
部活ですら一回も休んだことないのに!部員どころか先生にすら認めてられないなんて!」
幸二は、そんな事を考えながら、ひたすら走った。
そして、決心した。
「こんな部活やめてやる。いつか努力が報われて試合に出られたとしても、あんな奴らがいるチームのために何か戦えない!」
幸二は決心がついた時、目頭が熱くなってきたのに気がついた。
幸二は、小学一年生からやり続けていたサッカーをやめた。
絶望からの悔しさが、幸二を縛り付けた。
どうでしたでしょうか?
最後まで読んだ人は絶対コメントを下さい!(いや、絶対とは言わない!だけど出来れば・・・なるべく・・・絶対・・・)