表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界  作者: 影川明空人
第2章
26/32

第二十五話

2章開始

第二十五話 


 静寂の中、声だけが存在していた。


 姿は見えない。気配も曖昧だ。だが、確かに“そこにいる”。


 ルシアンは何も言わず、ただ聞いている。


「まずは、この場所について話そう」


 声が静かに響く。


「ここは、お前の屋敷の地下にあったものだ。だが――ただの地下ではない」


 わずかな間。


「神話の時代に造られた空間だ」


 ルシアンの視線が、わずかに揺れる。


「お前の一族は、その時代、神に仕えていた」


「……仕えていた?」


「そうだ。ヴェルグレイヴの血は、その名残だ」


 思考が繋がる。自分の魔力の異質さ。その理由の一端。


「神話の時代、この世界には神々が顕現していた。人は善神の加護を受け、魔族は対となる悪神の加護を受けていた」


「だが、やがて争いが起きた。神同士の戦いだ」


 静かに続く。


「当時は今より多くの神が存在していたが、その大戦によって多くが消えた。滅びたか、力を失ったか、あるいは封じられたか」


 淡々とした言葉。


「現在、明確に力を保っているのは、善神十二柱、悪神十二柱。合計二十四柱のみだ」


 ルシアンはその数を頭の中で繰り返す。


「その戦い以降、神々は力を大きく失い、この世界に直接干渉することは極めて難しくなった」


 一拍。


「だが、この場所は例外だ」


 空気がわずかに変わる。


「この祭壇は神話の時代の環境を維持している。魔力の質と濃度が、外とはまるで違う」


 ルシアンは周囲を見渡す。


 確かに、空気そのものが重い。


「だからこそ、私はこうして顕現できている」


 そして。


「――我が名は、アストレウス」


 静かに告げられる。


「秩序を司る神だ」


 その名に、不思議と違和感はない。


 むしろ、最初から知っていたかのような感覚すらある。


「本来、この場所は管理されるべきだった。だが長い時の中で忘れ去られた。お前たち自身も知らなかっただろう」


「……はい」


「当然だ。人は忘れる。それが自然だ」


 否定ではなく、ただの事実。


 そして。


「なお、この空間の時間の流れについてだが」


 ルシアンの意識が向く。


「通常、このような干渉はできない」


 一拍。


「だが今は、私が顕現している」


 静かに続く。


「説明に時間を要する可能性があるため、一時的に時間の流れを調整している」


 ルシアンはわずかに目を細める。


「ここでの時間は、外とはほとんど同期していない。だが――」


 はっきりと言い切る。


「これは今この瞬間だけのものだ。恒常的なものではない」


 つまり。


「話が終われば、時間は元に戻る」


「……」


 ルシアンは何も言わず、受け入れる。


「そして現在」


 声がわずかに低くなる。


「再び、世界は動き始めている」


 魔物の増加。


 魔族の動き。


 そして、あの男。


 言葉にせずとも、すべて繋がる。


「だからこそ、お前に依頼する」


 核心。


「これは偶然ではない。お前がここに来たことも、この血を持っていることも」


 静かに突きつけられる。


「選べ。受けるか、拒むか」


 短い問い。


 だが、重い。


 ルシアンは目を閉じる。


 思考は、ほとんど必要なかった。


 開く。


 迷いはない。


「……聞かせてください」


「何をすればいいのか」


 わずかに。


 本当にわずかに。


 満足したような気配が流れた。


やる気が続くまではしばらく0時と12時に投稿しようと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ