恋来いパンダ-ユイの瞳-
緊張がとれた春之助は女性にこう言った。
「ありがとう。君、とても優しいんだね。俺は『風谷春之助』君も、よかったら名前教えてよ」
女性は、安心した表情を見せ少し微笑みながら答えた。
「私、『三崎ユイ』と言います。後……私、別に誰にでも優しい訳ではありません。春之助くんは何故かほっとけなくて……」
「可愛い……。好きだ」
春之助は思わず言いそうになったが「流石にまだ早すぎる」と思い辞めた。
しかし、春之助はこれまで女性に、ここまで積極的に話すことなど出来なかった。
それが、まるで人が変わったかのように冷静になっている。
「これは、昨日の夢で見た『恋来いパンダ』の力だ! きっと彼らが俺に力をくれたんだ!」
春之助は、恋来いパンダに深く感謝した。
「ユイちゃん、汗を拭いてくれたお礼に、お茶でもしない? 奢らせてほしい」
「そんな、ご馳走してもらう程のことはしていませんよ」
「ううん、俺にとっては凄く助かったんだ。それに、敬語じゃなくていいよ」
「う、うん。春之助くんがそう言うなら……行く」
ユイはそう言い、ぎゅっと春之助の手を握った。
「なんて、暖かいんだ」
春之助は今、この瞬間が人生で一番幸せだった。
こうして二人は、近くの喫茶店へと向かった。
喫茶店へ入ると、二人は一番奥の席へと行き、向かい合って座った。
「やっぱり不思議だ。俺は確かに緊張している。でも、それは程よい程度で身体が震える程ではない」
そう思っていると、ユイが口を開いた。
「春之助くん、今日は本当にありがとう。素敵なお店だね」
「お礼を言いたいのは俺だよ。付き合ってくれてありがとう。とりあえず、何か頼もうか。」 二人は紅茶を頼み、それを飲みながら、たわいもない話で盛り上がっていた。
ユイも現在、大学生であり春之助と同級生だった。
地元は東京である為、今は実家暮らしのようだ。
そして、二人は恋愛話へと変わっていく。「え? 春之助くん、付き合ったことないの?」
「うん……」
「とてもかっこいいし、優しいのに」
「そんなこと言われるの初めてだよ。ユイちゃんはもしかして、彼氏がいたりする?」
それを聞いたユイはニコっと笑った。
「いたら誘い断ってるよ。」
「そうだよね」
春之助はホッとした。
「それに、私も出来たことないの。彼氏……」
それを聞いた春之助は驚いた。
「ほんとに? めっちゃ可愛いのに」
「別に可愛いくないよ。でも、ありがとう。私、あまり興味がなかったから。男の人に。……でも、春之助くんを見た時、何故か胸がドキドキしたの。こんな感覚初めてだった。それで……」
気付いたら、春之助はユイの両手をぎゅっと握っていた。
二人は、恥じらいながらも目を合わせた。
ピンク色にキラキラ輝いているユイの瞳を見て、春之助はもう我慢出来なかった。
「ユイ……俺と付き合ってくれないか? 初めて会って、こんなこと言うのは間違っていると思う。でも、好きなんだ。どうしても好きなんだ」
ユイは「え?」と言い、少し驚いた表情を見せた。
「やっぱり早すぎたか」
春之助が後悔していると、次の瞬間にはユイは笑顔になっており、そっと呟いた。
「いいよ。私も春之助くんが好き」
「ほんとに? とても嬉しいよ。ありがとう」
気が付いたら、空はもう暗くなっていた。
二人は喫茶店から出ることにした。
「春之助くん、今日はありがとう。紅茶とケーキとても美味しかった」
「ならよかった。ユイって明日暇?」
「うん、暇だよ」
「なら、明日映画でも見に行かない?」
「うん、行こ」
「ありがとう。じゃあ、もう暗いから家の近くまで送って行くよ」
春之助がそう言うと、ユイは下を向いて春之助の手を握った。
「寂しい……」
「え?」
「春之助くんと別れるの……寂しい」
「明日、会えるよ。今日はもう遅いし……」
「春之助くん、一人暮らしなんだよね? 泊まっていい?」
その言葉を聞いた春之助は驚いた。
「え!? 俺は、別にいいけど。……でも、今日初めて会った男の家に泊まるんだよ? 抵抗ないの?」
「さっきも言ったでしょ。私は、春之助くんが好きなの」
「ほんとにいいの?」
「うん……」
春之助は心の中で下心が爆発した。
「まさか、たったの一日でここまで発展するなんて、本当に現実なのか? これはまさか、初体験が出来る感じなのか? でも、ゴムなんて持っていないよ。今から買うにしても、体目的なんて思われたくないし。それに、家に泊まるだけで必ず、そういう展開になるとは限らない。今日は我慢しよう。彼女も、流石にそこまでは考えていないだろう」
春之助は、必死で何とか下心を抑えた。
すると、ユイが口を開いた。
「春之助くん……私、着替えたいから一回家に帰ってもいい?」
「うん、全然いいよ」
「なら、一時間後には戻るから少し待ってて」
ユイはそう言い、一度自宅へと帰った。
春之助は一人になり、先程の下心がまた蘇ってきた。
「今がチャンス!」
そう思い、近くにある大人の店へと向かいゴムを買った。
「まさか、君のお世話になる日が来るとは……。いや、でもまだ決まった訳ではない。念のためだ。俺は、念のためにこれを買ったんだ」
春之助は脳内で言い訳をしていると、三十分程でユイが戻ってきた。
「お待たせ」
ユイの姿を見た春之助は驚いた。
「早かったね。あれ? 着替えて来なかったの?」
「うん……。着替えだけ持って来ちゃった。早く春之助くんに会いたかったら」
ユイはそう言うと、頬を赤らめ上目遣いで今度はこう言った。
「もし、よかったらでいんだけど、春之助くんの家でお風呂に入っていい?」
「う、うん。全然いいよ」
春之助は心の中でガッツポーズをした。
こうして、春之助は生まれて初めて女性と二人で一夜を過ごすことになった。




