五分の扉-開扉-
「この扉の名前は『五分の扉』今、私がやった通り、このアナザーロッドを一振りすると出てきます。そしてこの五分の扉の中に入れば、そこは異世界。只、この異世界は今の現実世界と何ら変わりはありません。そして、この五分の扉は名前の通り、この異世界にいれる時間はたったの五分です。それに、この異世界での五分間は、現実世界では一瞬にも満たない」
「ちょっと待てよ。そんな所に行って、俺に何の得があるんだ。俺は、異世界に散歩しに行きたい訳じゃねぇんだよ。刺激と金が欲しいんだよ」
黒木という男は笑いながらこう言った。
「ほっほっほっほっ。お口が悪く、せっかちなお方ですね。あなたが求めている物。それは、今からお話しますよ。まず、あなたが欲しているお金。それは、五分間この異世界で生き残ることが出来れば、一万円貰えますよ」
「何? たった五分で一万円?」
「えぇ、只、この五分の扉を出現させられるのは一日に一回だけ」
「何だよ。一日に一回だけかよ。なら一日に一万しか稼げないのかよ」
「でも、たった五分で一万円と考えたら、これ程おいしい話はないでしょ?」
「まぁ、確かにそうだが……」
「それに私は、一日に一万円しか稼げないとは言っていませんよ? ちゃんと、ボーナスもあるんです」
「まぢかよ! それを早く話してくれ!」
「はい、只、これを話す前にあなたが五分の扉の中に入ると、何が起こるのかについてお話しをする必要があります」
「もー、話しが長いっておっさん」
「まぁまぁ、これが結構重要なんですよ。もし、あなたが五分の扉の中に入ると、あなたはあらゆる生物から襲われます。いわば皆が敵。あらゆる生き物が、あなたを殺しにかかって来るでしょう。あなたは、この五分間生き残らなければお金も貰えません」
「おい、もし俺が五分以内に殺されたらどうなるんだ?」
黒木という男はまたニヤリとして答えた。「もし、あなたが五分の扉の中で死ぬと、現実世界であなたの身体は消滅し、今まで関わった人達の頭の中から、『風谷春之助』と言う存在自体、記憶から抹消されます。」
それを聞くと俺は眉間にしわを寄せ、それを見た黒木という男は、不敵な笑みでこう言った。
「まさか、今になって腰が引けたとか?」
俺も、不敵な笑みを浮かべてこう返した。
「なわけねぇだろ! こんぐらい刺激ねぇと燃えないんだよ!」
「流石です。では、あなたが一番気になっているボーナスについてお話しましょう」
次の瞬間、黒木の目がどす黒く濁った。
「それは、生き物を殺すことですよ。犬や猫、鳥等の動物は一律で五千円。人間は老若男女、勿論子供も含め、一律三万円です。まぁ、金額からすると人間を殺した方が、断然お得ですね。ねぇ? 簡単でしょ?」
俺は、再び眉間にしわを寄せた。
「俺に、人や動物を殺せと言うのか?」
「安心して下さい。五分の扉の中で、人や動物を殺しても、怪我をさせても、現実世界でその生物達が傷つくことも、死ぬこともありません。勿論、あなたも五分間生き残ることさえ出来れば、いくら傷ついても、現実世界に戻れば全て完治していますよ」
俺はホッとした。
「なんだよ。驚かせやがって。……なら、思いっきりやれるってもんだ」
「えぇ、ただし……」
「あー、もういいよおっさん! それだけ聞ければ十分だ」
「はぁ……そうですか。……では、あなたにはこのアナザーロッドを差し上げましょう」
「サンキューおっさん! なら、行って来るわ」
「はい。ご武運をお祈りしております」
こうして俺は五分の扉の前に立った。
ふと後ろを振り返ると、黒木という男の姿はすでに消えていた。
「何だったんだ? あのおっさん。……てか、なんであのおっさん、俺の名前知ってたんだ? ……まぁいいか」
その頃、黒木は既に人目のないある道を歩いていた。
「ほっほっほっほっ。それにしても、久しぶりに面白いお方に出会えた。只、人のお話は最後まで聞くものですよ? 風谷春之助さん」
扉の前に立っている俺は一応、黒木という男に説明されたことを、頭の中で整理をした。 一、アナザーロッドを一振りすると五分の扉が出現する。
二、五分の扉を出すことが出来るのは一日に一回だけ。
三、五分の扉の中の異世界は、現実世界と何ら変わりはなく、この異世界での五分間は現実世界では一瞬にも満たない。
四、アナザーロッドを持った者は、周りから自身を消すことが出来る。
五、異世界は五分間しか滞在出来ない。
六、異世界で五分間、生き残ることが出来れば一万円貰える。
七、異世界ではあらゆる生物から襲われる。 八、もし、異世界で死ぬことがあれば現実世界でも自身の身体は消滅し、自分の存在は他人の頭の記憶から抹消される。
ただし、どんな怪我を負っても生き残ることさえ出来れば、現実世界に戻った時点で傷は消える。
九、異世界で生物を殺しても、殺された生物は現実世界では死なない。
十、犬、猫、鳥等の動物を殺せば、一匹につき一律五千円貰える。
人間を殺せば、老若男女、子供も含め、一人につき一律三万円貰える。
「まぁ、こんな感じだな。……よし、ならいっちょ行くか!」
こうして俺は、五分の扉を開き中に入った。




