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世にも歪な物語  作者: 海藤日本


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黒帽子の案内人

この話は、とある田舎村に伝わる噂を基に書いたものである。

村の者は決して語らず、外の人間も殆ど知らない。

ただ一つだけ言われていることがある。

しつこく聞き回った者のもとには、その夜に黒帽子を被った男が現れる。

その黒帽子とは一体何者なのか。

 ある真夏のことである。

「春之助」という一人の若い男がある噂を聞いて、小さな田舎村へとやって来た。

 そのある噂とは、この小さな村には誰もが恐れ、決して近寄ることのない、心霊スポットがあるのだそうだ。

 あまりの危険さに、その存在も消され、今となってはこの村に住む者以外に、このことを知るものは殆んどいないと言われている。    

 春之助は、屈指の心霊マニアであり、先日あるサイトの書き込みでこの話を知った。

 そのサイトには、春之助と同じような心霊マニアが多数存在している為、あまり世間では知られていない、心霊スポットの情報も数多く書いてある。

 春之助は今まで、一人で多くの心霊スポットに行った経験のある変わり者であり、今回はどうしてもその村の心霊スポットが気になった。

 そこでわざわざ九州から遠く離れた、この村へと足を運んだ訳である。

 しかし、この村の何処の場所が心霊スポットなのか、そして、どんな霊が出るのかまでは、そのサイトには書かれてはいなかった。

 その為、春之助はまずこの村に住む一人の老婆に尋ねることにした。

 しかし、老婆は首を横に振って答えてくれなかった。

「減るものではないのだから、答えてくれないか? 俺は、わざわざ九州から来たんだ」

 春之助がそう言うと、老婆は呆れた表情をしてこう答えた。

「九州からじゃと? 馬鹿な男じゃ。それに、そういう問題ではない。誰から聞いて来たかは知らんが、悪いことは言わん。今すぐ帰りなさい。あの場所は、決して教えてはいけないのじゃ」

 そう言い、老婆は去って行った。

 しかし、老婆のこの行動が、更に春之助の好奇心を揺さぶった。

 けれども誰に聞いても老婆と同様、決して話してはくれず、次第に春之助は村人から冷たい目で見られるようになった。

 その様子を見て、春之助は一旦聞くのをやめ、その日の夜は村の宿に泊まることにした。

 春之助は風呂に入り、夜ご飯を食べると急に夜風を浴びたくなった。

 誰もいない夜道を歩いていると、一人の黒い服を着た黒帽子の男性が声をかけてきた。

「お兄さんかい? 昼間、村人にあのことを聞いておったのは」

 その黒帽子は、目が濁っており、何か不気味なオーラを放っていた。

 それに真夏であるのに長袖。

 それだけなら未だしも、よく見れば黒い手袋をしている。

 妙ではあるが、そんなことは春之助にとって関係なかった。

「あんたが教えてくれるのか?」

「ああ、教えてあげるよ」

 黒帽子はニヤリと笑い、人差し指を山の方へと差した。

「あの大きな山を目指せば、やがて小さなお墓が見えてくる。そこだよ」

「どんな霊が出るんだ?」

「さぁねぇ。只、危険なのは確かだ。その墓は大昔から在ってな、今となっては誰が入っているのか、この村の者は誰も知らない。」

「ならば何故、村の者は怯え、あの墓のことを話さないんだ?」

「言い伝えだよ。あの墓に足を踏み入れた者は、精神が崩壊するか、死ぬと教えられてきたのさ。それを聞かされ、誰も近づかない。何も話さないのは、もし話を聞いた者があの墓に行って、死んでしまったら責任を負えないからだ」

「なるほど……よくあんたは話したな」

 春之助がそう言うと黒帽子は再びニヤリと笑い、何も答えず背を向け、闇に消えて行った。

 しかし、これで場所は分かった。

 春之助は黒帽子に言われた通り、村にある大きな山の方へと歩き出した。

 山へ近づくと、夜のせいもあってか、その不気味さは凄まじいものだった。

 時期は真夏であるのに、春之助の全身からは、自然と鳥肌がたつ程の寒気がする。

 春之助は、あまりの寒さにリュックの中から長袖を出して着用した。

 そして不思議なことに、手も凍える程冷たくなった。

 勿論、こんな時期に手袋など持っている筈がない。  

 春之助は袖で手を隠すことにした。

 しかし、こんな奇妙な現象が起きても、春之助は「スリルがある」と更に好奇心が湧いてきた。 

 しばらく歩くと、黒帽子が言った通り、本当に小さなお墓が見えてきた。

「これか……」

 春之助は何の躊躇もなく、お墓の階段をかけ上がった。  

 そのお墓は無論、誰も来ていない為、辺りは草で覆われており道が塞がっている。

 それに、墓石は殆んど崩れていた。

 春之助は頭に着けてあるライトを頼りに、一時草をかき分け歩いた。

 確かに不気味ではあるが、特別何かが起こる気配は今のところはない。

「なんだ。何も起きないではないか」

 春之助が拍子抜けしていると、突然誰かに両手を、いや、手は隠している為、両袖を真下にぐっと引っ張られた。

 その引きの強さに、春之助はがくりと膝から落ちた。

「何だ? 今のは……まさか、袖引き小僧か?」

 春之助は瞬時に起き上がった。

 すると、今度は焼けるような暑さが春之助を襲ってきた。

 先程の寒気は嘘だったかのように、全身から大量の汗が出た春之助は、我慢出来ず長袖を脱ぎ裸になった。

 裸になった直後、また春之助は誰かに両手を引っ張られ、再びガクリと膝から落ちた。

 しかし先程とは違い、引っ張られたところから激痛が走った。

 恐る恐る見ると、春之助の両腕は完全に失くなっており、血がボタボタと落ちていた。

 春之助は、激痛の中こう思った。

「そっか……袖引き小僧の仕業ではなかった。……だから、あの黒帽子は手袋を……」

 春之助は身体から全ての血が流れ、死ぬ直前、裸になったことを酷く後悔した。

 実は、春之助がこの村にやって来た日、あのサイトではある書き込みがあった。

「村人にあのことをしつこく聞いた者は、その夜に黒帽子を被った男が会いに来る。その黒帽子は、その村の死神と言われているそうだ」

今回の話は「教えてはいけない場所」をテーマに書きました。

人は、止められるほど知りたくなる生き物です。

けれど、その好奇心を利用する黒帽子のような案内人がいるとしたら。

春之助の奇妙な体験は、まだ終わりません。

何故なら、彼は何度でも生き返るから。

でも、我々は生き返ることは出来ません。

なので、春之助のような行動は避けましょう。

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