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フェルゴンとマーゲイ人

「さあ!いよいよ6層だ!」

クレールがハコから先に降りて、一行は念願の6層に辿り着いた

ここまで深く降りると日の光が届きにくく夜のように暗い

武器であるハンマーを持ったクレールはこっちですと先導する

「ここからミスリルが出始めるってだけで

ミスリルが沢山取れるって訳じゃない

量を取ろうと思うなら下にどんどん下に行った方がいい

とはいえ、15層より下に行くとミスリルは出難くなるんで難しい所だな」

ゴゴゴ…と時折、地鳴りのような音が聞こえチャーリーは辺りを見渡す

「恐らくサンドワームだろう」

そんな彼女に音の正体をデリックが教える

「虫?」

「ご名答!この音はワームの掘り進む音

…近くにいるってことだ」

チャーリーは取り敢えずで持っている短剣を構え身構えた

「ぼうず、サンドワームは魔物ではあるが、言うほど危険じゃないし攻撃的でもないんだ

見た目は最悪だし急に出てくるから心臓には悪いけどな」

そう言った矢先、頭上の岩肌を食い破ってサンドワームが飛び出してきた

見た目はオニイソメをもっとトゲトゲしくした感じであり

トイレットペーパーの芯くらいの太さのあるそれは1mほどの長い虫であった

「うわっうわっうわぁああ!!?」

そのビジュアルにチャーリーは悲鳴を上げる

しかし、セシルもクレールも特にサンドワームを攻撃することはなく

サンドワームの方も、数秒のたうったかと思いきや

出てきた時と同じく壁に穴を開けて姿を消してしまった

「なんで!?」

「奴ら、土や岩を食って進みながら排泄してる

サンドワームが進んだ場所はアイツらの排泄物でより硬くなる

奴らが居なきゃトンネルの硬度が低下するから基本的には殺さないのがマナーだ」

デリックの説明で言いたいことは分かるが

見た目が嫌過ぎたのか、チャーリーは信じられないという顔をした

現にデリックの言う通り、サンドワームが出てきた穴は奥行き5㎝程しかなく

入って行った穴は痕跡すらない

壁の中が虫食いだらけにはなっていないという事だ

「ぼうず、俺達の敵はあっちだぞ」

クレールが指差した方には岩が数個転がっているだけだが…

彼は見てろと言うと、ハンマーを構え静かに近付き

その岩を割る勢いで叩いた

「ぐぎぎぎ!!」

すると岩から甲殻類の爪と足、目が生え泡を噴いた

「見ろ!岩ヤドカリだ!」

殻部分である岩をクレールの一撃で凹ませた岩ヤドカリが向かってくる

斬撃が通り難い相手だが、セシルの方が倍以上格上だ

関節部分の弱い箇所を的確に狙い

そんな岩ヤドカリをあっという間に沈黙させた

「すっげぇー!!」

感嘆の声を上げるチャーリーに満更でもなさそうなセシルに

デリックは釘を刺しておいた

「岩ヤドカリの爪は強靭だ、挟まれれば簡単に大腿骨だって折られる

…油断するなよ」


6層の奥へ進み魔物を何体か倒し

鉱石も幾つか入手した頃

奥から足音が複数近づいて来るのが聞こえてきた

これに対してクレールは口に人差し指を当てた

「情けない話、あの大災害以降賊が増えた

フルールは勿論だが、人が人を平気で殺す

今では坑道で出会う者は全て敵だと思うようにと国からおふれさえ出る始末だ」

「…どうする」

「やり過ごすのが一番だ」

相手が敵と決まった訳ではない

盗賊だったとしても人間を相手にするのは寝覚が悪いというデリックの意見で

4人は身を潜めこれをやり過ごした


「…さあ、進みますか

この先にミスリルの鉱脈があった筈」

再び先導を開始したクレールの後に3人は続き、不意にセシルが言葉を発した

「…そういえば、ずっと気になっていたが

お前、フェルゴンだろ…」

セシルの言わんとする事を察したクレールは態とらしい満面の笑みで彼を見た

これにデリックはマズイと間に割って入る

「すまない!許してくれ!

言い訳にしかならないが、連れは生まれてこのかた国外に出た事が無くて

更に生まれも育ちも貧しい村

世界をこれっぽっちも分かっちゃいない!

まさかここまで無知だとは俺も知らなかった…申し訳ない!!」

大袈裟なほど頭を下げ平謝りするデリックに、セシルは面食らった

「…な、なんなんだよ…」

そんはセシルの様子に、まあ…とクレールは腕組みをしてこれを許した


「ベアと一緒にされていい気分ではないが

旦那方は大事な客でもある

俺はマーゲイ人だから寛大だ

無知ゆえの言葉なら一度くらいは多めに見れるさ」

そう言った上で、クレールは二度と失言が無いようにと事情を話す事になる

マーゲイの人口の殆どを占める人種フェルゴン

人間の中では一番筋肉量が多く身体能力の高い人種になる

その一方で魔力の扱いは下手であり

排他的でプライドが高く、最も野蛮な人類と言われているが…

「その評価はベアの連中のせいだ

マーゲイに住んでるフェルゴンは

大昔にベアに追い立てられた人々だ

過酷で何もないと思った土地に、俺達の先祖を追いやったんだよ奴らは」

フェルゴンであっても同じではないとクレールは言った

「だから“フェルゴン”だからってニュアンスの言葉は言わない方がいいぜ旦那

俺はフェルゴンじゃなく、マーゲイ人だ」

「…あぁ、悪かった

次からは気をつける」

セシルも謝って、クレールも引き続き案内を続けてくれると言ってくれ

デリックは盛大なため息を吐く


しかし、何かのスイッチが入ったのか

この後クレールは宿に戻るまでの間

延々とベアが如何に酷い連中かを語りまくった…


「今日の探索でミスリルが約500gか…」

宿の部屋に戻ってきたデリックは直ぐに

今日入手した鉱石の精査を始めた

ミスリルは軽いので500gといっても、見た目にはそれなりの量になる

チャーリーは6層の探索で疲れ切って、もう寝床で寝息を立てていた

「…どうなんだ?」

「あ゛?…まあいいんじゃないか

質は悪くないから7割くらいは取れるだろ」

取れる量というのは精錬した後のミスリルインゴットの事を言っている

「ある程度取れたら、信用できる工房に精錬を依頼する

そんで、ドックを借りて船をぶち込んで…」

「…2週間で終わるかそれ」

「アタッチメントの図面は出来てるし、工房も宿の主人に既に繋いでもらってる

後はあんたが頑張ってくれたらいけるはずだ」

要するにミスリルを手早く大量に見つけるのが肝だと言いたいのだろう

「…俺頼みかよ…」

「いや、言うほど他人には期待してない

鉱脈を見つけるのも掘り出すのも

俺が一番上手いしな」

「そこは期待しろよ!」

セシルはヘソを曲げてしまった

明らかに怒っている彼に、デリックは見ていた今日採掘したミスリル鉱石を放り投げ

セシルは投げられた鉱石をキャッチする

「あんただけだよ

こんなに長い時間背中を預けている相手は

…じゃ、な、俺は寝るから」

部屋を区切るついたての向こう側へデリックの姿は消えた

「…何だよそれ…

チッ…可愛くねぇな…」

言ってから、モヒカンの年上の男に対して可愛いも何もないかと

セシルはポケットから煙草取り出し

肺を紫煙に満たすために、宿の外へと出たのだった

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