案内人クレール
トアイフォースでの今後の計画を話す
「強度は欲しいがアダマントだと重い
なので今回はミスリルを集めたい」
この町の底の方には幾つもの坑道があり
そこへ入ってミスリルを大量に集めるのが目的だとデリックはいう
「…集めるったってどのくらいだ?」
「あればあるだけいい」
2週間は滞在する予定らしく
その間に手に入った鉱石は余分な物は換金するという
「俺、鉱山なんて入った事ない…」
チャーリーは不安そうにいう
「…魔物も出るだろうし、一度ギルドでこいつのレベルを測ってもらった方がいいな」
「それもそうだな、坑道でダンジョンに迷い込まないとも限らない」
明日は先ずギルドに寄り
それから坑道へのアタックをする事に決まり
その日は就寝した
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「おはよう旦那方!
今日何処に潜るつもりだい?」
出掛けようと部屋を出ると
宿屋の主人が冒険者の装備に身を包んだ状態で宿のカウンターに待っていた
「ミスリルが採れる階層までおりるつもりだ」
「ミスリルとなると…大体6層より下だな
…よし任せろ!」
こっちだと言い急にパーティーに加わってきた宿屋の主人にセシルは顔を顰めた
「…おい、デリックコイツはなんだ?」
「あ゛?ああ、この国の宿屋の主人ってのはガイドもやってるんだ」
「おっと…すまないな、久々の客で舞い上がって自己紹介も忘れちまってた
俺はクレール・ゲルシェ、レベル47の戦士だ」
人の良さそうな宿屋の親父はニカッと笑い、毛量の少ない頭をピシャリと叩き自己紹介を済ませた
クレールの案内のもと、トアイフォースのギルドに寄る
ギルドも例外なく崩落に巻き込まれた様だが
冒険者達が自分たちで再建したらしく
新しいギルド長の元で運営が行われていた
「レベル4で適正は後衛だってさ」
ギルドのレベル認定試験を受けて戻ってきたチャーリーは納得いかない感じでいう
レベルが5より下の場合、ジョブは付かない場合が殆どだ
彼女はそれが不満だったらしい
「ぼうず、気にする必要ないさ
そいつはつまり何者にもなれるって事だ!」
クレールに言われ少し機嫌を直す
「後衛適正ってことは、俺が教える事になるのか…」
デリックはやれ面倒だと言わんばかりの顔をする
「…お前は何になりたいんだ
いや、どんな事ができるようになりたいんだ?」
「お兄さんはどういうジョブなんだ?」
聞き返されセシルは少し考える様にしながら答える
「…狂戦士だ、ベルセルクとかバーサーカーとか言われるやつ」
「お兄さん狂ってる様には見えないけど
戦士と何が違うんだよ」
セシルは眉間に皺を寄せた
するとクレールが足りない部分の説明をしてくれた
「狂戦士は戦士の上位職だな」
ジョブはギルドで冒険者達に割り振られるタグである
仲間を探すときに必要なスキルを持った相手とマッチングしやすくする為の物だ
「ジョブは基本職と上位職がある
基本職は戦士、射手、アシスト、ヒーラー、魔法使い、テイマーの6つに分類されてる
最初は誰でもこのどれかに割り振られるんだ」
そして、経験を積みレベルを上げていく過程で個性が伸びてくる
その個性の部分がスキルと呼ばれ
それを極めると上位職として認められるのだ
セシルで言うのなら狂戦士の“狂”の部分がそれになる
「…別に俺の頭がおかしい訳じゃねぇぞ
俺の戦闘スタイルから、育ったスキルが捨て身なだけで…」
セシルのスキルは体力が減る程、自己強化されるものや
自分の生命力と引き換えに強力な一撃を放つものが揃っている
強力だがなりふり構わず倒れるまで戦う
それが“狂戦士”なのだ
「早死にしそうなジョブだ…」
「…別にさっさと死にてぇと思ってるから構わねぇよ」
兄さんは?と聞かれてデリックは自身を抱くように腕組みをした
「冒険者としては一応“射手”だ
使う武器が特殊だから“銃士”で通してるがな」
遠距離型の戦闘ジョブで、扱う武器が銃という特殊な得物だから彼は自身を“銃士”というが
わざわざ一応と付けられたのには理由があり
デリックは色々な基本職のスキルを満遍なく持っていた
「俺は射手だがタイプはどっちかっていうとアシストなんだ
まあなんだ…実は複雑なんだよこういうのは」
「その“銃士”は上位職なのか?」
「いや、銃を使う射手ってだけだな
俺は本業は冒険者じゃないから
上位職に成る程ソッチのスキルは積んでない」
なんだそれとチャーリーは変な顔をする
おじさんもそう言うこと?と聞かれたクレールはそうだよと頷いた
「俺は戦士のジョブを振られているだけで
本職は宿屋の親父で案内人だからな!
戦いのスキルは露払い程度さ」
チャーリーはうーんと唸り声をあげた
するとこのギルドのギルド長が数冊の本を持ってやって来た
「別に聞き耳を立ててた訳じゃないが
今後のジョブに悩んでるって聞こえてね
ここに後衛職の初級本が何冊かある
興味があるならあげよう」
「えっ、タダで?」
「ギルドも沢山の仲間を失ったからね
新しい冒険者は大歓迎さ
特に君みたいな伸び代のある子供には希望が詰まってる」
魔術本と錬金術本、罠師の合計3冊の初級本を受け取った
試しにページをめくってチャーリーはうへっと声を上げた
どの本も文字が小さく、ページはびっしりと字に埋め尽くされている
「俺、あまり難しい言葉は読めない…」
「難しい言葉?」
「…いや、ごめんなさい、字が読めない」
チャーリーは家族が生きていた時も決して裕福な家庭ではなく
どちらかといえば貧困層であった
その為に勉強らしい勉強もせず、物心ついた時から両親の仕事の手伝いをしてきた
なので、喋れても読み書きは出来ないのである
これはそう珍しい事ではない
セシルの出身も彼女に似たようなものであったが、たまたま彼を数年引き取った叔父が
文字の読み書きが出来、それを教えてくれていただけであるし
デリックに関しては、豪商の息子なので
一通りの教育を受け教養もあるというだけ
スノームースの識字率は高くはなかったのだ
「…戻ったら少しは読んでやるよ」
「ホント!?兄さんありがとう!」
セシルとチャーリーは勉強の約束をして、一行は更に穴の奥に降りていく
カゴに乗って降りていく中で
この先についてクレールから説明が入る
「上位職が1人居るってのは強みだが
そのぼうずのレベル的にいきなり6層から始めるってのは
あんまり賢いやり方じゃないと思う
今日のところは先ず1層から
採れる鉱石の種類はゴミみたいなもんかも知れないが人の命の方が大事だ」
隊列としては先頭に案内人クレール、次にセシル、チャーリーを挟みデリックが殿を勤めることになった
「1層の敵っつたら、コールタールって呼ばれてるスライムだ」
それは真っ暗で粘度の高いスライムで引火性があり、爆発する危険性を孕む魔物だ
戦闘に置いて火気の使用は厳禁である
「こいつは毒性も高い、天井に引っ付いてる事もザラにある
肌に直接触れないように気を付けるんだ」
面倒臭い割にリターンの少ない敵として
嫌われているコールタール
クレールは見かけても避けて無視していいとアドバイスをした
そうして、ハコは第1層に到着した…




