表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

鋼鉄の国マーゲイ

必要な物の買い足しを済ませ

ヴィルポートを出航したのは、3日後の事である

「…随分と長居したな」

操舵室から離れていく港を眺めセシルは呟く

「一人分の通行証を発行するのに少し時間が掛かったんだ、仕方ないだろう」

「…通行証?」

通行証は所謂パスポートである

本来なら発行に1ヶ月はかかる所をデリックは3日で手に入れているが

スノームースから出たことのないセシルには分からない事である

「ああ、あんたの分は事前に用意してあったから問題無かったんだが

1人増えたからな…安心しろ非合法なやつじゃない正式な通行証だ」

見せられたのは3人分の通行証

そのどれにも“スノームース”と書かれ“カルネウス家”の紋章が入っていた

「…スノームース王の紋章」

「ニュクテリスはまだ国として幼い

そんな国の発行した通行証よりも

大国スノームースの通行証の方が安心だ」

スノームースの王、エドリックはニュクテリスの王、ルッツと友人であり

彼に会うために度々ニュクテリスを訪れる

その時に通行証の発行を頼んだという

「ニュクテリス?

お兄さん達そこから来たのか」

10歳前後のチャーリーは最近の時事については全く知らないらしく

へえなんて言いながら話を適当に合わせているようだった


「ああ、そうだ…マーゲイで船を改造する

その為に暫く滞在する事になる」

「…魔族どもがこの船を無敵の戦艦にしたんじゃないのかよ」

デリックの今後の予定にセシルが疑問をぶつけると

彼は何故改造が必要なのかを説明し始めた

「まず、ニュクテリスでは船を作る段階で使える素材に制限があった」

島国でしかも最近出来たニュクテリスには、植物の素材に溢れてはいたものの

鉱石系の部材は非常に少なくあまり入手できなかったのだ

その為、デリックの船には

重要なエンジン部分などにしか金属は使われておらず

その金属にしても、彼が考えていた種類の物ではないのである

「確かに、学者達は船の性能を木造船にはあり得ないくらいに上げてはくれたが

それじゃ不十分なんだ」

マーゲイからアライバルへ行く為の航路には岩礁地帯を通過する必要がある

「船がいくら鋼鉄の様に硬くても、岩礁を破壊は出来ないだろう」

「壊して進む気なのか!?こんな小さな船で!?」

あり得ないとチャーリーはいう

彼女は岩礁が無い航路はないのかと聞くが

岩礁地帯がない北側へ回り込もうとすると

潮の流れが複雑で早い場所があり、渦潮も頻繁に発生する事でかなりの難所になる

なら南側はとなると、こちらはドラゴンハイブから嵐が頻繁にやってくるので

それはそれで難破する危険があるとデリックは言った

「だったら岩礁をぶち壊して進むのが一番楽だと思わないか?」

「…思えねぇよ」

はーっとデリックは長い溜息を吐いた

「俺は操舵士じゃない!!技術士だ!!

船の運転にテクニックを求められても困るんだよ!

それよりも船を改造する方がずっと楽なんだ!!」

デリックの技術士として腕が確かなのは

セシル自身、身をもって知っている

「…まあ、そういうことなら仕方ねぇよな」


数日の船上生活を経て、マーゲイの港町トアイフォースに到着し

入港した際に3人分の通行証を見せ、やっと波止場に入る事が出来た

「ヴィルポートよりは活気がないけど船はやたら多いね

てか、すげー暑い陽射しヤバくない?…喉乾いた…」

船が流れてしまわないように下船の準備をしながら、辺りを見渡すチャーリーが汗を拭いながら感想を述べる

「マーゲイは国土が狭い上に、ベアに接してる

船がなきゃ他の国とのやり取りが出来ないからな

だが、この国の主力産業は漁業じゃない」

デリックはいつものように涼しい顔をしているが彼も額から幾つも汗を滴らせている

荷物を背負い、落とし戸と操舵室に厳重に鍵を掛け

暑さで死にそうになっているセシルに行くぞと声を掛けた


全体的に茶色い港町を形作るのは木ではなく“鉄”である

鉄のゲートをくぐりマーケットに入ると

そこで売られているのは基本的に鉱山資源であり、魚や野菜などの食品も置いてはあるが数は少なかった

デリックはそんなマーケットに目もくれず通り過ぎて行く

「え、ここで船の材料を買うんじゃないのか?」

「そんなもん全部買ってたら資金が尽きるだろうが」

「…どうでもいいから、涼しい場所はねぇのか?

頭が痛くなってきた…」

ハァハァと喘ぐように呼吸をするセシルは寒冷地に住むハイフロリア人である上に

ウェアウルフの特性が上乗せされ、特に熱に弱いせいで人一倍辛そうである


急にピタリと足を止めたデリックの背中にチャーリーはぶつかって一歩下がり

急に止まるなよ!と文句を言った


「マーゲイではよそ見して歩くなよ」


3人の目前には深く、対岸に立つ人がやっと認識出来るほどの広い大穴が広がっていた

「…やばっ…」

一応、申し訳程度に穴の周りに柵が設置されてはいるが

腰ほどの高さのそれを越えるのは簡単な事だ

落ちればまず助からない深さの穴にチャーリーは足がすくんでしまった

「…噂には聞いてたが、コイツはすげぇな」

地表にはあまり草木は生えておらず乾燥していて、地面が剥き出しな茶色い大地であるが

穴の中の途中には緑があちこちに見えている

「この地方は、昼間は極暑で夜は極寒

空気も乾燥してて地上は地獄だ」

看板のある場所に下へと続く長い階段を見つけてデリックが降りる後に2人も続く

穴を下に下に降りるほど暑さが気にならなくなっていき

空気の乾燥もマシになった気がした


20分くらい階段を降りたところで

ハコと呼ばれる縦方向に動く機械が現れた

デリックがそれに躊躇なく乗るので

2人も続いたが、チャーリーは外が丸見えで床も金網になっていて下が見える

そのハコが怖かったらしくセシルの腕に捕まった

ハコはガコン!と一度大きく揺れ

「わあぁつ!」とチャーリーの悲鳴を合図に降下を始めた

「…へぇ、便利だな

俺は下まで階段を延々歩かされるのかと思ってた」

「はっ!そんなまさか!」


穴の大体中層くらいまで一気に降りた3人は

地面の中に伸びる横穴に進む

その先にあったのは潰れた何軒かの店、家、そして宿である

先の大災害であちこち崩れていたが

宿屋は機能しているらしく、中に入ると宿屋主人が対応してくれた

「いやぁ、旅人なんていつぶりだろうな

世界がこんな状態だから

もう明日にも宿屋なんて畳んで炭鉱夫にでもなろうって思ってたところだよ」

地中に掘った大穴の中に、更に横穴を掘って暮らしていたマーゲイの国民達は

ニゲラと大地震でかなりの数が魔力あたりと崩落により命を落としたという

「何もおもてなし出来ないけど

鍵とベッドだけはちゃんとある

ゆっくりして行ってくれ」

そう通された部屋は、半分が崩落により潰れており本当にベッドしかなかった

だが、宿屋の主人の感じを見る限り

他の宿を探す方が大変だろうという事で

暫くのベースはここに決めたのだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ