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ロケ・レセンデス

カウンターにアライバルの地図を広げ、デリックは計画を話す

「ヘリッシュパインで人を捜したい」

「…それって昨日言ってた奴か?

どうしてそんな場所に?」

アルヒッパは眉を顰めながら、デリックがこれから向かおうとしている場所についてより詳しい情報をくれる

「ここから徒歩で約10日、クリーパーでも7日

途中で原生林と山を一つ越えないと辿り着けないし

ヘリッシュパインは深い谷底にある

場所によってまちまちだが、出現する魔物のレベルは過去の報告最高値で56レベル

勿論道中にはフルール、人間、メルザーガの悪党も潜んでる」

ソイツは確かにそこに居るのか?とアルヒッパは念を押した

それほどにこれから目指す場所が困難な場所なのだろう

「ヘリッシュパインには人間はいるか?」

「居るわけがない

よっぽど物好きな冒険者か、あんたみたいに理由が無きゃ誰も行かない」

「…魔女は?」

「居るかもな」


「一先ず1ヶ月、同行してほしい」

側で黙って聞いていたロケにデリックが言うと、彼は無言のまま頷いた

「いいのか?ロケ…

長期雇用が欲しいのは分かるが

この依頼はかなり難易度が高い」

デリックはともかくとして、自衛の出来ないチャーリーを危険な場所で守らなくてはならない

「途中で見つけた物、自分の物?」

「好きにしてくれ」

ロケはデリックに片手を差し出し

2人が握手を交わすことで契約が成立した


ヘリッシュパインに生い茂る樹木の根元に降り、深い谷底での探索を目的としている為

クリーパーを3頭借りる事にした

これは騎竜として公認されている“バーンクラック”の改良種で

アライバルでのみ運用されている種だ


四足歩行で幅の広い分厚い翼と、強靭な筋力を持つ大型のバーンクラックの翼は完全に退化し消失し

代わりに鋭利な鉤爪とその筋力で、アライバルの木々や切り立った崖をスルスルと登ることが出来る

元はドラゴンなのだが、その見た目は大きなトカゲ以外の何者でもない

チャーリーは馬にも乗ったことがなかったが、このクリーパーはリーダーに追走する習性があるので特に問題はないだろう


ロケをパーティーに加え

直ぐにヘリッシュパインを目指す

1日目はまだ街と街とを繋ぐ主要道路を移動するに止まったので何ら困難な事はなく

暗くなり始める少し前に、路肩で野営の準備に入った

舗装された道路の直ぐ隣は巨木の根本

地面は普通の樹木の倍くらいのサイズの枯れ葉に覆い隠されている

そこへ足を踏み入れると、フワフワとした浮いたような感触が足の裏に伝わり

その奇妙な歩き心地に、チャーリーは妙な気分になった

「なにこれ面白い」

調子に乗って歩き回る彼女を目の端で見ながら、デリックは簡易テントを張る

「楽しいのは分かったが気を付けろよ

底なしだったりするからな」

言った先から悲鳴をあげてチャーリーは地面の中に吸い込まれるように姿を消した

整備された道を一歩外れた場所は

落ち葉が降り積もり長い年月をかけ、大量の腐葉土が蓄積しているのだが

これを食べる生き物が地面の下に空洞を作っていることがあるのだ


そんな穴から、ロケと力を合わせてチャーリーを引き上げ夕食を取る

この国では、街の外での火の扱いに対して

かなりシビアであり

その辺で焚き火をしようものなら捕まってしまうリスクがあるので

主食は火を必要としない長期保存用の堅焼きパンだ 

「ボソボソしてマズイ…」

「旅の食事なんてこんなもんだ、慣れろ」


主要道路の脇とはいえ、魔物や盗賊に襲われる危険性がある

アライバルには背の高い木々が密集して生えている為

自然の明かりが届きにくく、整備されていない場所になると昼は薄暗く夜の闇は濃い

チャーリーは既にテントで眠りにつき

見張りの為にテントの外に座っていたデリックの隣にロケが座った


「交代の時間まであと4時間はあるぞ」

「分かっている」

ロケはそういいながら、マジックバックから紙の包みを取り出し開き

黒い丸薬のような物が数個露わになった

「暗視の薬、必要か?」

「…いや、気持ちだけ貰っておく」

「やー、何故人捜し?子供と2人で」

どこか辿々しく、片言で話すロケは

無口というよりこの国の言葉に慣れてない感じだった

なので、デリックは少し考えてから

スノームースの公用語を使い、次に故郷のラウリシルバの公用語を使ってみたところ、彼はそれに反応し

その言語で流暢に話し始めた

「ハーウェーだからもしかしたらと思っていたが…改めて宜しくロケだ」

彼の話では、この国に来たのは半年ほど前との事だそうだ

グランマークというラウリシルバにある小さな国から

スペリアラのラビフィールドを経由し、航路でアライバルまで来たが

目的の国ランタナまで行くのに、ウィスティグロウと呼ばれる場所を通っている時に

世界を壊滅状態にしたあの災害に見舞われたという

「幸か不幸か…

その時に居たウィスティグロウは場所柄、魔素の充満する森だ

対魔素用マスクを付けていたので、魔力あたりは起こさなかったが…」

ニゲラでは魔物が湧く

スノームース周辺では、ある一定のレベルを越えた魔物や魔獣達がエルコライルホルンを目指した為に

今回はそちらの被害は少なかったが

アライバルでは通常通り大量の魔物が湧いた

「パーティーは壊滅、商団は魔物の腹の中…私と魔術師が生き残り

辛くも森の先の街へ逃げました」

魔物達から生き延びたのも束の間

次に大震災が起こり、何処かから出火した炎で街は瞬く間に火の海に包まれた

アライバルの建物は軒並み木造で、その周りも木々に囲まれ

地面は落ち葉に埋め尽くされている場所も少なく無い

炎に包まれ阿鼻叫喚の最中、再び逃げ出したが

仲間の魔術師は身体の半分以上に重症の火傷を負ってしまい、亡くなってしまった

迫る炎や魔物から必死で逃げながら、1人ニュルビニーまで戻って来て今に至る

生き残った彼も、身体の至る所に火傷のケロイドが痛々しく残っているという

「今は燃え盛る炎こそ見えないが

その一帯はスコーチウッドと呼ばれ

炭になった大木や地面がまだ燃え続けていてとても近付けない場所だ」

「グランマークには帰らないのか」

「…恐ろしくて戻れない」

故郷も酷い有様だろうというのは簡単に想像がつく話だ

現に彼の親類はこの半年、誰1人として彼に連絡を返さなかった

いや、もう返せないのだと思うと

その現実を受け入れられる気がせず、帰ろうとは思えなくなってしまった

「今あの辺りがどうなっているか知っているか?」

「悪いな、俺はもう長いこと故郷には帰ってないんだ」

そうか、とロケは俯いた

「…この土地で、世界に自分1人だけ残されたような孤独感に苛まれていたが

あなたが同郷の者だと分かっただけで、少し救われた気分になった

捜してるその人、見つかるといいな」

テントへ戻っていくロケを見送り

デリックは木の葉が風に騒めく音や遠くで聞こえる様々な音に耳を傾けつつ

久しぶりに故郷に想いを馳せた…

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