表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

釣り

「…やった!やったー!!」


出来立てのダンジョンの最深部でチャーリーが初めて初歩的な宝箱の解錠に成功した時

デリックもまたアタッチメントを完成させた


「世話になったな」

「此方こそ、マーゲイに来た時は次もウチを選んでくれよな!」

上機嫌なクレールはわざわざ3人を港まで見送りに来てくれ

出航する船が見えなくなるまで

暑い波止場の先端で手を振っていた


遮るもののない船の甲板は、照り付ける日差しのおかげで焼けるように暑い

セシルもチャーリーも船室に籠りやり過ごす事になる

「つまんない」

デリックが作ってくれた仕掛け箱を弄り回しながらチャーリーは共用スペースのソファに寝転がっていた

セシルはマーゲイで今朝手に入れた新聞に目を通しているが

そう面白い話題もなければ、何回も読み返すようなものでも無く

食卓に投げ出し、椅子に背中を預けた

特にやることのない2人にとって、船上生活はとにかく暇な時間なのである


ガタンと落とし戸が開く音がして2人はそっちの方を見た

見ればデリックがいる

「…お前操縦は?」

「自動化した」

デリックが言うには、元々ニュクテリスの学者達がその術式を組み込んでくれてはいたらしいのだが

材料不足で今まで機能していなかったのだという

「11層でリィタルが手に入ったろ

アレでやっと完成したんだ」

風の魔素が凝縮し硬化した物質であるソレを事前に組み上げた術式に合わせる事で

目的地まで自動走行をするらしいが

時々、航路を外れていないかは確認する必要はあるらしい

「…へぇ、じゃお前は船の操縦から解放されたのと同時に俺らの仲間入りをしたって事だな」

セシルとチャーリーがニヤッと笑う

「残念だが、構ってはやれないぞ

俺は書きたい図面が山ほどあるし

船や武器の調整もある

あんたらと違って暇じゃないね」

デリックはそう言って部屋に入って行ってしまった

「…チッ…何だよアレ」


結局暇を持て余したセシルは船内で延々と筋トレを繰り返し

チャーリーは仕掛け箱を弄くり回して日が暮れた


日が暮れれば外の気温が下がる

チャーリーはここぞとばかりに釣竿を引っ張り出してきて

船上から灯りを垂らし夜釣りを始めると

何故かセシルも甲板に出て来た

「兄さんもイカ釣り?」

「…まあ、そんなとこだな」

釣竿すら持っていないが、セシルはそんな風にチャーリーに返し

何故か操舵室の屋根に登った

そして彼は海風を受けながら真っ黒な空をじっと見つめる…


時は1時間程前のこと

デリックの自室に入ると彼はまだ様々な図面を書いていた

「…飽きねぇのか?」

「これがしたくて家を出たんだぞ」

ハッと鼻で笑わられる

デリックは元々は豪商の家の息子、将来はそれを継ぐ筈だったが

機械弄りが好きだったのと、家族との折り合いが悪かった為に家を飛び出して来た経緯がある

セシルには難しくて理解出来ないが

彼の書き上げた図面はどれも美しく見えた

ふーんとマーゲイで購入したカーペットの上に寝転がるセシルに

ペンを止めたデリックがこんな事を言った

「俺はやる事がないって思ってんだろうが

日が暮れてからはあんたに働いて貰わなきゃならない」

「…何をさせる気だ?」

「アライバルはドラゴンハイブに近い

その近海に近付いてるってことは

どういう事か…分かるよな?」


ドラゴンハイブは広大な海のど真ん中にぽっかりと開く大きな穴だ

その大きさは大国スノームース程もあり、穴は魔族領に繋がっている

この穴に流れ込んだ海の水は、ドラゴンハイブ内の強烈な熱で気化し

穴の真上に巨大な雲の柱を作り続ける異様な場所である

嵐が生まれる場所であるのと同時に

この穴からは濃厚な魔素が這い上がってきている

それらに当てられた生き物が魔物化し

或いは、直接この穴から魔物の類が出入りしている事が最近判明した


「…狩りの時間だ」


魔物は昼も夜も関係なく居るが

夜の方が活発になる

操舵室の屋根の上で風の匂いを嗅いでいたセシルは、鋭い犬歯を剥き出しニィッと笑った

チャーリーが獲物を誘き寄せる為に使っている灯りに寄ってくるのは魚だけではない

魔物も灯りに寄ってくるのである


闇に紛れて“獲物”を目指して飛んできた魔物が射程に入った瞬間

セシルは武器のナイフで、およそ人とは思えないような動きで敵の翼を傷つけた

ーギャアアア!!

けたたましい叫びと共に、甲板の上に小型の翼竜が落ち、のたうち回る

「うわああああ!!」

チャーリーは驚きのあまり船から落ちそうになった

セシルは構わず翼竜の首を切り落とし、再び操舵室の屋根に登る


この船がいくら学者達によって改造されたすごい船だったとして

デリックは魔物の攻撃は出来るだけ防ぎたいのと、釣りの準備をしていたチャーリーの護衛をセシルに依頼したのだ


あまりの事態にチャーリーは震え上がり

釣り道具をわたわたと片付け始めた

「…どうした、もう止めんのか?」

「もうって…こんな中で釣りが出来るわけないじゃん!!」

「…俺が全部殺すから、お前は安心して続けていいぞ?」

「そういう問題じゃなくない!?

大体、こんな騒いだら魚だって逃げるし!!」

「…じゃあいつ釣るんだ?」

昼間の猛暑では魚を釣る前に人間がダメになってしまう

一応、ヴィルポートやトアイフォースで買った保存食があるにはあるが

新鮮な魚は貴重なビタミン源である

「…絶対に安全…か?」

「必ず守る」

何度も見たセシルの実力は確かだ

チャーリーは観念したのか、釣り道具片付けるのをやめ

イカではないものを釣ることにしたらしく灯りを消した


そうして3時間ほど釣りを試み

度々セシルが切り落とした魔物に悲鳴を上げながら

何とか大きめのタイを2尾手に入れたチャーリーは逃げるように船室に戻って行った

これで船上に残されたのはセシルだけとなる

「…ここからが本番だ…」

月明かりの元、セシルの全身の毛が逆立ち

その影は普段よりも一回り大きく膨らんだ

そしてチャーリーは最後まで気が付かなかった

この船の真上で獲物を狙い旋回を続けていた多数の魔物達が一斉にセシルに襲い掛かったのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ