表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイドライブ  作者: 碗古田わん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/117

第六十五話「女王決戦、クイーンズカップ本戦」

木星圏の空は抜けるように青く、クイーンズカップ本戦の朝を祝福するかのようだった。


観客席は満員御礼。

女子限定戦最高峰のこのレースに、誰もが胸を躍らせている。


「ノンちゃん、準備はええか?」

ミオがマイク越しに優しく声をかける。


「……はい、大丈夫です……!」


フリアノンは深く息を吐き、落ち着いた瞳で前を見つめた。

その視線の先には、すでに集中を高めるクロエの姿がある。


(クロエさん……絶対に勝つ……!)


スターターの旗が上がる。

静寂が張り詰めた。


そして――。


「レディ……ゴー!!」


一斉に念動力が放出され、光の軌跡が走路を照らした。


クロエは得意の先行策で、スタート直後から集団を抜け出す。


「クロエ、いい位置よ!」

ナビゲーターの九条玲那が叫ぶ。


「わかってるわ!」

クロエは冷静に空間を切り裂く。彼女の美しいフォームは周囲を魅了していた。


一方、最後尾からスタートしたフリアノンは、静かに、だが確実にスピードを上げていった。


「ノンちゃん、恐がらんと前に進むんや! 自分を信じて、空気の流れを感じるんやで!」


「……はいっ……!」


ミオの声が背中を押す。

フリアノンの瞳が鋭く輝き、青白い念動力の光がさらに強まる。


最終コーナーを回ったとき、クロエはすでに単独先頭に立っていた。


「いける……このまま……!」


玲那の声が震える。


しかし――


「ノンちゃん、今や!!」


ミオの声が響いた瞬間、

最後尾にいたフリアノンが一気に重力を置き去りにする加速を見せた。


「っ……何……!?」


玲那が絶句する。

クロエも背後から迫る轟音と風圧に戦慄した。


(そんな……こんな勢い……!)


直線半ば、フリアノンはクロエにあっさりと並び――

そして、次の瞬間には軽々と抜き去っていた。


「いやっ……やだ……やめて……!」


クロエは必死に念動力を絞り出したが、その背中はあっという間に遠ざかっていく。


「くっ……ああああああっ!!」


ゴール前、フリアノンはさらに加速を続け、クロエを大きく引き離してゴール板を駆け抜けた。


モニターに結果が映し出される。


1着 フリアノン

2着 クロエ


観客席が歓声と拍手に包まれた。


フリアノンはゴール後、減速しながら深く息を吐き、涙を滲ませた。

ミオの声がマイク越しに響く。


「ノンちゃん! 最高やったで! 完璧やった!」


「……ありがとうございます……!」


そして後方で、ゴール後に項垂れるクロエの姿があった。


「……そんな……私が……あんな簡単に……!」


彼女は震える唇を噛み締め、拳を握りしめた。

その瞳には悔しさが滲み、プライドをズタズタにされた苦痛が浮かんでいる。


(どうして……私が……あんな子に……)


フリアノンは振り返り、クロエの顔を見つめた。

クロエは目を逸らし、そのまま歩き去っていった。


(クロエさん……ごめんなさい。でも……これが私の走り……!)


勝者と敗者。

歓喜と屈辱。


二人の女王候補が、静かに明暗を分けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ