第六十一話「秋の皇帝杯、決戦の時」
地球圏――秋の澄んだ空気が舞う広大なレーストラック。太陽の光が柔らかく差し込み、観客席は熱気と興奮に包まれていた。
フリアノンは深く息を吸い込み、ナビゲーターのミオさんと共にスタートラインに立っていた。4歳となりシニアの域に入った彼女は、今年春に皇帝杯を制した経験を胸に、秋の皇帝杯での連覇を目指していた。
「ノンちゃん、ここまで来たな。無理せんと、自分のリズムを崩さんようにな」
ミオさんの関西弁が、優しくも力強くフリアノンの心に響く。
「わかってる、ミオさん。絶対に勝ちたい……」
フリアノンは小さく頷き、全身の緊張を集中に変えた。
隣のレーンには、リュミエル、ガルディアス、ラディウスの姿もあった。リュミエルはナビゲーターのユリウスと穏やかに会話を交わし、ガルディアスはシグマの鋭い眼差しに力を得て、ラディウスは玲那の声に背中を押されていた。
「スタートまであと5秒だ。集中していこう」
ミオさんが静かに指示を出す。
号砲が鳴り響き、宇宙船が一斉に加速した。
序盤からガルディアスがいつものように先頭に立ち、激しいハイスピードペースで飛ばす。彼の体育会系の根性が、レースの流れを作っていた。
「ガルディアス、また飛ばしてる……でも僕らは焦らないよ」
ユリウスがリュミエルに声をかける。
「そうだね。最後まで耐えれば、勝機は必ずある」
リュミエルは冷静にコース状況を分析しながら後方からの位置をキープする。
ラディウスもガルディアスのペースに合わせ、リュミエルのすぐ後ろにつけていた。
フリアノンは最後尾からじっとタイミングを計る。
「焦らないで、ノンちゃん。後半に全てを賭けるんだよ」
ミオさんが励ます。
「……はい。念動力も温存しないと」
彼女は内に秘めた力を温めながら、着実に集団を追い上げていく。
コーナーを何度も曲がりながら、ガルディアスとラディウスは激しいリード争いを続けたが、徐々にスタミナの限界が見え始めていた。
「ガルディアス、持つか?」
シグマが冷静に問いかける。
「まだだ、まだ逃げ切ってみせる!」
ガルディアスは根性で踏ん張るが、足取りが重くなっていく。
ラディウスも必死に追走を続けたが、徐々に失速し始めた。
その瞬間、リュミエルが間を縫うように前に躍り出る。
「ユリウス、今がチャンスだ!」
リュミエルが声を上げる。
「わかってるよ。冷静にな」
ユリウスの声は温かく、リュミエルの背中を押す。
その直後、最後方からフリアノンが一気に追い込んできた。
「ミオさん、今です!」
フリアノンが念動力を最大限に引き出し、加速を見せる。
「ノンちゃん、気ぃつけや!無理せんといてや」
ミオさんは心配そうに声をかけるが、フリアノンの決意は揺るがなかった。
フリアノンとリュミエルは激しく競り合い、ゴールラインに迫る。
「勝負はここだ!」
リュミエルが気迫を込める。
「絶対に負けない!」
フリアノンも負けじと応える。
二つの宇宙船がほとんど同時にゴールラインを駆け抜ける。
だが、僅差でフリアノンがわずかに先着していた。
歓声が会場を揺るがし、ミオさんは涙をこぼしながら叫ぶ。
「ノンちゃん、やったな!秋の皇帝杯も勝ち取ったで!」
フリアノンは息を切らしながらも、勝利の余韻に浸り、ミオさんと抱き合った。
その後、ユリウスがリュミエルに語りかける。
「よく戦ったよ、リュミエル。でもノンちゃんの勝負強さは本当に素晴らしい」
「ありがとう、ユリウス。次は必ず負けない」
ガルディアスとラディウスもレース後の疲れを見せながら、フリアノンに敬意を表した。
フリアノンは深く息を吸い込み、心の中で誓う。
「これが通過点。もっと強く、もっと速くなる……!」
秋の夕暮れがレーストラックを包み込み、彼女の新たな挑戦の幕が静かに開けたのだった。




