表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイドライブ  作者: 碗古田わん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/117

第四十八話 「皇帝杯(春)本戦」

地球圏最大のスタジアムは、朝から興奮に包まれていた。


「おおおおおおっ……!さすが皇帝杯……!」


控室に入りながら、フリアノンは震える手を胸に当てた。

場内を埋め尽くす観客。ファンの歓声が壁越しに響いてくる。


「ノンちゃん、大丈夫?」


隣でミオが声をかける。

今日はこの最高峰の舞台で、フリアノンもまた走るのだ。


「は、はい……っ……でも、やっぱり……すごくて……」


「そりゃそうよ。皇帝杯だもん。シニアの頂点を決めるレースよ」


ミオは笑い、フリアノンのヘルメットのバイザーを指で軽く弾いた。


「でもね、あんたもここに立てる存在なんだから。胸張りなさい」


「……はい……!」


◆ ◆ ◆

「スターティングゲート、オープン!」


号砲と共に機体が跳ねるように飛び出した。

全長20mを超える二人乗りのサイドール駆動型宇宙船。

その推進力の源はサイドール自身の念動力だ。


『よっしゃ行くぞ!ガルディアス!』


「おうっ!根性でぶっちぎってやるぜっ!」


スタート直後から飛び出すガルディアス。

その隣で、軽やかにステップを刻むラディウス。


『落ち着いていこう、ラディウス。焦るなよ』


「おう!任せろって、玲那!」


烈風ジムコンビは好スタートを切る。


そして――


「……リュミエル……行こうか」


『……うん……』


淡々と答えるリュミエル。

その瞳には特有のぼんやりとした色が宿っていたが、その奥に潜む力は計り知れない。


最後方からはフリアノンとミオ。


『ノンちゃん、作戦はいつも通り。後方待機から、最後の直線で全部出すんだよ』


「……はい……っ……!」


スタートから二分の一周。

ガルディアスとラディウスが先頭集団を形成し、リュミエルはぴたりと三番手につける。

フリアノンは集団後方に身を潜めた。


(大丈夫……私には……私のやり方がある……)


◆ ◆ ◆

レースは最終周回へと突入した。


『ガルディアス!根性見せろ!』


「おうっしゃあああああっ!!」


『ラディウス、ここよ!抜けっ!』


「いくぜっ!!」


二人が競る中、リュミエルは静かに加速する。


『リュミエル、今だよ』


「……うん……」


その声に応え、リュミエルの宇宙船は音もなくスピードを増した。


『……ダメだ、ノンちゃん……もう仕掛けるよ!』


「は、はいっ……!」


フリアノンは後方から一気に念動力を解放した。

機体が震える。

視界が一瞬で流れ去り、背後の世界が霞んでいく。


(……スレイ……お母さん……見てて……っ……!)


◆ ◆ ◆

最終コーナーを回り切ると、前方には既に先頭争いが展開されていた。


「っ……!」


先頭はリュミエル。

その後ろで、必死に追いすがるガルディアスとラディウス。

だが二人の息が上がっているのが遠目にもわかる。


『ガルディアス!根性っ……!』


「がっ……はっ……ぐっ……!」


ガルディアスの機体がわずかにブレた。

同時にラディウスも大きく蛇行する。


『ラディウス!?しっかりして!』


「だ、大丈夫……ぐっ……」


二人は同時にスタミナ切れを起こし、ずるずると後退する。


「……っ……今だ……!」


フリアノンは残された念動力を全解放した。

機体の重心がぐっと沈み込み、超感覚視界が一気に広がる。


(追いつける……!)


あと少し。

あと数メートル。


念動力をさらに捻り出す。


「……っ……ああああああっ!!」


光の粒が周囲に散る。

限界を超える瞬間。


『……リュミエル、抜かせないよ』


「……うん……」


最後の直線。

二人の機体が完全に並ぶ。


(……負けない……!)


そして――


ゴール板を通過した瞬間。


場内にアナウンスが響く。


『勝ったのは……フリアノン!僅差でフリアノンです!』


機体が減速し、勝利を実感した時。

フリアノンの頬を大粒の涙が伝った。


「……やった……やったよ……スレイ……お母さん……」


『ノンちゃん……おめでとう……!』


ミオの声が震えていた。


◆ ◆ ◆

表彰台の上で。


観客席から湧き上がる歓声と拍手。

その全てが、フリアノンを祝福していた。


(これが……皇帝杯……)


(……私は……ここに……立てたんだ……!)


誇りと喜びが、フリアノンの胸をいっぱいに満たしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ