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サイドライブ  作者: 碗古田わん


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第三十九話 「星々の果てへ」

年末の冷たい宇宙に、無数の光が瞬いていた。

その光の一つひとつが、今日という日を祝福するように輝いている。


ここは地球圏軌道上。

太陽系最大のレース――アースグランプリの舞台。


「……ついに、この日が来たんやな」


控え室でミオが小さく呟く。

その隣で、フリアノンは胸の前で手を組み、震える指先を押さえていた。


(大丈夫……大丈夫……私なら……できる……)


目を閉じると、浮かぶのは親友のスレイプニルの笑顔。


『ノンちゃん、あんたは絶対に強くなれるって、あたし信じてるからな!』


(スレイ……見ていて……)


「フリアノン、時間やで。」


ミオの声に頷き、ゆっくりと立ち上がる。

深呼吸を一度してから、ゲートへと歩を進めた。


◆ ◆ ◆

ゲート前。

銀河最強を決める戦いに集まった者たちの顔は、どれもが険しかった。


リュミエルはいつも通り無表情。

ユリウスが軽く肩に触れて囁く。


『行こう、リュミエル。君が勝つ。』


「……うん」


その瞳に、一切の迷いはなかった。


ガルディアスは、筋肉を震わせながら拳を握りしめる。


『おらあああああ!!今日こそこの銀河で最強ってこと証明すんぞ!!』


『吠えるな。呼吸が乱れる。』


シグマの冷静すぎる言葉に舌打ちしながらも、ガルディアスの口元は緩んでいた。


ラディウスは、ファンへ笑顔で手を振る。


『ははっ。今日は最高の日だな!』


その余裕ぶりに、女性ファンから黄色い歓声が飛ぶ。


そして、最後尾のゲートに入るフリアノン。

震える足を必死に踏ん張り、前だけを見る。


(大丈夫……私なら……絶対……!)


ゲートが閉じられた。


◆ ◆ ◆

《スタート!!》


一斉に開くゲート。

リュミエルはロケットのような鋭い加速で飛び出した。

その後をガルディアスが猛然と追い、ラディウスも軽やかな脚色で続く。


(は、速い……!)


フリアノンは最後尾でじっと構えた。

無理に追う必要はない。

いつも通り、最後にすべてを出し切ればいい。


《第一コーナーを回り、バックストレッチへ!先頭はリュミエル、その直後にガルディアス、三番手ラディウス!フリアノンは最後尾で様子を伺う!》


レースはそのまま淡々と進む。

だが、緊張感は増すばかりだった。


「ノンちゃん、焦らんといてや。まだや。」


『……はい……』


通信越しのミオの声に頷く。

だが、心臓の鼓動は止まらない。


《最終コーナーを回った!!》


いよいよ勝負所。


リュミエルが抜け出しを図る。

ガルディアスが並びかけ、ラディウスも脚を伸ばす。


《三頭の競り合いだ!!》


(今や……!)


ミオの指示と同時に、フリアノンは脚に力を込めた。

宇宙を裂くような念動力推進。

加速する身体。

風圧を切り裂き、視界が一気に開ける。


(届く……届く……届いて……!)


だが――


前方の三頭は、まるで壁だった。


リュミエルの滑らかな走り。

ガルディアスの爆発的な推進力。

ラディウスの軽快さと安定感。


(お願い……お願い……)


懸命に脚を動かす。

だが、差は縮まらない。


《残りわずか!!》


最後の直線。

リュミエルが一歩抜け出した。

ガルディアスとラディウスが並んで追う。


そして――


フリアノンは、届かなかった。


《ゴールイン!!勝ったのはリュミエル!!二着ガルディアス!三着ラディウス!!フリアノンは四着!!》


◆ ◆ ◆

ゴール後、荒い息を吐きながらフリアノンは天井を見上げた。


(スレイ……私……また……)


悔しさで視界が滲む。


それでも。


「ノンちゃん、お疲れ様や。よう頑張ったな。」


ミオの声に、小さく微笑んだ。


(まだ……まだ……私は……走り続ける……)


胸の奥で静かに灯る、消えない炎を抱きしめながら。

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