第二十七話:夏休み日常コメディ編
夏休みに入って数日。
フリアノンは朝から病院へ菊乃のお見舞いに行き、午後は墓参り、その後は近所を散歩するという、穏やかな日々を過ごしていた。
◇
その日、菊乃からお小遣いをもらったフリアノンは、地元の商店街へ繰り出していた。
「えっと……おばあちゃんにお土産……何がいいかな……。」
商店街には焼き鳥の香り、煎餅の香ばしい匂い、甘いクリームパンの匂いが入り混じっている。
初めて来たときは人混みでパニックになりかけたけど、今はなんとか大丈夫。
「……あ。」
軒先で売っていたたこ焼きが目に入る。
湯気の立つ丸いたこ焼きが、まるで宝石のように美味しそうに輝いていた。
(これなら……おばあちゃんも喜んでくれるかな……。)
そう思ったフリアノンが財布を取り出そうとした、そのとき。
「おぉ? ノンちゃんやんけ!」
後ろから大きな声が響いた。
びくぅっ!
「ひゃっ……!」
振り向くと、そこにはコテコテの関西弁で有名なフリーの女性ナビゲーター、村瀬ミオがいた。
「ミ、ミオさん……びっくりしました……。」
「ごめんごめん。けど、こんなとこで何しとるん?」
ミオはお好み焼き屋の袋をぶら下げ、いつも通り笑顔だった。
「あ、あの……おばあちゃんにお土産を……。」
「そっかそっか。ええ孫やなぁ~。ほな、これも持ってき?」
そう言って、自分のお好み焼きのパックを一つフリアノンに差し出した。
「えっ、でも……。」
「ええって。うち食べ過ぎたらあかんねん。ほらほら。」
押し付けられるようにして受け取り、フリアノンは頭を下げた。
「ありがとうございます……。」
「ええってええって。その代わり、うちにたこ焼き1個くれへん?」
「え……? あ……はい……。」
結局、たこ焼きを半分こし、商店街のベンチで二人で食べることになった。
◇
「……ノンちゃん、追い込みスタイルにもだいぶ慣れてきたやろ?」
ミオがたこ焼きを頬張りながら聞く。
「はい……でも……やっぱり、まだ……ちょっと怖いです。」
「怖いんは当たり前や。けど、怖いからこそ周りが見えるんやで。怖ないやつは、いつか足元すくわれる。」
「……はい。」
ミオは笑いながらも、その目は真剣だった。
◇
その後、二人は商店街のゲームセンターに立ち寄った。
UFOキャッチャーを見て、フリアノンは目を輝かせる。
「これ……やってみたいです……。」
「おっしゃ、ほなうちが取ったるわ!」
ミオは腕まくりをし、百円玉を投入。
だが、クレーンは景品の縫いぐるみを掴みきれず、何度も失敗。
「ちょ、これ絶対アカン設定やろ……!」
「ミオさん、がんばってください……!」
二人で肩を並べ、何度も挑戦。
周りの子供たちが羨望の眼差しで見守る中、ようやく取れたときには歓声が上がった。
「やったぁ……!」
フリアノンが嬉しそうに抱きしめたのは、小さな馬型ロボットのぬいぐるみだった。
「スレイみたい……。」
ぽつりと呟いたその声に、ミオは優しく微笑む。
「せやな……けど、スレイちゃんの分まで頑張るんやで。」
「……はいっ。」
◇
帰り道、フリアノンは戦利品を抱きしめながら歩いた。
夕暮れに照らされたその横顔は、いつもより少しだけ強く見えた。
(明日から……また頑張ろう……。)
◇
こうして、フリアノンの少し早い夏休みは、笑いと涙と、ほんの少しの勇気で彩られていった。




