第二十五話:優駿女子 – 夢を継ぐ者
地球圏軌道レースドーム。
青白い光が差し込むコース上に、サイドールたちの機体が並んでいた。
観客席の熱気は最高潮に達している。
優駿女子――中距離で最も格式あるD1レースの開幕だ。
◇
「……ノンちゃん、いけるか?」
ミオがフリアノンの肩を軽く叩いた。
「は、はい……。」
震える声で答えるフリアノン。
でも、その瞳には決意の炎が宿っていた。
(スレイ……見てて。私、絶対に……。)
◇
一方、隣の機体ではマーメルスが静かに目を閉じていた。
操縦席にはユリウスが座っている。
「さて、今日はどんな走りを見せてくれる?」
いつもの軽い口調。
マーメルスは鼻で笑う。
「黙って私を見てなさい。」
◇
――3
――2
――1
スタート!
◇
レースが動き出す。
最初に飛び出したのはマーメルスだった。
真紅のオーラを纏う機体が一気に先頭を奪う。
(やっぱり……速い……!)
後方から追走するフリアノン。
鼓動が早鐘のように鳴る。
(でも……怯まない……絶対に……!)
◇
中盤、マーメルスは独走状態に入っていた。
他のサイドールたちはついていけない。
しかし、その背後でフリアノンは徐々に加速を始めていた。
「……今や、ノンちゃん!」
ミオの声が響く。
(はいっ……!)
念動力が高まり、機体が風を切る音が変わる。
◇
最終コーナー。
マーメルスは相変わらず先頭を守っていた。
ユリウスが冷静に指示を飛ばす。
「無理はするな。最後の直線で決めるぞ。」
「言われなくてもわかってるわ!」
◇
直線に入った。
(行く……!)
フリアノンが念動力を最大限まで高める。
機体は赤黒いオーラを纏い、爆音を響かせながら加速した。
◇
マーメルスまでの差が徐々に縮まる。
(な……っ……!?)
ユリウスの表情が変わる。
「おい、マーメルス……!」
その声に、マーメルスも異変を感じた。
(……足が……!)
スタミナの限界が、彼女の推進力を奪い始めていた。
◇
後方で迫るフリアノン。
(追いつく……!追いつける……!)
差は目に見えて縮まっていく。
――あと少し。
――ほんの少し。
マーメルスが苦悶の声を漏らす。
(こんなところで……負けるわけには……!)
◇
しかし――
ゴールイン。
勝者、マーメルス。
フリアノンとの差は僅か。
◇
歓声が響く中、コクピット内でマーメルスは荒い息を吐いていた。
(……危なかった……。
あの子……本当に……。)
震える指先を握りしめる。
(次は……こうはいかないかも……しれないわね。)
◇
後方では、フリアノンが悔しさに涙を滲ませていた。
「ノンちゃん……ようやったで。」
ミオが優しく笑う。
(スレイ……あと少しだった……でも……)
唇を噛むフリアノン。
(次こそ……絶対に……。)
◇
こうして優駿女子は幕を閉じた。
勝者はマーメルス。
しかし、その背中に迫る新たな挑戦者の気配を――彼女は確かに感じていた。




