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第67話 令和13年秋場所①

横綱34場所目のコシはゆたかや時天山との十番勝負を行うなど、いつも通り部屋での調整に留めた。時津川部屋には打倒コシを掲げる横綱と大関が入れ替わりで出稽古に来ていたが、コシは参戦せず、ゆたかや時天山に代役を任せてプールに出かけていた。


「手の内はお互いに分かってるはずや。だから稽古するだけ損やん?」

「ですが、わざわざ出稽古に来てくれているんですよ?少し位胸を貸してあげても良いと思いますが?」

「向こう様の都合で勝手に来ているんだ。わざわざ合わせてやる義理は無い。それに奴等とは横綱審議委員会の稽古総見で毎場所毎場所これでもかと胸を貸している。」

「それはそうですけど…。」

「けど何や?俺が出稽古嫌いなの知ってるやろ?弱点探られるの嫌とか思うたか?」

「そうじゃないんですか?」

「怪我防止の為や。相手が関取以下の黒まわしならまだ別や。だが相手が横綱大関となると、話は違う。同じ白まわしでもどれだけ力をセーブしても、怪我をする確率は平幕白まわしの何倍にもなる。確かに勝ちたい気持ちは分かる。だがセーブして戦う稽古場と命懸けの本場所で勝手が違うのは100も承知や。それでも強い人と稽古したい。その気持ちも分かる。」


と、場所前に番付上位の力士と稽古したくない理由を語っていた横綱越乃海ではあったが、やはり、場所入りしてからのギアの上げ方は並の力士とは全く違った。初日にどんなクセモノを当てられようと、ほとんど負けない。2日目、3日目と勝っていくうちに気付けば中日給金直し。と流れるのがコシの真骨頂である。後半戦に待ち構える大関・横綱戦を考慮すると、中日給金直しは精神的な余裕を生み出す。そうやって今まで勝って来た。1日1番とはよく言うが、色々な雑音ノイズがある中で、その1番に集中するのはとんでもない精神的強さとタフネスな集中力が欠かせない。


「こし!いつまでやってる?もう寝ろ!」

「はい。」

「ったく。今は場所中だぞ?オーバーワークで、怪我でもしたらどうする?」

「すみません。」

「人一倍怪我したくない癖に四股・摺り足・鉄砲をこれでもかとやる。その根性は認めるが、まぁ良いか。充分コシは強い。小結で終わった俺の言える事なんか何も無いからな。」

「親方?それは違います。自分の白星は先代と現時津川親方に捧げるものです。」

「師匠に捧げる白星ホワイトスターか…。」

「何カッコつけてる?大したもんだよ。」

「残り20回四股踏んだら寝ます。」

「コシ関まだ四股踏んでたってよ?」

「マジか!?」

「俺達がちゃんこ食ったのがPM20時00分位だったよな?」

「今何時?」

「22時00分。」

「2時間も?」

「流石は令和の大横綱は違うな。」

「お前等も少しはコシを見習え!」

「はいっ!」

「あの位の努力をしないと角界の頂点に立ち続ける事は不可能だと言う事だ!」

「まぁ、相撲を愛していなければ、こんなに自分に鞭は打てないがな。」

「黒まわしの貴様らには良い手本だがな。」

「コシ関!?」

「お前等さえ良けりゃ稽古見てやるけど、やる気のある奴はちゃんこ食うたら、稽古場降りて来いや!」

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