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第5話 大関の意地

「大関は余計な事は考えなくて良いから、思いきりぶちかまして行ける。立ち合いの馬力で一気に勝負を決める。」

と、令和7年秋場所14日目の大関安高戦を前に心境を自信ありげに語っていた17歳は朝土俵におりて、場所終盤でありながら、四股100回、摺り足100回、鉄砲50回をこなし、きちんといつものルーティーンをこなしてから、両国国技館に向かった。若きスター候補の誕生に相撲ファンならず世間も今日の一番に注目していた。師匠からは特に平常心と集中力の2点を上げて貰った。


「コシ、立ち合いから一気に勝負をつけろ。まぁ、安高もそのつもりで来るだろうからあたり負けるなよ!」

「はい。」

越乃海の化粧まわしは、地元新潟の後援会の方々からいただいたものである。土俵入りにもすっかり慣れて、紫紺のまわしをしめる時間も遅くなって来た。化粧まわしを外すタイミングでトイレに行き用をたすのがコシのルーティーンであった。そこから準備運動を開始する。土俵入りは大体PM4:00頃には終わる為、取り組みまでは一時間半はあく。その間に体を仕上げる。兄弟子の勝大兄さんが先に取り組みを終えて嬉しそうだ。勝ち越したらしいが、全くコシは気にしない。髷が結えないコシは、床山に髪をセットして貰うと、こう言われた。

「もう少しでちょんまげいけますね。」

と言われ、

「早く大銀杏を結える様になりたいです。」

と、返事をする余裕があった。

そして、PM5:15西の支度部屋から出て来たコシは、通路に出て四股を10回踏んだ。それでコシのアップは終わった。


「コシ関?もう良いんですか?アップ。」

と、付け人の豊の里に言われたが、コシはこう答えた。

「トヨ?いつもアップは控え目にって時津川部屋の伝統があるじゃないすか?」

「そんな伝統あったっけ?」

「勝大兄さんなんかストレッチして終わりっすよ?それで大関まで行くんですから。恐るべし時津川部屋の伝統ですよ。」

「コシ関?年が違うからって、付き人の自分に敬語使わなくて良いっすよ?」

「いやぁ、そこは兄弟子に対してのリスペクトでしょ?」

「そろそろ出番ですね?」

「ああ、勝って決めてくんよ!」


既に大関安高は土俵下に控えている。パンパンと顔を2回叩いて気合を入れてから土俵下にコシも着いた。現在の取り組みは2敗の大関豪昇龍と3敗で既に優勝争いからは脱落している大関若本夏が仕切りを重ねていた。逆転優勝の為には安高、豪昇龍の2大関は絶対に負ける訳にはいかない。大関の意地を見せられるのか?土俵上には、若本夏を豪快に投げ捨て2敗を守った大関豪昇龍は既に大関安高に力水をつけている。呼び出しが安高と越乃海の四股名を呼び上げたかと思えば、既に制限時間一杯。賭けられた懸賞は60本。

「待ったなし!手をついて!」

第41代木村庄之助が結びの一番をさばく。

「はっけよい!」

コシは思いきりぶちかまして、安高を突き上げた。しかし、スルッと腰を手繰られ上手くまわしをとられた。そして安高改心の上手投げ!コシは耐えられず土俵下に転落。令和7年秋場所でコシは初黒星を喫した。これで優勝争いは1敗のコシと2敗の2大関に絞られた。安高は大関の意地を見せたが、明日の千秋楽でコシが大関豪昇龍に勝てば2連覇達成となる。豪昇龍も大関の意地を見せられれば最大3人による優勝決定巴戦となる。

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