第57話 令和12年秋場所①
横綱27場所目のコシは怪我と言う怪我もなくゆたかや時天山らと順調に稽古をこなしていた。
「で、ゆいPとはどうなっているんですか?」
「どうもこうも順調だよ。年内にも結婚しよかー?なんて軽いノリで言ったら、ゆいPはいつでも良いよ!と来たもんだ。と、まぁそう言う具合だ。」
「やったら良いじゃないですか?何も迷う事はありゃあしませんがな。」
「まぁな。ゆいPの気持ちが変わらぬうちに決めた方が絶対良いよな?」
と言う事でコシは秋場所後の2030年10月1日に行う計画を立てた。場所直後と言う事もあり、ゆいPと話し合ってこの日程になった。マスコミ各社は各界の第一人者と超人気アイドルの結婚を1面で報じた。
「マークはしてませんでした。」
と、スポ日の芸能担当デスクは語る。ほぼ、メールのやりとりだけでここまでやって来たコシとゆいP。デートと言うデートもして来なかった2人にとってはしてやったり感はある。令和の大横綱の妻になると言う事は、将来的には相撲部屋のおかみさんになる事を意味していたが、ゆいPはコシが引退したらアイドルを辞めるといや芸能界を引退すると公言した。と、まぁプライベートな事で世間を騒がせたコシとゆいPであったが、稽古は、いつも通り行っていた。
場所入りしたが、一部報道ではコシとゆいPは同棲しているのでは無いかと、フェイクニュースも流れコシの周囲はいつになく騒がしかったが、コシは、相撲に集中する様に心がけた。
初日の相手は新小結の岩泉。まわしに手がかかるとうるさい相手だが、コシはぶちかましからの突き押しで岩泉を退けた。
「なぁひかり?」
「どうしました?」
「今場所は新鋭が多い気がするのだが?気のせいか?」
「いえ。ニューフェイス候補が続々と入幕しており、いわゆる新世代と呼ばれる20歳前後の力士達が上に上がって来ています。岩泉関もその内の一人です。」
「大関・横綱候補はいるか?」
「いないと言えば嘘になりますが、現状関脇武蔵山がこの世代では1番大関に近いようですね。」
「この俺の好敵手になる様な力士はまだ出てこんか?」
「それこそ大関照の山関なんかは横綱に1番近いと思いますがね?」
「ゆたかと時天山と俺がいる限りあいつは大関止まりだな。」
越乃海は危なげなく初日から8連勝で中日給金直しをした。横綱大鵬も中日給金直し。ゆたかと時天山が7勝1敗で追う展開となった。
「武蔵山?日本人じゃねーな?」
「元横綱武蔵林の武蔵風親方がハワイから連れて来た超大型新人です。身長が2メートル11cm体重210kgの体格から繰り出す突き押しが最大の武器です。」
「コシ関よりスケールデカイじゃないですか?」
「大丈夫です。立ち合いの圧力もパワーもコシ関の方が上ですから。」
「そうか…。あっいっけね!今日ゆいPと飯食いに行く約束だった。ひかり!お前も来い!」
「マジすか?18時過ぎてますし、表はマスコミだらけっすよ?」
「19時新宿駅西口待ち合わせだから。急いでタクシーに乗れば充分に間に合う。」
「ゆいPごめん!遅くなった。」
「20分も待ったんですけど?」
「今日もしっかり奢るから許してよ。」
「あれ?ひかりんも一緒なの?」
「マスコミの目を逸らす為に付け人を利用したのさ。」
「ゆいP何食べたい?」
「焼肉!」
「オッケー。あの店焼肉屋じゃない?」
「ステーキハウス宮本。」
「あっちに牛角があるよ?」
「私、牛角の方が良い。」
と、焼肉お忍びデートをして後半戦に臨むコシ達であった。
「駅まで送るよ?」
「んん。ここで良い。ひかりんも頑張ってね。」
「は、はい。」
「気を付けてな。」