表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/104

第49話 令和11年九州場所①

横綱23場所目の越乃海は、いつも通り巡業や部屋での調整となった。この所、目に見えて力をつけている時天山は新関脇で、今場所の成績いかんでは一気に大関昇進の気運が高まる。時津川部屋もう一人の横綱豊山は何とか場所前に怪我は完治したが、稽古不足で不安が残った。勝大兄さんは西前頭9枚目で場所に臨む。


時津川部屋の力士達が福岡入りしたのは場所の10日前の事であった。博多の中心地に毎年居を構える時津川部屋も、後援会のお陰で寝食には困らなかった。


「今年も宜しくお願いします。」

時津川親方が挨拶に来たのは、後援会会長で九州支部長の山田治郎氏の元であった。

「おー。今年もきよったか。よかよか。」

「場所中はお世話になります。」

「毎年の事やけん気にせず使ってくれない。」

「早速明日から稽古やちゃんこ作りに宿舎をフル稼働させて頂きます。」

「うむ。よかよか。」

東京以外で行われる春場所、名古屋場所、九州場所は地方場所と言われ、各部屋の後援会等が中心となり、宿舎や食事のサポートをする。これは大相撲ならではである。


「太!今場所も期待してっからな!」

「治郎叔父さん恥ずかしいって。」

「何言うとばい。毎年優勝するくせに。」

治郎はコシの叔父であり、親戚であった。コシをふとし呼ばわりするのは、両親とこの治郎叔父さん位のものであり、小さい頃から頭の上がらない一人でもある。コシ(太)が角界に入る事になったのも、治郎叔父さんの勧めがあったからだ。

「いつからそんなに強くなったとばい?」

「そりゃあ、稽古と努力だよ。」

「その立派な体格は叔父さんが毎月送る博多の明太子おかげが?」

「そうなんですかコシ関?」

「何だよ、聞いてたのかよ?俺の事なんて構ってないで寝ろ!明日初日だろ?」

「確かに。」

「じゃあ太!邪魔したな。」

「え?叔父さんもう行くの?」

「場所中は何かと忙しくてな。千秋楽にまた来るよ。」

「はい。」

「謎の明太子の出所が判明しましたね?」

「あぁ、ちゃんこ長しか知らない秘密を明かされた。」

「でもとても良い人そうでしたよ?」

「越乃海の叔父さんってだけで生きてる様な人だからね。」

「まぁ、太、太って小さい頃から俺の事を可愛がってくれた恩人の一人だしな。」

「コシ関のプライベートって謎に包まれていましたけど、少し解明されましたね。」

「別に好んで秘密にしてた訳じゃないよ。相撲に集中したいからね。ただそれだけの事。」


場所入りしてからは、コシはいつも通り自分より格下の相手には絶対負けなかった。記録的な金星無配給は継続中だ。そんなコシを追う横綱大鵬も好発進。中日給金直し8連勝としたのはコシを含む2横綱と大関照の山が並んで、後半戦に入る事になった。横綱豊山は7勝1敗とまずまずの成績であった。大関取りの時天山も7勝1敗と星勘定的にはまずまずの成績であった。今場所も実力上位陣が順当に白星を伸ばす場所となっていた。越乃海包囲網が出来つつあったが、そんな事は6場所連続優勝中のコシにとってはあまり意味の無いものであった。気になるのは今や横綱や大関とりにまでなったゆたかや時天山の事であり、自分は人の心配まで出来る横綱になってきた事に充実感を覚えていたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ