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第38話 令和10年秋場所

横綱16場所目のコシは、ここ2場所優勝から遠ざかっている。まぁ、ゆたかに綱を張って欲しいと言う心が、先場所の優勝決定戦では出てしまった。


場所前は巡業や部屋での稽古を中心に特に出稽古には行かないと言う、自らのスタイルを貫いていた。もちろん、時津川部屋には沢山の力士達が打倒コシ、ゆたか、を目指すべく出稽古に来ていた。


大きな怪我も無い20歳のコシだが、強者故の悩み事もある様であった。


「親方?優勝は難しくないんですが、何を目指すべきですか?」

「内容のある相撲を取ってまずは優勝回数を20回に乗せる。とかな、自分で決めろ!もう大人なんだから?金の管理も今場所からコシに任せる事にした。いろんな意味で大人になるってこういう事だよって理解しなくちゃならん。横綱在位も約3年。もう色んな事に慣れて来ただろう?」

「そうですね。!!って言うか俺こんな稼いでたんすか?」

「まぁ、ここ2場所はゆたかに心配りしての事だろうが、もうそう言う相手もいない。もっと強く、もっと厳しく研ぎ澄ませた相撲を取れ。良いな?」

「はい!」


その時津川親方の言葉通りコシは初日からアクセル全開。ゆたかは2日目と3日目に連敗し、金星を配給してしまう。横綱越乃海の真骨頂であるぶちかましやかち上げからの突き押しや右寄つであるが、覚醒したコシは突っ張りや喉輪も覚え、完全に突き押しを極めていた。鉄砲の回数も、2倍に増やし1日500回はこなした。完全無敵の横綱が完成されようとしていた。


あの手この手でコシの連勝を止めにかかろうとするライバル達ではあったが、今のコシは無双状態にあった。止められる力士は見つからず、気が付けば14日目が終わり、全勝で千秋楽を待たずして2場所ぶり13回目の優勝を決めた。千秋楽でも勝ち、久しぶり?に全勝優勝を決めた。ゆたかは新横綱の場所は11勝4敗と序盤の連敗が響いた。コシの次点は13勝2敗の横綱豪昇龍で、コシがいなければ、優勝をしてもおかしくはない成績であった。


「もうさ、観客も見てて分かるみたいで、コシは、勝ってナンボの力士だから負ける訳無いと思って土俵を見ているの。だから、俺が勝っても喜ばない訳。分かりやすく言えば昭和なら初代大鵬、千代の富士、平成なら貴乃花、白鵬の様な絶対勝つ大横綱の仲間入りをした訳。やってる方は困るよ。勝っても当たり前なんだから?」

「優勝決定戦ともなれば違うけど、勝って割れんばかりのあの歓声はもう無いのさ。」

「良いじゃないか?コシ、大横綱の仲間入りなんてそうは出来ないぞ?」

「負けた時のヒールっぷりが半端ないっすよ?」

「良かったじゃねーか?みんな高い金払ってお前の突き押しを観に来てくれてんだよ。」

「そうですよね。主役は自分何ですよね?」

「あぁ、そうさ。ゆたかや大鵬や豪昇龍とは格の違う横綱なのさ。だからお前は今まで通りの相撲をとってりゃあ良いのよ!」


「そんな事で悩んでたのか?小さい横綱だな。」

「ですよね。」

「とにかくコシのホワイトスター(白星)が見たいのよ。その先に優勝とか、全勝優勝があると思っている。後は怪我だけしなければ、無事部屋に帰って来てくれれば、それで良いんだ。負けても良い。それはコシも人間だからな。だけど一度の怪我で相撲人生を棒に振って来た人はごまんといるんだ。それは分かってくれよ?」

「はい。」

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