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第34話 令和10年春場所②

最近は就職場所と言う言葉も死語になるほど新弟子の数は減少しているが、各部屋の親方達は工夫をこらして新弟子を獲得していた。そんな中、コシの活躍により、時津川部屋の新弟子は飛躍的に増えていた。


横綱大鵬の所属する大岳部屋でも次の横綱を目指すべく新弟子希望者が殺到していた。横綱豪昇龍の立波部屋では、中学生や高校生に力士の生活を体験させるなどして、工夫をこらして新弟子の獲得につなげていた。


さて、令和10年春場所は13日目を終えてコシが全勝。1敗で関脇豊山、2敗で2人が続くと言う展開になった。数字上では2敗まで優勝のチャンスはあるがかなり厳しい。1敗の関脇豊山も直接対決が無い為逆転優勝の可能性はかなり低いものとなっていた。


14日目の朝。

「おい、コシ!」

「はい。」

「たまには豊山ゆたかにも優勝の味を味あわせたいのだが?」

「自分にわざと負けろと言うのですか?」

「まぁ、ハッキリ言えばそうなる。」

「自分強いんで多分負けないっすよ?」

「コシ関!今場所も優勝よろしくお願いしますよ!」

「と、当の本人は申していますが?」

「ゆたか?大関昇進確実だからって優勝諦めるのかよ?」

「コシ関には勝てませんよ。それにチャンスはいつか巡って来ますよ。」

ちゃんこ番の序二段力士の時開放が優勝の副賞で貰える食材を目当てにコシに優勝が決まりそうな14日目や千秋楽のちゃんこはめいっぱいのご馳走ちゃんこを作って横綱の士気を上げていた。彼はカイと呼ばれていた。


「カイ?また負け越したんだって?」

「はい。」

「ご馳走ちゃんこも良いけど、いい加減ちゃんこ番卒業しろよ?」

「いや、否。それは困る。カイ以外の人間が作るちゃんこを自分は食いたくない。」

「コシ関が甘やかすから、カイの奴の相撲が上達しないんすよ?」

「良いんですよ。この世界に入って10年。最高位は三段目上位。良いところで怪我したり調子悪かったり。だからせめて最高のちゃんこ番長になってやろうと決めているんです。」

「そうか…。でも稽古ならいつでもつけてやるぞ?カイだってまだ老け込む年齢ちゃうやろ?」

「はい。ありがとうございます!」

「じゃあ今日も勝ってくるわ!」

と言って時津川部屋を出た。いつもの様に、雲竜型の横綱土俵入りを済ませ東の方屋へ。今日の対戦相手は横綱豪昇龍である。コシが番付を駆け上がる前は長く大関として活躍していた。ミスター8勝の呼び名が付く位横綱から最も遠い大関だった。


しかし、コシが横綱になると、目の色を変え稽古に邁進。45場所務めた大関から第76代横綱に昇進した。丁度コシが指を怪我し休場していたチャンスを逃さなかった。こうした運の良さも横綱昇進には必要だ。ただ、横綱に昇進してから1年。右膝の怪我が思わしくなく、休場やミスター8勝が続いている。それでもコシはそんな状態の悪さなど関係なく、危なげなく押し出しで勝利。これで14連勝とした。1敗で追っていた関脇豊山が大関安高に敗れて2敗に後退した事により、2場所ぶり12回目の幕の内最高優勝を決めた。


「コシ関!やりましたね?」

「やりましたね!じゃねーんだよ。俺とゆたかによる同部屋優勝争いはどうなったんだよ?」

「今場所は力及ばずでしたが、大関に昇進出来そうなので今場所はそれで良いです。」

千秋楽もコシは横綱大鵬を危なげなく突き出しで破って2場所ぶりの優勝を全勝優勝で飾った。13勝2敗に終わった豊山は3場所合計35勝-10敗で見事大関に昇進する事が確実な情勢となった。

「ゆたか?」

「はい。」

「もう一つ上の番付もあるんだからな?これで満足したらいかんよ?」

「はい。優勝します。2場所連続で!」

「お前はいつも威勢だけは良いな。」

「コシ?ゆたかも頑張っているんだ。皆お前の様にトントン拍子で出世はしないよ。」

「ゆたかならやれますよ。」

「時津川親方、自分ならやれます。」

「そうか…励め!」

「はい。」

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