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第33話 令和10年春場所①

横綱13場所目の越乃海は、先場所連続優勝を8で止められたが、冬巡業から出稽古等も精力的に行い、12回目の優勝に向けて死角は無かった。指の古傷も完治し、激しい鉄砲も打てる様になっていた。


「おい、豊山!」

「はい。分かっています。」

「大関期待してるぞ!」

「そうなると、コシの露払い出来なくなるじゃないか?」

「んなもん、他の力士でも出来るじゃないか?」

豊山は24歳。東京能業大学出身で齢はコシの4歳上である。今場所11勝以上の星を上げれば大関昇進の目安の3場所合計33勝以上となる。状態は悪くない。得意の突き押しはコシ直伝の必殺技だ。

「豊山が大関になってくれたら、俺の優勝回数も増えるな!」

「どう言う意味ですか?」

「星の潰し合いが激しくなるだろ?」

「なるほど!」

「その隙間をすいっと抜けて俺が優勝するんだ!」

「それじゃあ自分はいつまでも優勝出来ないじゃないですか?」

「まぁ、頑張って優勝決定戦に俺を引っ張り出す事だな。」

「ハードル高いっすよ?」

「所要2年間で横綱になり97連勝するよりはハードル高くはねーだろ?」

「はい…。」

「まぁ、先ずは優勝より1日1番に集中する事だな。それだけをこなしていれば結果は後から付いてくる。」

「はい。」

「コシ関、親方みたいになってますね?」

「勝大兄さんも4代目豊山を見習ってまた大関目指して下さいよ?」

「我はもう良いんだ。コシの太刀持ちが出来るだけで充分何だ。」


荒れる春場所と言われる3月場所(大阪場所)は、文字通り、横綱・大関陣が乱調になる事を表した相撲用語で、過去の春場所も荒れる傾向にある。また、関脇が強い場所は面白いとも言われており、豊山と言う強い関脇が場所をかき乱す可能性は充分にある。


そんなジンクスとは無縁の横綱コシは、初日から8連勝で中日給金直し。部屋の関脇豊山が7勝1敗でくらいついて行く。横綱大鵬は先場所の様なキレが全く無く、5勝3敗と精彩を欠いていた。横綱豪昇龍は引く相撲が目立ち、こちらも5勝3敗で中日を折り返した。大関陣は安高、若本夏、無双山がそれぞれ4勝4敗と正に荒れる春場所になっていた。そんなキリキリとした場所中でもコシは付け人の豊の里や豊山ら若手を積極的に外食に誘い大阪グルメを満喫していた。

「良いんですか?親方に怒られますよ?」

「部屋のちゃんこなんていつでも食えるしあきるだろ?どうせ金出すのは横綱の俺なんだし、気にせず食え。」

「はい。」

「たまには外食してもええんちゃうん?」

「そりゃあ大阪にいるんさかい。」

「そのかわり、部屋(宿舎)に帰ったらしっかり用意してくれているちゃんこは食うんだぞ?」

「マジかよー。」

「せっかくちゃんこ番が作ってくれたちゃんこを捨てる訳にはいかないさかいな。」

「それより、頑張ってるな豊山!」

「横綱のコシ関には敵いませんが。」

「優勝のチャンスも巡って来るだろうな。」

「いやいや。コシ関に全勝優勝されたら自分はどんなに頑張っても次点ですから。」

「まぁね。」

「ま、1番1番大事にして行けば結果は残るはず。」

「10代で横綱になった人の言葉は説得力がありますね?」

「大卒のくせに中卒の俺の言葉にどうして説得力があるってんだよ?」

「最強の横綱に学歴とか関係ないですよね。」

「まぁそれは確かだな。空前絶後の横綱だからな俺は。」

「と言うか普通に酒飲んでますけど?」

「バカ!それは部屋にも時津川親方にも内緒のトップシークレットなんだぞ?」

「バレたら叩かれますね。」

「あと4ヶ月後には20歳になる。それまでの辛抱だ。」

「はい…。」

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