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第31話 令和10年初場所①(2028年)

横綱12場所目のコシは年末年始関係なく基本動作(四股・摺り足・鉄砲)を中心に己の限界突破を試みていた。史上初の年間6場所完全制覇を成し遂げたコシの次の目標は幕の内最高優勝50回としてさらなる飛躍を目指していた。


そんなコシの独壇場を阻止するべく2横綱4大関はコシ包囲網を形成。弱点や戦法を互いに研究しあった。それが実を結ぶかは本場所の土俵で分かる。


令和10年初場所初日、コシは小結無双山戦。かち上げからのもろはず押しで一気に寄り切った。


「おいおい。どんどん強くなっているぞ?」

「大丈夫ですって。最強横綱のウィークポイントは分かっているんですから。」

横綱越乃海の弱点、それは注文相撲に脆さがあると言う事である。横綱大鵬や大関照の山らコシの入門同期が発見した。右左にずれてコシのぶちかましやかち上げからのもろはず押しを食わない。まぁ、正攻法では無いのだが、コシを倒すには徹底的に注文相撲からの速攻を磨くしか無い。それを幕の内上位力士達に共有した。


そんな事はコシも横綱であるから、これまでの様に勝つには勝ったが、立ち合いとことん変化して注文相撲をとって来るので、立ち合いの出力(馬力)を半分にし、相手を見て立つようになった。


そして、遂に歴史的な日が訪れる。令和10年初場所中日8日目大関照の山戦。立ち合いに左に動きがっぷりとコシを組み止めると、その勢いを利用し、コシが巻き変えて来るまでに勝負をつけた。コシの連勝は97でストップ。


「うぉー!!」

座布団が宙に舞いコシに苦杯をなめさせた照の山に観衆は拍手大喝采。コシは7場所ぶりに黒星を喫した。そのショックを隠せず風呂場に引き上げた。とは言えまだ1敗。優勝の可能性は全然ある。トップを行くのは横綱大鵬ただ一人。大鵬とコシは後半戦で直接対決があるだけに、自力優勝の可能性はあった。


「トヨ?どうして皆注文相撲で真っ向勝負してくれないんだ?」

「それは真っ向勝負じゃ、勝てないからですよ。聞くところによると場所前対越乃海に関する研究会もされてたみたいですし。」

「超党派でこの横綱を引きずり下ろそうと言うのか?」

「まぁ、これだけ強いとそうしたくなる気持ちも分からなくは無いですけどね。」

「トヨ?貴様この俺に負けて欲しいのか?」

「たまには負けてやらんと他の人の取り分が無くなりますからね。」

「独占禁止法は相撲界には無いはずだが?」

「とにかく、注文相撲に対処出来なきゃこの先は勝てないと言う事です。」

「俺にぶちかましやかち上げを抜いたら他に何が残ると言うのか?」

「コシ!そう言う時こそ先代の必殺技がぶり寄りを使うんだ。立ち合いは我慢して相手を捕まえろ。神の右はその為にある。変化言うてもそう何種類もある訳じゃない。相手のまわしに手が届いたらその取り組みは9割方勝ちや。ま、まずは幕下以下の力士で試してみるんだ。」

「はい…。」


コシは対越乃海対策にも打ち勝つ策を授かった。これなら、ぶちかましやかち上げと言う武器が無くても戦える。とにかく相手をよく見て戦う事。これがコシ対策にも打ち勝つ弱気な一手に対処する方法であった。

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