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第二十一話 原作改変の代償?

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 ダグラス・イニティウム

 《年齢》十二歳     《才能》EX

 《闘気》B⇒A     《魔力》B⇒A

 《聖力》B       《識力》B

 《天職》【極越神】(——)

  ——【剣鬼】(六七〇/二五〇〇〇) New

  ——【拳士】(四五〇/二五〇〇)

  ——【弓士】(二〇四/二五〇〇)

  ——【操鞭者】(四八一/二五〇〇〇) New

  ——【焔魔導師】(四〇/二五〇〇〇) New

  ——【水魔導師】(〇/二五〇〇)

  ——【土魔導師】(三三/二五〇〇)

  ——【風魔導師】(〇/二五〇〇)

  ——【天魔導師】(〇/二五〇〇〇) New

  ——【幻魔導師】(九八〇/二五〇〇〇) New

  ——【闇魔導師】(〇/二五〇〇)

  ——【司祭】(一〇五二/二五〇〇)

  ——【釣師】(四一/二五〇〇)

  ——【農夫】(一八七/二五〇〇)

  ——【裁縫師】(〇/二五〇〇)

  ——【料理人】(一〇六/二五〇〇)

 《装備》【叛天の救誓(レベリオ・ファトゥム)

 《称号》『魔神の使徒』『極神を超越せし者』『魔の理を導きし者』

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 ルーシアとの同棲を始めてから一週間。日中は熟練度上げに森へ通い続けていたダグラスは、『夢幻魔法』の取得に向けて光魔法を鍛えた結果、『上級職』の【天魔導師】と派生属性の【幻魔導師】を取得していた。


 今では、『幻魔法』で自身の幻影を構築出来るようになった為、自身の幻影と剣の立ち合いを行い、戦士系統と魔法系統の熟練度を並行して上げている。


(『特級職』の取得に必要な熟練度は『上級職』の比じゃない……。やっぱり、識力階位を上げて、魔導を上手く扱えるようになった方が良いのか……?)


 自身の幻影と斬り結びながら、熟練度上げについて思考を巡らせる。


 生産系統は、錬金術を極めていこうと方針を定めて以降、殆ど触れてこなかった。直接戦闘に結び付くイメージが無く、自然と手をつけずにいた生産系統だが、識力の有用性はその恩恵を受けてきたダグラスが一番良く分かっている。


(……急がば回れって言うもんな。とりあえず、識力階位が一つ上がるまで生産系統に注力するか)


 そう決めたダグラスが『幻魔法』を解除し、【創極の神造工房(ケルサス・アーク)】に移動しようとした時……。




「きゃぁあああああ!」


 ——森から女性の悲鳴が響き渡った。




「⁉︎」


 即座に背後の森へ振り返り、声の居所を探るダグラス。


 すると、真後ろの森の中に、木の魔物であるトレントの蔓で片足を絡め取られ、宙吊りにされているルーシアの姿を発見した。


「何でルーシアがここにッ⁉︎ いや、そんな事よりまず助けないとッ!」


 ダグラスは状況を把握し、即座に森の中へ疾走する。


「『強撃』」


 走りながらスキルを発動し、蛇腹剣になっている【叛天の救誓(レベリオ・ファトゥム)】に闘気を纏わせる。蛇腹剣の漆黒の刀身に真紅の紋様が浮かび上がり、ダグラスの意思によって、刃の連結が解除される。


「——フッ!」


 まだトレントまで十メートル以上あるという場所で、斬り上げるように剣を振るう。すると、刃を持つ鞭となった蛇腹剣はその刀身を伸ばし、ルーシアの足に巻き付く蔓の中腹を切り裂いた。




「え……? ッ⁉︎」




 足に絡みついていた蔓が緩み、地上五メートル以上はあろう高さで宙吊りにされていたルーシアは、唐突に始まった自由落下へ身を強張らせる。


「——ルーシアッ!」


「ダグラス君⁉︎」


 ダグラスは、落下するルーシアの身体を空中で受け止め、ふわりと着地する。姫のように抱きかかえられたルーシアは、ダグラスの首に手を回し、絶対に離れまい、としがみついていた。


「大丈夫かッ?」


「心臓がドキドキしてて、もう駄目かも……一生このまま私を抱いていて?」


「……。大丈夫そうだな」


 頬を赤く染めながら、蕩けた瞳で見つめてくるルーシアに、ダグラスは呆れて溜め息を吐く。


(ゲームと性格変わり過ぎだろ……)


 ゲームのルーシアは、奥手で控えめな性格をしていた。だが、今のルーシアはダグラスに対して、積極的に迫り、自分の欲求を素直に伝えてくる。


 どっちが良い悪いと言った話ではなく、ゲームとの乖離が激しい為、今後のストーリーに影響が出ることを憂いていた。


「とりあえず……俺様のルーシアを襲ったアイツを潰さなきゃならねぇから、降ろすぞ?」


「うんっ! ダ・グ・ラ・ス・君・の! 私を襲ってきたあの魔物はやっつけなきゃね?」


「……強調しないで良いわ」


 自分の発言を繰り返され、気恥ずかしくなったダグラスは、ルーシアから顔を背けながら、彼女を地面に降ろす。それと同時に、トレントから伸びる無数の蔓が二人へ襲い掛かってきた。


「——『剣域展刃(けんいきてんじん)』」


 襲い来る攻撃を冷静に見つめながら、【剣鬼】を取得したことで使用可能となった『上級剣技』のスキル名を、静かに呟いた。


 ダグラスの身体から立ち昇った真紅の闘気が、大地へ流れ込み、彼を中心とした直径五メートル程度の円を描く。その円は絶対の剣域。領域に入った全てを悉く斬り捨てる。


「す、すごい……」


 無数に伸びてくる蔓を全て斬り刻み、顔色一つ変えないダグラスへ、ルーシアから驚嘆の声が届く。


「——よっとッ!」


 スキルによる剣域の広さは、長剣の間合いに依存しているのだが、ダグラスの持つ剣は間合いが伸縮する蛇腹剣。


 刀身の連結が解除されると、ワイヤーで繋がった刃が鞭のように踊り狂い、その剣域の領土を拡大させていく。やがて、その剣域はトレント本体の居る場所まで到達し……。


「オォォオオォォォォ——」


 ——その身体を細切れに切り裂いた。


「う~ん……鞭状態で剣士系統のスキルを適用すると、制御しきれないなぁ」


 木屑の山が視界一杯に広がった惨状を見て、困ったように呟いた。剣域を広げる際、周囲の木まで斬り刻んでしまい、意図せず森の一部を開拓してしまった。


「ダグラス君すごいっ! それって剣なの? いきなり伸びだしてビックリしちゃったっ! あんなの初めて見たよっ!」


 興奮冷めやらぬといった様子で、ダグラスへ駆け寄り、捲し立ててくるルーシア。ダグラスは、そんなルーシアに批判的な視線を送りながら問い掛ける。


「……ルーシア? そんな事よりも、まず最初に言うべき言葉があるんじゃないか?」


「え……あ、その、えーっと……ごめんなさい……」


「はぁー……何でついてきたんだよ、しかも森の中まで入ってきやがって」


 魔物の出る森に一人で入るという、ルーシアの危険な行動を咎めると、彼女はバツの悪い表情を浮かべながら、口を尖らせて愚痴を零す。


「だって……せっかく一緒に暮らしてるのに、全然一緒に過ごせてない……」


(何だそれ、可愛過ぎかよ……)


 ルーシアの発言に顔が熱くなるのを感じ、ダグラスは光の速さで彼女に背を向ける。


「な、何言ってんだよ。同棲はあくまでも母親からルーシアを助け出す手段であって——」


「——私の身体をいつでも楽しむ為とも言ってたよっ! 毎晩寝かせないって言ってたのに、少しも触れてくれてないよっ!」


「そ、それは……」


 生前のダグラスを演じる為に発した言葉を蒸し返してくるルーシアに、押し黙ってしまう。


(ルーシアだって、あれは俺が演技で言った言葉だって理解してる筈だろッ⁉︎)


「期待させるだけさせておいて放置は、いくら何でも酷いと思うよ⁉︎ ……もしかして、そういうプレイだったりするのかな?」


「放置プレイしてるみたいな言い方すんなッ!」


 ダグラスはルーシアの言葉に反応して振り返ると、顎に指を添えながら首を傾げる彼女へ、唾を飛ばす勢いで否定した。


「……どんな理由があっても、一人で森に入ってくるなんて危ないだろうが。今みたいに襲われたら、どうするつもりだったんだよ?」


「ダグラス君が助けてくれるって、信じてたっ!」


 屈託のない笑顔でそう口にするルーシアを見て、こめかみを痙攣させながら叱責する。


「俺が居ない所で襲われたらの話をしてんだよッ! ……たく、もう二度とこんな真似はするなよ?」


「うんっ。今度からはダグラス君をつけるんじゃなくて、一緒に行動するね?」


「——村に居ろ」


 要求が全然伝わっていないルーシアへ溜め息を吐くと、彼女は前屈みになり、ダグラスの顔を覗き込んで問い掛けてくる。




「……良いの? 私が一人で村に居たら、ミカちゃんやユリウス君たちへダグラス君の自慢しちゃうかもよ?」




「は?」


「私のダグラス君って、本当にすごいの! 火の魔法以外にも、怪我も治せちゃうし、土の魔法や分身、剣だって達人みたいに使えちゃうんだ〜ってね?」


「——ッ」


 ルーシアの脅し文句に、目を剥いて絶句するダグラス。


(他者を思いやり、如何なる時も慈愛に満ち溢れていた、あのルーシアが……俺を脅している、だと……? これが、ストーリーに干渉した代償だというのか……)


 残酷な現実に打ち拉がれながら、苦虫を噛み潰したような表情でルーシアに声を掛ける。


「——分かったよ……好きについてくれば良い……」


「ありがとうっ! あとね、毎日必ずキスして、一緒にお風呂も入って、夜も同じベッドで寝てくれないと、口が滑っちゃうかもっ!」


「脅しの味を占め過ぎだろッ⁉︎ あんまり調子乗ると、——魔法で記憶を消すぞッ! (そんな魔法ないけど……)」


 脅しに屈した瞬間、ここぞとばかりに要求を吊り上げてきたルーシアへ、ダグラスは青筋を立てて怒鳴りつける。




「——き、記憶を、消す……? う、嘘、だよね? そんな魔法聞いたこと無いよ……?」




「俺のように様々な『天職』を扱う力に、聞き覚えはあったか?」


「え……? そ、それはないけど……?」


 ルーシアはダグラスから告げられた言葉に対して、顔を強張らせて狼狽する。


「さて、それじゃあ質問だ。——聞き覚えのない力を使う俺が、聞き覚えのない魔法を使えないと思うのか?」


「ッ⁉︎ ご、ごめんなさいッ! 忘れたくないッ! 何でもするから、許してッ!」


(え、何でも? ……じゃなかった、とりあえずルーシアの暴走は抑えられそうだな)


 ルーシアが涙目で懇願してくるのを見たダグラスは、これ以上自身の秘密を盾に好き勝手な要求をされることはない、と安堵した。不安を露わにするルーシアの頭を優しく撫でながら、彼女へ声を掛ける。


「安心しろ。記憶を消す魔法は、俺にとってもリスクのある魔法なんだ。よっぽどのことが無い限り、使ったりしねぇよ」


「本当? 約束だよ? あと、戦いが終わった辺りから、また『俺』に戻ってるよ?」


「あ……」


 ルーシアには、既に中身が別人だとバレている為、つい生前のダグラスを真似るのがおざなりになってしまう。今は二人きりだから良いものの、第三者の居る場面でも同じ事になっては不味い、と感じたダグラスは、いま一度気を引き締めるのだった。

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