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雅雄記Ⅱ  作者: いかすみ
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対決 最終話

因縁のブラックバーストとの決戦。

それを助ける縁の6人。

ついに決着。



対決


雅雄はまず近くにおいてある奥義書の残骸を回収する。

当時では判らなかった謎がすべてわかっていた。

奥義書は壊された時点から防衛機能が全開になっていた。

傍目には滑らかな瑪瑙のような印象だ。

その外側を気によって固めていた。

これを物理的に破るのは不可能だ。

あらゆる力は異空間に流されていくからだ。

今の雅雄なら封印を解くのは簡単だがそれを解けば劣化が始まる。

戦いの最後まで力を温存しておきたい。

そのためそのまま持ち歩くことにした。

当時雅雄に奥義書を書き込んだとき奥義書が壊れたように感じた理由も判った。

二つは同じものだったので片方は存在のみになったのだ。

あのとき桔梗は解析できたのに雅雄が出来なかった理由だ。

今ならその事情もよくわかった。



男の知識を吸い取った結果近くに町があるという。

歩くと数日かかるということだが、手段がないので歩くだけだ。

歩きながら景色を見ると記憶にある景色とずいぶん変っていた。

魔法大戦の傷跡のようだ。

星を落としたということらしい。

男の知識でもその辺はわからないようだ。

町に近づくにつれてその異常さがわかる。

住民同士が争っていた。

穏行かけて近づく。

雅雄が出現して三日だが魔王の出現に自暴自棄になっている。

盛んに魔王に滅ぼされるという言葉を聞く。

男の知識では魔王というのは雅雄のことらしい。

詳しい事情を知るため気の解放を行った。

その一瞬、気の器が無いことを思い出した。

しかし、術は発動した。

範囲は町全体だった。

その威力に雅雄自身が驚く。

そして、その力を持続していることにも。

器が無いのに気を使えるのだ。

理由はすぐにわかった。

雅雄自身の刺青と所持している奥義書が力の源だった。


とりあえず一人づつ主だったものを解凍して事情を聞いていく。

解凍されたものは雅雄の力に逆らう気力はない。

問われることを答えていく。

そこで判ったことは魔王というのはブラックバーストのことらしい。

男の知識とかなり開きがあった。

理由さえ判れば強力な暗示をかけて一気に解凍する。

今まで戦っていたものはなぜ戦うか理由がわからないのですぐに戦闘終了だ。

こうして魔王雅雄に襲われた町から戦いは無くなっていく。

いつのまにか雅雄は人々から救世主と呼ばれるようになっていた。


助けられた人の中に猪家ゆかりの者がいた。

男は一族最強の姫に連絡を入れる。

魔法省に働く娘だ。

桔梗の日記を読めば救世主を助けるものが必要だ。

そのため連絡をしたのだ、救世主を助けてやって欲しいと。



魔王の出現に対抗して救世主出現の報は人々を自暴自棄から目覚めさせる。

発信源は魔法省だった。

あらゆるメディアを使っての報道だった。

首を覚悟の主任の働きだ、あらゆる伝を使って報道した。

急速に静まる戦いの気配。

ようやく人々は政府の発表を冷静に聞くだけの余裕がうまれた。

だが壊れた街の復興は進まない。

確かにすぐに滅びることは無くても結局滅びるのだ。

再建するのは無駄のように思えた。

そんな中、高まる救世主への期待。

力の強いものは救世主を助けようと雅雄の下へと移動する。



雅雄はブラックバーストを封じるため仲間を募った。

魔法力の強いものだ。

戦いは一人では無理だ、前回同様、力の支援が必要だ。

ブラックバースト周辺では力の補充が不可能だからだ。

そのため奥義書を介して補充していた。


魔王を倒すと聞いてしり込みするものが多い。

その中、勇気をふりしぼって名乗り出たものがいた。

あまりに多かったので最後は魔法力で選別した。

そして六芒陣を作るため6人に限定した。

のちの六家の祖先にあたるものだ。

面白いのはやはり奥義書の持ち主の本家だったものだ。

気の力の強いものは魔法も強かったということらしい。

その中に夏美ももちろん入っていた。

狼家兄妹もいたが、妹は選考からはずれていた。



雅雄は奥義書の核を渡しブラックバーストを囲むように指示をだした。

各人は個々の才覚で動き出す。

場所を決めたら現地で集まって最後の打ち合わせの予定だ。

あとは雅雄の決意だ。

前回は未来の保証があった。

今回は生存の保証はない。

戦いがどのようになるか判らない。

前回なぜ封印できたのかもよく判っていない。

同じ手段を使うには気の器が無い。

そのため、できるだけ知識を集めていく。


膨大な知識の中に面白いものをみつけた。

空間修復の技術だ。

分野は医学だった。

奇しくも麻薬の治療法だった。

そう、あの中世の麻薬と同じものが魔法で作られていた。

人間の意識を異次元に繋げ幻覚を見せるものだ。

重傷になると常時つながり続け発狂するものだ。

その治療方法に使われる技術だった。

ただ、問題は修復の穴の大きさだった。

その治療法では極小の穴だ。

これからふさぐのはとてつもなく大きな穴だ。

はたしてうまくいくのか?


すでに仲間は動き出して陣を構成にかかっている。

迷っている暇はなかった。

その治療法の習得にかかる。

雅雄の経験と知識でそれは瞬く間に完成する。



そして、ついに現場に到着する。

雅雄を待つ6人。

その頃には崇拝に近い形だ。

ブラックバーストの現状をみてそれと戦おうという雅雄に対する評価だ。

それほどブラックバーストは異様なものだった。

観測に来たと思われる人の死体がある。

老人になって死んでいるのだ。

不用意に近づきすぎた者たちの末路だ。

そこに自ら飛び込んでいく雅雄の決断に対する評価だ。

雅雄は6人に指示をだす。

そして核の封印を解いた。

それを持つ6人の魔法力は一気に跳ね上がる。

その事実に驚く6人。

ただでさえ核を持つだけで力が増していた。

それが、封印されて弱められていた事実に驚いたのだ。

各人は所定の位置に散っていく。

雅雄は手持ちの核の封印を解く。

膨れ上がる魔法力。

そして気による防御結界を張りブラックバーストに近づいていく。



固唾をのむ政府の観察者。

結果を今度は正確にみんなに知らせる覚悟だ。

雅雄はブラックバーストの中心近くまで侵入する。

そして、修復術を開始する。

やはり穴が大きくて意味が無いようにみえた。

魔法力はどんどん吸い取られていく。

体から力が抜けていく感覚だ。

魔方陣からの支援があってさえそんな状態だった。

一度引き上げて作戦を練り直そうかと考えた。

しかし、離れるにしてもすでに限界に近い。

それほどの勢いで魔力を吸い上げていくブラックバースト。

雅雄にして迷った分だけ手遅れになった。

もはや逃げることも許されなくなった。

さいごの力で修復を続行する。


苦しい戦いの最中、心のどこかで楓が微笑んだ気がした。

そのことに考えが行き、一瞬心を空白にしてしまう。

吸い込まれる寸前、危ないと気づいた。

ひやりとしたのは一瞬だ、しかし次の瞬間からどこからともなく力が湧いた。


そんなとき、さらに思わぬ援軍が登場した。

雅雄の危機に異次元に漂っていた雅雄の気の器が再び現れた。

ブラックバーストそのものをぎりぎりで抑えていた気の器だ。

新たなる穴の追加で異次元側に漂っていった。

それが、再び穴に重なる。

そして、穴のほとんどをふさぐ形で収まる。

器の限界ともいえる。

残った隙間は小さなものだ。

雅雄の修復術でふさぐことができた。

すると、器はさらに小さくなる。

まるで雅雄の能力を知っているがごとく塞げるぎりぎりの大きさだ。

再び修復術でふさぐ。

それの繰り返しだ。

やがて最後の小さな穴をふさぐ寸前、気の器は消滅した。

そして、ブラックバーストは消滅した。

そして雅雄は気付く。

気の器はかつて雅雄が体内に持っていたものだということを。

雅雄の分身に近いものだ。

長く雅雄と同化していた気の器はすでに耐久寿命を越えていた。

その上、長い時間異次元との境を守ってきた。

その器はもう雅雄と同化するだけの耐久性はない。

そのため雅雄に協力する形で消滅したということを。

そこに意志のようなものを感じた雅雄だった。

最後の一瞬、楓からのありがとうを聞いた気がしたのだ。



雅雄にして力を使い果たしてその場に座り込んでいた。

すると核を持った6人が近づいてくる。

ブラックバーストの禍々しい気配が消えたので雅雄が倒したとわかったからだ。

その場で雅雄は新たなる指示を出す。

その核を守って子孫に伝えるようにとだ。

もう二度とブラックバーストを出現させてはならないことを。

命令を受けた6人その指示を忠実に守っていく。

その後、この6人は救世の六家とよばれた。


雅雄自身はこの事件のあと、市井に身を隠し行方不明となる。

身を隠すの大いに役立った封印札だった。

傍目には6人を隠れ蓑にとんずらしたというのが正解だ。

事実、英雄に祭り上げられた6人は寝る間もない忙しさだった。

そして、復興の中心的存在となっていく。





蛇足


雅雄はブラックバーストの封印のあと、六家のものに指示をだした。

その後、力が抜けて呆然としていたときだ。

楓の存在そのものが消えていることに気づく。

やはり、あの一瞬に感じたものは気のせいではなかった。

楓の管理分の力を雅雄に託して楓は器に意識を移したようだ。

最後に楓に助けられたのだ。

それでは、もはやこの世界にとどまる意味はないと感じた。

楓と同様消えようと考えた。

人間とは違うので死の概念は無い、強いていうなら消去だ。


そのとき、飛び込んできた娘。

六家の一人、狼家の娘。

桜というものだ。

雅雄の態度に違和感を感じて飛び込んできたのだ。

強引に雅雄を連れ出していく。

兄から頼まれた一面もあるが、桜自身興味もあったからだ。

雅雄自身、初めて出会った桜に既視感が重なる。

楓の面影、森で初めて会った桜の雰囲気などだ。

桜は兄に頼んで雅雄を隔離して行方不明にする。

桜の説得に消去を思いとどまる雅雄。

その後、ひきずられるように結婚。

幸せな時を過ごしていく。

器をなくした雅雄は他人と同様年をとっていく。

そして、今度こそ天寿をまっとうした。

最後の奥義書の核は桜と雅雄の息子が所持することになった。



ここまで読んで下さった方ありがとうございます。

応援、ありがとうございました。


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