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雅雄記Ⅱ  作者: いかすみ
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崩壊

崩壊


魔王対策用の装置の実験室を黄国に移した主任、その土地を見て驚いた。

普段は立ち入り禁止になっていたから近寄れないところだ。

魔王対策の実験のため特別に許可された。

そこは、周りに生物は存在していない不気味な土地だった。

しかし、近づくだけで魔力は確実に上昇していた。

実験には最適の場所でもあった。

雑草さえ生えてないのだ。

土地そのものから生気を吸い取られた感じの不気味なところだった。

かつての魔王の威力がうかがい知れた。

このような悲劇は二度と起こさせない決意を研究員一堂がした。

魔王が出現したら確実に滅ぼす決意だった。


そして、入ってくる情報。

黒国辺境で魔法の爆発が確認された。

その威力は検知不能だという。

ついに魔王が出現したようだ。

実験の最後の詰めを指示する。

装置の全力稼動だ。

そのテストに合格すれば後は魔王との決戦に向かうだけだった。

本格的に稼動する装置。

初めは常時噴出する魔法力を吸っていくように見えた。

今までと違い近くの人間の魔法は封じられた。

その成果に満足していた一面、魔力が使えないという頼りなさも感じた。

しかし、その力は装置の管轄を離れて存在していくように見えた。

主任はいまだその意味が判らずにいた。

そのため、装置の停止を指示しなかった。

やがて十分魔法力を吸った正体不明の空間は装置から離れる。

事態の異常さに気付いた主任。

魔力を吸う謎の空間は装置に依存していないことを初めて知ったのだ。

今までは装置を切ればすぐに消えた。

急ぎ装置の停止を指示する。

しかし、時は遅かった。

その空間は装置を離れ魔法の噴出し口に近づいていく。

傍目にみれば魔力を噴出する球に魔力を吸い込む球が近づくように見えた。

見守るスタッフ達。

やがて噴出し口に同化する。


いままで、魔法力を噴出していたところから魔力の吸引がかかった。

簡易の装置から知らされる情報だ。

それは装置を稼動させたときとは比較にならない強さの魔力の吸引だった。

すでに周辺のものは最初の装置の稼動時点で魔法は使えなかった。

そのため現象を探索する魔法も使えなかった。

そして、体内に広がる不快なもの。

それがなんなのかわからないままだ。

勘の鋭いものは逃げ腰になっていた。

なにが起きてるのか調べようと近づいた研究員。

たちまち意識を失う。

そして、それを助けようとした者まで倒れた。


主任は一見魔力を吸い込んでいるように感じるが毒ガスの発生を危惧する。

急ぎ部下に指示をだす。

万が一を考え腰にロープをかけ、倒れても引きずり出す準備をする。

完全装備の警備員。

慎重に近づいていく。

しかし、研究員にたどり着く前に倒れてしまう。

あわてて引き摺り出す。

事情を聞くと力が抜けて動けなくなったという。

それならと別の警備員は今度は一気に研究員を捕まえて腕を組む。

意識は無くても絡まった腕に引きずられ助けることが出来た。

同じ事をしてもう一人も助けた。


ただ研究員も警備員もそのときマスクをしていた。

作業が終わって助けられた研究員。

意識は戻らない。

治療のためマスクをとった同僚はそこで固まった。

不審に思った主任。

声をかけながら患者に近づいた。

そして同様に固まった。

自分より若いはずの研究員2人はあきらかに中年に変っていたのだ。


事態の深刻さは助けにいった警備員にも伝わった。

そしてマスクを取ったその姿に同僚達の声が止まった。

警備員も研究者ほどではないが老化していた。

すぐにそれは近くのものに伝わる。

じりじりと後退する研究者たち。

主任が立ち上がると同時に逃げ出した。

もはや秩序は存在していない。

我先に逃げ出すスタッフと警備員。

主任は気絶している研究員をどうすることも出来ず引き上げるしかなかった。



一方、雅雄の方

周りは灰と化していたが魔方陣は残っていた。

そこにあるのはかつて雅雄の構成部品だった奥義書だ。

過去に飛ぶ前には竹の小片だったものだ。

いまは、雅雄の力に呼応して力を取り戻している。

今ならはっきりわかった、なぜあの時、力を感知できなかったのか。

それを持ち上げたとき気付いた。

すでに奥義書は自分の体に組み込まれていることに。

この体がオリジナルの体ではないことを知った。

そして遠くで変化する異次元の波動。

その感覚は記憶にあった。

かつて封印したはずのブラックバーストの気配だ。

何者かが封印を壊したようだ。


今回、雅雄に勝算は無いに等しかった。

かつての気の器はこの体にはない。

封じるためのぶつける気が存在しないのだ。

絶望的な戦いに向かうしかなかった。

ただ魔力だけは十分にある。

残った札の封印は簡単に解除できた。

だがそれでブラックバーストに対抗できるかは不明だ。

おそらくブラックバーストは地上から生気を吸い上げていく。

そうなれば雅雄とて死ぬしかない。

雅雄が死ねば楓の意識は封印されたまま存続する。

失敗すれば楓は永遠に封じられたままだ。

楓の意識をいつか解放するためにはブラックバーストは邪魔者だった。

雅雄自身の生存を掛けた戦いだ。

封印するなら早い方がいい。

雅雄は再度、ブラックバーストを封じるため動き出した。

人類のためというより、楓のためといったほうがいい。

楓のもう存在したくないという願いを守るためだ。



主任は、ようやく気付いた。

中世の魔王は今、目の前の現象ではないかということ。

それではこの事態は誰にも止められないと確信した。

魔方陣を作ったものはこの魔王を封じるための魔方陣だと気付いた。

その魔方陣を構成した部品はすべて盗まれてしまったのだ。

それどころかそれを使って別のものを召喚している。

そちらも気がかりだった。

この事態を防ぐ手持ちの手段はもう存在していなかった。

それは人類の破滅をいや生物の破滅を意味していた。

事態の深刻さに急ぎ魔法省に向かう。

目の前の魔王の侵略速度はたいしたものではない。

人を助ける時間が十分にあったのだ。

予感とも言うべきいやな感じがする範囲も確認していた。

ただ、止められないだけだ。

せめてそれだけでも魔法省に報告しておかなければという義務感だけだ。


主任から事態を聞いた魔法省のトップは自身の保安を優先した。

国が滅ぶのはもっと先だと言う報告に事態の破滅は次の代だと思ったからだ。

そのため事実を隠蔽しようと画策した。

今回の現象は無害でただ魔法力の吹き出しが止まっただけだと発表した。

最初はその情報を信じた人々。


だが冷静な対応をとる前に事態は最悪の事態に陥った。

逃げ出した者達がその事態を吹聴したからだ。

目の前で若者がわずかの間に老人に変ったのだ。

そのニュースは民間の放送機関から流された。

政府の発表は最初から信じられなくなっていた。

最初はたいした問題ではないと嘘を発表したからだ。

事態の深刻さをごまかそうとしたのが裏目に出た。

ようやく気付いた政府高官たち。

あわてて真実を発表したが、とき遅く誰もその発表を信じない。

現実にはそんなに焦る事態ではなかった。

広がる速度は微々たるものだったからだ。

主任が計算したところでは世界が滅ぶまで100年かかる予想だった。

だが最初の発表から誰もそれを信用していない。

目の前で見た異状事態の説得力に人々は最悪の事態を想像した。

桔梗の日記の簡約版が広まっていたのも原因だった。


もう誰も疑ってなかった。

それが中世の魔王だということを。

そして、それを倒した勇者はもうこの世に居ないことも知っていた。

あとは魔王に滅ぼされるだけだ。

それがいつになるかわからない。

その考えは人々を刹那的な快楽に走らせることになった。

最初は仕事の放棄、逃走から始まった。

最後を迎えるなら家族と一緒という考えだ。

そして、生きていくためにはまとまった物資がいるということ。

政府が消えれば金は意味をなくす。

必要なのは現物だ、物資の奪い合いが始まった。

あちこちで広がる暴力事件。

身を守る人々の過剰な魔法攻撃。

秩序ある世界は数日で崩壊した。


主任は自分のしたことに責任を感じていた。

ふらふらと屋上に向かう。

それを見る受付の女の子。

従兄弟からの電話を受けたところだ。

おかしなようすの主任を追いかける。


主任は崩壊する街を前にして手を頭に当てる。

魔力を手先に集め発動しようとした瞬間そらされた。

受付の女の子だ。

「やめてください」

しばらく屋上でもみ合った。

「君は?」

「猪夏美といいいます」

受付をやるぐらいの美人だった、だから彼女の気を引こうとして事件にかかわった。

「なぜ、たすけたんだ」

「責任を取るなら復興に力をそそいでください」

「でも」

いまさら復興と言われても意味が無いように思った。

「私は救世主を助けにいきます」

そう言って振り向いて去っていく。

「救世主・・・・」

主任の瞳にわずかな力が宿った。



仕事が忙しくなってきて小説を書く時間がなくなりました。

また時間をかけて考えてきますのでしばらくお休みです。

次回、最終回。

決戦です。


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