魔法省の主任
中世における魔王の秘密。
あいまいな記録が悲劇を再現に導く。
一方、わざと悲劇を再現しようとする悪の組織。
魔法省の主任
魔法大戦は指導者層の利権が原因で起きた戦争だ。
原因はどうあれ戦争に借り出された者は悲惨の一言。
特に親に力のある者が居ないものは悲惨だった。
そこでひさんな目にあった男はその恨みを子供に託す。
子供はそんな親の教育を受け立派な魔王信奉者になっていた。
反社会派のグループだ。
そして、戦争を起こしながら、なお上層に居るものに復讐を考えた。
この世に魔王を呼び出して世界を混乱させようという狙いだ。
文献を調べていくうちに桔梗の日記簡約版を手にする。
そこに書かれていた中世に魔王を呼び出した文章にひきつけられた。
魔方陣を使い魔王を呼び出そうとしたという下りだ。
結局、『失敗して中途半端に終わった』とある。
実際は公表されなかった部分を製作者が勝手に付け加えた部分だ。
しかし、その男はそれを信じてしまう。
その方法なら魔王を呼べると判断した。
では『失敗した理由はなぜか?』と自分なりに考える。
『呼び出した魔王は実体が無いからではないか』と類推した。
そして、日記を調べていくと魔王を呼び出して定着させる方法が書かれていた。
『そのための予備の体が作られているらしい』と書かれている。
想像で書かれたものが、真実に近いものをかきあげていた。
ただ目的は違ったのだが・・・
男はその体の隠し場所を探すため原本を見ようと考えた。
仲間を募り図書館を襲撃する。
集められた仲間は本当の理由は教えられなかった。
というよりすりかえられていた。
政府が秘密にしている桔梗の日記原本を直接見ようという企画だ。
そしてその中に桔梗と雅雄の直接の子孫がいた。
当然桔梗の日記ということで興味を惹かれての参加だ。
本に書かれた中に暗号で体の隠し場所と解除の方法が書かれていた。
雅雄に読めるようにしておいた暗号は雅雄の直接の子孫でも読めた。
ただその解読者は言われたところのみを解読した。
長い日記のすべてを読むには時間が足りなかったからだ。
小躍りする男。
それを読んだ子孫は、ようやく男の目的がわかって怖くなる。
魔王を復活させるためとは思わなかったからだ。
解読のため日記を預けられている子孫。
そして隙を見て逃げ出した。
原本を持って警察に出頭する。
しかし、魔王を信用しない警察は相手にしない。
ただ盗難にあった原本を回収して図書館に戻した。
男は警察では駄目なので魔法省に直接直訴する。
魔法省の役人の中に若くして天才の呼び声の男がいた。
魔法省の主任待遇の男だ。
その男が偶然それを耳にする。
受付で一生懸命事態を説明しているところを通りかかった。
受付の娘はどうしたらいいのか困っていた。
そこで親切から引き受けた一面もある。
受付の娘が可愛かったので、恩を売る機会だったからだ。
そして男から事情を聞く。
内容の重大さにようやく気付いた。
急ぎ警備のものを手配する。
しかし、すでに人形は盗まれていた。
その事実を知った主任は悔しさに歯噛みする。
桔梗の日記にそんな秘密が隠されていたことを初めて知ったからだ。
その後、その男を使い日記を精査していく。
しかし、それ以上の秘密は見つけられない。
ただ魔方陣について見落としていた記事見つけた。
『魔方陣を構成した部品がある』という。
その当時奥義書と呼ばれていたものだ。
現在は桔梗がばらして『核だけのような部品になっている』と言う話。
ただなぜか力は感じられないので、そのほかのパーツと一緒に片付けられたと
いう。
その情報に驚いて、探索を手配をした。
そして保管してある倉庫に急行する。
しかし、ここでも時遅く倉庫の管理人は皆殺しに遭い盗まれた後。
犯人がどうやってそのありかを見つけたのかは不明だ。
管理責任者もそんなものが保管されていることを知らなかったぐらいだ。
その事実から魔方陣の構成核の話はなにか秘密があると察した主任。
これで魔王の呼び出しは真実味を増した。
現実となる公算が大きいと判断する。
急ぎ魔王に関する情報を集めていった。
しかし、桔梗の日記以上の情報は得られなかった。
すでに当時の情報を知る人も文献も存在していないからだ。
後は閲覧不可能な国家の機密文書だ。
しかし、主任の権限ではそれは許されなかった。
当時の魔王の威力はわからない。
しかし、世界は滅亡の寸前に追い込まれたことだけは真実だ。
それは、桔梗の日記以外でも確認されていたからだ。
そこまでの事実をまとめて魔法省のトップにかけあう主任。
危機感に不安を募らせる魔法省のトップたち。
対策を若き天才にゆだねた。
悪く言えばなにか問題が起きたら詰め腹を切らそうという魂胆だ。
その天才主任、任された責任の重大性に喜んだ。
そして、当時の資料を再度調べていく。
その中には厳重に保管されていた資料もあった。
本来絶対に見られない資料だ。
各国が保管していた国家機密資料だった。
魔王対策責任者としての肩書きは最優先の資格が与えられている。
そのため、閲覧が許された。
その中には軍事機密も含まれている。
各国の兵器に関するものは興味をそそるものもたくさんあった。
その資料の中には、訳のわからない気というものが存在している。
かなり克明に書かれた新兵器の数々。
気をまとわせて武器防具に応用する技術も書かれていた。
しかし、現代ではそのような気という物は存在していない。
そのため、大半はくずの資料だ。
ただ一部に興味を引く資料があった。
黄国の極秘資料にその気を消す技術が残されていた。
魔王はどうやらその『気の化け物』のように感じた。
そしてその気の化け物を倒したという事実。
それらから『気を消す』という黄国の技術に着目する。
以上の事を総合して魔王を滅ぼした技術というのは黄国の技術だと確信した。
古い歴史なので年号などがあいまいだったこともある。
そのため魔王呼び出しの年とその技術が使われた年の関係がしっかりしていな
かった。
さらに追い討ちというわけではないが、黄国の技術者はその技術の危険性を書
き込まなかった。
それは失敗の歴史だったので、恥を書きたくなかったのが本音だ。
まさか、その歴史を掘り起こすものがいると考えなかった。
『世界は平和のうちにいつまでも続く』という幻想。
それにしばられていた。
だから、おおきな失敗はいつまでも人の記憶に残っていると思っている。
まさか、魔法大戦でその記憶が消えると思っていなかった。
そして、桔梗も同じミスをしていた。
黄国の技術が破滅を導いたということは知っていた。
それは有名な逸話だったからだ。
だから、黄国の名誉を傷つけることをあえて書かなかった。
その二つの暗合が主任を間違った結論に導いた。
魔王が呼び出されるまでに時間は少ない。
焦る主任はその黄国の技術を再現に踏み切る。
技術そのものは簡単なものだった。
再現した技術は当時の気だけではなく現代の魔法にも対応していた。
実体が不完全だったので一般には知らされない。
なぜ魔法が消えるのかよく解かっていない技術だ。
それは諸刃の剣になる危険もあった。
そこで主任の権限で発表は抑えられた。
研究機関はその解明に奔走する。
ただ結果だけを見れば『魔王にも対抗できそうだ』と思えた。
そして、魔王が出現してもこれで十分対抗できると確信した。
未確認の技術なので全力テストをしなかったのが幸運だった。
もしそこでテストをしていたら、悲劇はとどまることを知らなかっただろう。
その結果を見たら魔王の呼び出しは当然中止されていたからだ。
皮肉なもので魔王呼び出しの手配していたものは違うものを呼び出す。
魔王に対抗する装置を考えた者は中世の魔王ともいうべき物を再現していた。
主任はそれらの追試を指示した。
その間に過去の魔王の出現位置に興味を持つ。
それは現在魔法と言われる力の源に繋がっていると確信した。
装置の作動条件に最適なのは『より大きな力の発動だ』と言う結果だ。
そこで魔法の源をもとめる。
それはもと黄国の国境付近だった。
今でも植物が生えない不毛の大地だ。
魔王との戦場としても都合が良かった。
そこで、最後の実戦テストを行うべく実験室を移動させた。