桔梗の日記
雅雄を作った桔梗
そして、研究結果をまとめた日記
本来はこっそり雅雄に渡す予定のものが手違いで公表されてしまう。
それが波紋を広げていく。
桔梗の日記
桔梗は雅雄に研究を引き継ぐ予定だった。
だが雅雄に託した研究の大変さは桔梗自身が知っている。
資料の少ない中世の歴史を探る作業だ。
一口に気の研究といっても聞き取り調査だけでも時間がかかる。
ましてその実体は経験できなければどうしようもない。
そして、雅雄が生存中に終わらないと読んでいた。
そのため、一度だけ雅雄を助ける為スペアの人形を用意した。
これは雅雄に秘密で手配していたことだ。
ただ桔梗の知らないところで雅雄も独自の気の研究結果をまとめていた。
それは自身が気を使えることによるものだ。
ただ雅雄自身この頃はまだ自覚というものがない。
『命令には忠実に従う』という頃だ。
そのため、『聞かれなければ答えない』という状態だった。
桔梗もまさか雅雄がすでにそんなレベルに達しているとは知らない。
その誤解ともいう意思疎通の無さが、お互いの研究成果を阻んでいた。
桔梗の結果を雅雄に完全に教えておけば、その時点で桔梗の研究は完成してい
た。
研究結果のほとんどは雅雄に引き継いだ。
しかし、奥義書の研究成果の一部は教えなかった。
それと、万が一というわけではないが、雅雄が自己増殖をできないよう制限を
かけた。
それは杞憂だった。
しかし、研究者として自分の研究結果で世界が滅ぶことを防ぐための安全な処
置だ。
それは、雅雄が老化したとき自分のコピーは作れなくする処置だった。
そういう封印を仕掛けておいた。
雅雄も人形だ、いつかは年を重ねて使い物にならなくなるときがある。
その時のためのスペア人形のつもりだった。
ただ、そのままでは人形が老化してしまい使い物にならなくなる。
そのための保存方法として人形そのものを凍結する方法をあみ出した。
それは、気による凍結で実験機の方法を流用したものだ。
将来、雅雄なら絶対に私の日記を調べると確信していた。
そして、その人形の解除方法を記した。
気の器は今回はなぜかうまくつくることが出来なかった。
オリジナルの気の器はまさに偶然が作用してうまく出来たものだと痛感する。
そのため、気の器は組み込んでいない。
だがそれ以外のものは出来る限り同じものを用意したつもりだ。
あの奥義書を解析した刺青まで組み込んでおいた。
あとは、雅雄が気付いてくれさえすればよかった。
そのため連絡員を手配したのだが、空振りで帰って来た。
どこかの秘密の研究所に入ってしまったようだ。
桔梗は自分の寿命が限界なのを知っている。
そこで、日記を厳重に保管して少々の災害でも壊れない金庫に納めた。
そして雅雄だけに読める暗号を日記と研究室の壁紙に張り付けておいた。
こうして桔梗はその生涯を閉じた。
この時点で雅雄が奥義書の解読結果を知っていたら桔梗は若返り処理を受けら
れた。
しかし、その情報は桔梗の死と共に消えてしまう。
雅雄がその情報を独自に解析するのはもっと先のことだった。
雅雄はひたすら研究を進めていた。
桔梗の使いが来たときは偶然次元変換装置の作動中だった。
そのため、目の前に使いの者や桔梗がいたのに触ることが出来なかった。
しかし、置いていったメモを読みその意図は把握する。
そしてメモはそのまま引き出しにしまった。
そのころには自分が年をとらない理由も判っていた。
当然それは予備の体の意味を無くす。
そのため、桔梗の用意した体は必要ない。
そしてメモは引き出しの奥にしまったまま年月を過ぎていった。
それから、50年。
研究を重ねて迷いの森システムを完成させる。
そして、設置に動いた。
それを設置後、雅雄は緊急信号で過去へ飛び立つ。
飛び立つ前に研究施設には気の防御は仕掛けておいた。
泥棒が入れないようにという意味のつもりだ。
そのため、桔梗の子孫については対象外とした。
雅雄が旅立って100年後に人間同士の戦争が起こる。
それは魔法大戦と呼ばれ『星を落とす魔法まで使われた』という戦いだ。
地上の施設は大半が灰燼と化した。
それだけの攻撃になお耐え抜いた雅雄の研究施設。
建物は健在なので多くの難民が近づこうとする。
しかし、誰も進入できなかった。
戦後の技術者はその秘密を探ろうとする。
その中にたまたま桔梗の子孫が居た。
そのため、入ることが出来た。
そして、雅雄の施設に侵入して資料をあさっていく。
雅雄も必要な研究は暗号化していた。
さらに、重要な資料は記憶していたから問題はない。
ただ重要と思わなかった桔梗のメモは回収されてしまう。
そのメモから桔梗の日記は俄然注目を浴びた。
原本は国立図書館に厳重に保管されて誰も見ることは出来なくなる。
そのためその原本から重要な部分を除いたものが発表された。
そこには秘密にしなければならない重要なことが書かれていたからだ。
特に中世の魔王に関する部分だ。
口述を集めた研究結果が書き込まれていた。
その頃、研究者は雅雄が張った防御壁を再現しようと躍起になっていた。
そのため、桔梗の日記まで調べ上げたが謎は未解明のままだ。
その未解明の部分は放置して判りやすい部分のみが発表される。
桔梗の日記は一躍ベストセラーとなり簡約版などが巷に氾濫。
正確な翻訳ではないので、意味不明なところは勝手に書き加えられた。
ただ世間には魔王のことだけが広まっていった。
そして、隠された部分は本の執筆者が勝手に書き込んでいった。
内容は魔王が出現したときそれを倒すため人類が一丸となって倒したという物
だ。
どこかのゲームのエンディングを真似したものだが大好評。
中世の魔王物語として絵本にさえなった。
次回から魔法が出てくる予定です。
そこで目安を簡単に。
普通の魔力が無い人を1とする。
魔術師と言われる人は5~50レベル
人を殺すだけのレベルは20程度
一流といわれるものは60以上のレベル
国一番と言われるものが100レベルぐらい
そのため力を封印するお札は100までしかない。
そして雅雄は2000レベルの予定。
どう転んでも化け物です。