プロローグ
雅雄記の続編です。
プロローグ
本来なにも存在しないはずの異次元空間。
そこにありえない意識が存在していた。
偶然の弾みで迷い込んだ二人の意識だ。
死の瞬間と言ってもいい。
肉体は分解したのだが、意識は存在した。
そのまま意識を保ち続けることは難しかった。
それはその異次元空間が2人の意識を排除しようとしていたからだ。
そのための出口はすでに作られていた。
ただ出口から出ればたちまち消滅が待っている。
意識が保てるのは肉体があるからだ。
それともう一つ問題があった。
楓の意識は生存を拒否していたからだ。
異次元空間中では消滅ができない。
楓のためにそこから出るしかなかった。
楓は長生きはしたが本来は人間だ。
雅雄が望むから千年生きた。
それは人間にとって苦行でもあった。
その間に数百人との子供や孫、子孫との別れを経験していたからだ。
その悲しみの累積は彼女に重くのしかかった。
並みの人間には耐えられない苦痛だ。
そんな経験はもうしたくないという思いだ。
雅雄にはその苦しさが判るだけになにもいえなかった。
雅雄は楓の望みを引き受ける意味で融合を図る。
異次元空間で動けない楓を導くためだ。
それは動けない人間を抱えて動くに等しい自然なことだった。
だが肉体の境目の無い意識体だったため融合してしまう。
精神的に強い雅雄だったので、しっかりした自我は確立していた。
そして、楓の意識を吸収してしまう。
2人分の精神構造を持つ雅雄の誕生したときだ。
しかし、出口から出てしまえば肉体はないのだから存在が消える。
しばしの存続に2人は一緒にという思いもあった。
2人分の意識を抱えて雅雄は出口に向かって動き出した。
ただ、異次元空間は人間界のいつに繋がっているのかは不明だ。
こうして一度死んだ二人は異次元で一緒になり地上へ戻る。
そこで、今度こそ本当の死を迎えるためだ。
しかし、運命はそんなに甘くなかった。