無力
ニヤニヤしてきたゼェ…
フローアクアは別に弱い訳では無い。
Bランクまで倒せる魔法少女は全体の4割にも満たないし、理論火力だけならAランクも倒せる。
でも、今この場においては何も出来ない。
Sランク以上は基本的に規格外だ。
そんな規格外に常識的な“強い”だけは通用しないのだから。
マシナリーワーム。
機械仕掛けのSランクの魔物。
地中に潜り攻撃を行う事と凶悪なまでの硬い外部装甲が有名だ。
お姉ちゃんは私の全力の遠距離攻撃ならSだろうとダメージは与えられると言ったが奴は防御面に特化している。
私では傷一つ与えられないだろう。
しかし弱点部位は小さく近くに行かないと当てられない。
私ではあの弾幕量の攻撃を捌き切れないで死ぬ。
実質的に今は戦力外なのだ。
だからこそあの白い少女の強さが羨ましい。
凄いとも思う。
Sランク相手に苦戦なく立ち回る彼女が。
まだ新人だと思われる癖に自分より遥かに強い。
さっきの雷の魔法なんて私より何倍も威力がある。
私は何も出来なくて、見る事しか出来なくて。
本人は、フローアクアは気付かない。
そこに劣等感と嫉妬が僅かに芽生えている事に。
目の前で白の少女の右腕が斬り飛ばされた。
血飛沫を撒き散らし、落ちていく。
「ぇ…?っっっーー!?!?な、何で?何で庇ったの!?」
それを目の前で見たことによって若干パニックになりながら言う。
私のせいで…。
「問題無い。怪我なら治せる。でも死は治せない。」
右腕が斬り落とされても変わらず無機質な声のまま彼女は言った。
私は理解出来なかった。
言った内容じゃ無い。
今片腕が切断されたのに。
なんでそんなに平気そうなの…?
痛みを感じないの…?
あまりにも平坦。
その異常さに恐怖と困惑を感じながら私は思う。
「今は下がって。直ぐに終わらすから。」
動揺した事もあってそのまま言われた通りに下がる。
すると彼女の雰囲気が少し変わった。
残る左腕をマシナリーワームに向ける。
浮かぶ宝珠杖が強く発光する。
「詠唱完了。陽光に焼かれろ“消ノ零砲”」
光が、全てを消し去った。
それは硬い外部装甲も消し溶かし、マシナリーワームの内部コアを剥き出しにさせる。
なんて威力…。
もはやランカーレベルじゃない…?
しかし驚愕する暇など無い。
「“再生”右腕。」
斬り飛ばされた筈の右腕が生えてくる。
そして、
「“完全創造”対物ライフル。」
彼女の身長を簡単に越す巨大な狙撃銃が顕現する。
それを持ち、対象に構えた。
「外しはしない。これで、トドメ。」
ルビのせいで若干違和感が…




