魔法少女協会にて:観測
毒は未だ回らない
しかしもう直ぐだろうね?
「魔物がいつもより少ない?」
私は魔物の発生状況を調べて気付いた。
「正確には出現した瞬間に片っ端から狩られてます。」
協会の魔法少女の戦闘を観測し、データを取りサポートするあるオペレーターがそう答える。
「片っ端から?」
「ええ、全国各地で起きてますね。」
「一体誰が?」
「この魔法少女です。」
指を差したモニターには白いローブを羽織った魔法少女が魔物を討伐している映像があった。
顔はフードのせいで見えないが見た目はかなり小柄である。
「…見た事無いわね。野良?」
「おそらく。ですがつい3日前に初めて確認されたばかりの存在です。」
「最近誕生したと言うの?…にしてはだいぶ凄いわね。」
全国を簡単に移動出来る程の転移も使えるということからかなり上位の魔法少女だと分かる。
特に最近は珍しい純粋な魔法アタッカーの戦い方というのもあるだろう。
最近の中後衛といえばバズーカやらミサイルやらマシンガンやらやたら現代的な兵器などを召喚するタイプの物が多くて見た目物騒だったから。
流石に色は魔法少女らしいキラキラしたデザインとかが多いけど。
「これ、他の魔法少女から魔物の横取りって言われないかしら。」
一応魔物を討伐すると討伐金が貰えたりランキングに上がったりするからそれを目指してやる魔法少女も少なくない。
特にランキング上位であるランカーは色々特典があったりする為狙う人は多い。
なのである意味邪魔されていると感じるかもしれない。
「いや、こちらの観測に見つかる前に大体が戦闘を終わらせられてるのでそもそも魔物がサイトに見つからないのでしょうね。」
協会本部で観測してからサイトのデータに移すのである程度ラグがある。
その前に魔物が消えると移す事がキャンセルとなってしまうからだ。
「成程、それでか。」
「本部の一番情報収集が早い観測機だからなんとかいなくなる前に確認出来ただけなので。その上他の魔法少女が戦っていると出現しなく、危なくなった場合の所だけを助けている感じですし。なので見つからないという事でしょう。」
このスピードで魔物を討伐出来るのは凄い。
しかしそれ以上に驚愕する所があった。
「いや…これ回復魔法じゃない。え、ヤバくない?こんな事もあるの?」
「正直脅威の一言ですね。まさか両立する存在が現れるとは。」
しかも腕の欠損レベルも治している。
この回復魔法だけでどれだけ役に立つか。
その上Aランクの様な上位の魔物も比較的あっさり倒している。
Aランクをあそこまで瞬殺出来るのは少ない。
その上転移と回復もか…。
この万能性はもし敵に回した場合こちらの被害を考えたくないな。
名称不明、正体不明の魔法少女。
野良は魔女になる可能性も高い。
他の魔法少女を庇って腕を飛ばす事をするぐらいだし善人なんだろうけど。
それでも不安要素は無い方がいい。
今の内に何とか味方として引き入れたいが…
問題は彼女がランキングサイトに登録していない点だ。
あれに登録していれば名前もわかるしなんなら連絡も出来る。
でもそれが出来ないなら直接会うしかない。
とは言え現在位置すら分からない。
ある程度待ち伏せするしかなさそう。
ならばとある人に連絡をする。
:本部来て。直でいい
数十秒も待たぬうちに一人の魔法少女が、ここに転移してくる。
「来たわ。で?要件は?」
「これ。」
モニターに指を刺して言う。
「何?」
「この子に会って欲しいの。直ぐに居なくなる神出鬼没だからあなたが先回りして欲しくて。」
「この魔法少女?何でこの子に?いや…白ローブに紫の浮遊する球体…回復に攻撃…転移…あ、待ってこれ詩織を助けてくれた子?」
「詩織?確か、貴方の妹だっけ?」
「B級魔法少女、ランキング117位のフローアクアさんですね。」
オペレーターが付け足す。
て言うかいつの間に順位が結構上がってる。
前この姉が勝手に語ってた時は200位付近だったけど。
頑張ってるなぁ。
「あの子から聞いた特徴と一致してる。確かに会う必要ありそう。」
どうやら引き受けてくれる様だ。
「それじゃよろしく。頼んだわよ。」
「あと先に一つ。妹も連れてくから。」
「え?なんで?」
「一応当時者がいた方がいいと思うわ。」
「…そう。…で本音は?」
「待ち伏せだからそれなりに時間使うでしょう?詩織とそんなに離れたくない。」
「シスコン発動しないで。」
この姉は。
「まあ好きにしなさい。一応理に叶っているし。」
「わかった。それじゃ。」
そうして彼女は消えた。
「なんだかこれから忙しくなりそうね。」
私はそう呟いた。
優秀な姉はシスコン
これはもはや基本よな